北見昌朗

北見式賃金研究所所長 給与は、どう下がったのか? なぜ下がったのか? どうすれば上がる…

北見昌朗

北見式賃金研究所所長 給与は、どう下がったのか? なぜ下がったのか? どうすれば上がるのか? 中小企業の給与を調査して10年以上。東京・大阪・愛知で数万人規模の給与明細を収集。給与を最も知る者として提言。政府の「働くな政策」「悪平等」が諸悪の根源。子や孫の代のため、もっと働こう!

マガジン

  • 「消えた年収」こうすれば日本の給与は上がる!

    日本の給与ダウンが止まらない。このまま下がり続け、ついに“失われた30年”に至ってしまうのか? なぜ、こうなってしまったのか? 年収を引き上げる方策はないのか? が本記事のテーマである。

最近の記事

本記事で使用した統計

筆者は長年にわたり給与を調査研究してきた。その経験に基づき、信頼できるものを選んで本記事で使用した。それは次のとおり。 ◎ 国税庁の民間給与実態統計調査結果 これは年末調整の結果であり、いわゆるアンケート調査ではない。日本の給与を調査したデータとしてこれ以上信頼性の高いものはない。 ◎ 厚労省の厚生年金保険・国民年金事業年報 これは社会保険料を徴収する際に得た給与が基になっている。これもアンケート調査ではないので信頼性が高い。 ◎ 北見式賃金研究所の「ズバリ! 実在

    • Xデーの後の磯野家

      日本がXデー(2025年)を迎えた10年後の2035年の磯野家を想像してみた。 (こんな日本にしないでほしい)という思いで書いてみた。登場人物の年齢は、筆者の創作である。   波平は75歳になり、後期高齢者になっていた。 勤務していた山川商事は、波平が59歳の時に倒産した。台湾企業の傘下に入っていたが、再建には至らなかった。波平が自社の倒産を知ったのはネットニュースだった。 (そんなバカな!)と衝撃を受け、言葉を失った。あと少しで退職金が出る直前だった。有為転変は人の世の常な

      • ◯ 縮まった男女格差

        正規雇用者(1年以上勤務・全規模)の平均年収は、次のようになった。 2012年 男性520万円、女性349万円   ↓ 2019年 男性562万円(42万円増、8.1%増)、女性389万円(40万円増、11.5%増) 男性と比較した女性の給与は、2012年では0.672だったが、2019年には0.693となり、格差が縮まった。グラフ㉝ 目次 気になったページをクリックして下さいませ。 序文 韓国にも負けて中進国になり果てるのか(動画あり) 第1部 筆者が独自に行っ

        • ◯ 最低賃金の引き上げ

          最低賃金が上がることには賛否両論あって、ここでは一応「〇」と記す。毎年のようにどんどん引き上げられた。東京の場合、次のようになった。 2012年  850円   ↓ 2019年 1013円(163円増、19.2%増) なんと2割も引き上げらられた。 目次 気になったページをクリックして下さいませ。 序文 韓国にも負けて中進国になり果てるのか(動画あり) 第1部 筆者が独自に行っている給与調査から探る動向(動画あり) 第2部 ガタガタになった年収・追い打ちをかけ

        本記事で使用した統計

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        • 「消えた年収」こうすれば日本の給与は上がる!
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        記事

          ◯ 働き方改革

          働き方改革で、残業時間が厳しく制限された。 最低でも5日間の年次有給休暇の取得が義務化された。 同一労働同一賃金ということで、正規・非正規との間の差別的扱いが禁止された。 目次 気になったページをクリックして下さいませ。 序文 韓国にも負けて中進国になり果てるのか(動画あり) 第1部 筆者が独自に行っている給与調査から探る動向(動画あり) 第2部 ガタガタになった年収・追い打ちをかけた消費税と社会保険料(1997年→2020年)  その1 給与動向を知るためのクイズ

          ◯ 働き方改革

          ✕ 外国人労働者の導入

          「特定技能」という新しい在留資格が認められ、外国人労働者の導入が始まったのもアベノミクスだった。「日本は少子高齢化のせいで労働力不足に陥っている」ということで、その打開策だった。 しかし実際には記述のとおり、アベノミクスが始まる前から勤労者数は急増していた。それを考えると、筆者は本当に門戸開放が必要だったのかと首をかしげる。 景気が悪化すると外国人を含む非正規雇用者が解雇されるのは、これまでの常だ。リーマンショックの際の派遣切りは、記憶に新しい。失業した外国人が犯罪に走る

          ✕ 外国人労働者の導入

          ✕ 最低賃金の引き上げで障がい者の仕事が失われた

          最低賃金の引き上げは、先ほど「功」としたが裏返せば「罪」もあった。 筆者の知人は、障がい者を雇用する就労継続支援A型施設を経営していた。A型とは障がいや難病のある方が雇用契約を結んだ上で一定の支援がある職場で働ける福祉サービスだ。 そこでは最低賃金が支払われる。その最低賃金がどんどん上昇する一方、工賃収入は上がらない。 そんなわけで経営が悪化して閉鎖に追い込まれた。 経営者は「A型は、どこでも閉鎖するところが増えている」と溜め息を吐いていた。 働き方改革によって、逆に障が

          ✕ 最低賃金の引き上げで障がい者の仕事が失われた

          ✕ 残業抑制の影響で年収ダウン

          2020年の給与の落ち込みは、新型コロナウイルス感染症の影響だけではない。実は働き方改革のせいでもある。残業規制により残業が減ったので、残業代減で年収がダウンしたのだ。 2020年の年収が下がった要因は、残業代の落ち込みが大きな要因だったことは間違いない。 「新型コロナウイルス感染症のおかげで、休業や在宅勤務が広がって残業代が減った」 のか、あるいは 「労基法の残業規制のせいで残業代が減った」 のか、そこは不明だが、いずれにせよ残業代減につながった。 政府は「生産性の向上

          ✕ 残業抑制の影響で年収ダウン

          ✕ 大手による独り占め現象

          2012年→2019年にかけて「正規雇用者」の年収分布の変化をみた。 男性の年収分布の変化 大手の男性は、平均年収が「800万円超」のウエートが次のように上昇した。 29.9% → 37.5%(7.6ポイント増) アベノミクスの果実を大手が独り占めしたと批判された。グラフ㉟ 中小では「800万円超」のウエートはもともとごくわずかだったが、それが多少上がったに過ぎない。 1.9% → 3.0%(1.1ポイント増) 低所得な層である「400万円以下」はウエートが下がった

          ✕ 大手による独り占め現象

          ✕ 縮まらなかった企業規模間の格差

          平均年収(正規雇用者のみ)は、企業規模別に公表されている。法人で一番大きいのは資本金10億円以上なので、これを「大手」と呼ぶ。資本金2000万円未満が一番小さいので、これを「中小」とする。平均年収は次のようになった。 2012年 大手653万円、中小358万円   ↓ 2019年 大手706万円(53万円増、8.1%増)、中小395万円(36万円増、10.2%増) 中小においても、平均年収は10%も伸びた。これは、筆者からすれば驚異的な数字であった。 ただし、金額面では

          ✕ 縮まらなかった企業規模間の格差

          ✕ 求人難

          アベノミクスが始まって以来、求人が増えた。 求人が増え過ぎたせいで、今度は求人難に陥った。中小企業には応募者が集まりにくくなり、初任給を引き上げたり、休日を増やしたりと対応に追われた。 中小企業は収益が上がっていないのに人件費を増やしたので、経営が圧迫されたところも多かった。 目次 気になったページをクリックして下さいませ。 序文 韓国にも負けて中進国になり果てるのか(動画あり) 第1部 筆者が独自に行っている給与調査から探る動向(動画あり) 第2部 ガタガタに

          ✕ 求人難

          コイツが犯人か? “政府と結託した人材会社悪玉”説

          アベノミクスで求人難に陥った会社は、やむを得ず求人広告を出した。そのせいでどこの会社も求人広告代が膨れ上がり経営を圧迫した。 「アベノミクスで一番儲けたのは人材会社だ」という批判がある。 また人材会社の中には、自社の役員を〇×審議会に送り込み政権と密着して政商のように暗躍して政府から仕事を受注したところもあった. その会社は、アベノミクスが終わるとコロナウイルス関連の仕事の受注でも巨額の富を得た。 世間は、コロナウイルス関連で暴利を貪った悪徳会社に冷たい視線を向けてい

          コイツが犯人か? “政府と結託した人材会社悪玉”説

          コイツが犯人か? “役所が作る下らないルールのせいで生産性が低くなった”説

          日本は生産性が低いと指摘されていて、特に事務職のそれはひどいといわれている。 筆者は、生産性が低いという指摘に同意する。そして生産性が低くなっている主な要因は、役所にあると断言したい。民間企業がやりにくいように、手間がかかるように困るようにしているのは明らかに役所だ。 一例を挙げる。社会保険料の申告業務だ。社会保険料は4月5月6月の給与の平均額を7月10日までに申告しなければならない。これを「算定基礎届」という。6月の給与支払いを待ってしかできない業務なのに、7月10日ま

          コイツが犯人か? “役所が作る下らないルールのせいで生産性が低くなった”説

          コイツが犯人か? “働き方改革”説

          日本人の年収を確実に引き下げる要因になると断言できるのは、アベノミクスの主要政策である「働き方改革」である。残業代が減ってしまうからだ。 安倍晋三元首相を議長として開催された働き方改革実現会議の内容をまとめた「働き方改革実行計画」(2017年)という資料によると、安倍元首相は次のようにいっている。 「働き方改革こそが、労働生産性を改善するための最良の手段。生産性向上の成果を働く人に分配することで、賃金の上昇、需要の拡大を通じた成長を図る『成長と分配の好循環』が構築される。

          コイツが犯人か? “働き方改革”説

          コイツが犯人か? “膨れ上がる健康保険”説

          2020年の医療費は、前年比激減したという。新型コロナウイルス感染症を恐れて通院しなかったせいだといわれている。 しかし、本当にそれだけが理由だろうか? 本当は医者にかかる必要性が低いのにクリニックに行っていた人も実は大勢いたのではなかろうか? それからクリニックの中には、アレもコレもと薬を出してくるところもある。「医は仁術(じんじゅつ)ならぬ算術」といわれるゆえんである。 医療は、まさに利権の巣窟である。そのおかげで健康保険料が膨れ上がり押し潰されそうになっている。

          コイツが犯人か? “膨れ上がる健康保険”説

          コイツが犯人か? “働くと損する仕組み”の年金説

          政府の政策は“働くな”という精神に満ちている。その象徴が60代前半層に対する仕組みである。 60代前半層は59の定年時点と比べて給与が低下すると、雇用保険から高年齢雇用継続基本給付金をもらえる。給与の減額率が60%だと、下がった後の給与の15%が給される。減額率がゆるいと給付金が減る。だから多くの企業は、定年後は60%まで落とそうとする。 従業員本人にしてみれば「私は60代だが、まだまだ体力もあるし、気力もある。若手に負けはしない」と思っていても、制度がネックになる。

          コイツが犯人か? “働くと損する仕組み”の年金説