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「消えた年収」こうすれば日本の給与は上がる!

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日本の給与ダウンが止まらない。このまま下がり続け、ついに“失われた30年”に至ってしまうのか? なぜ、こうなってしまったのか? 年収を引き上げる方策はないのか? が本記事のテーマ… もっと読む
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韓国にも負けて中進国になり果てるのか(序文)

日本の給与ダウンが止まらない。このまま下がり続け、ついに“失われた30年”に至ってしまうのか? なぜ、こうなってしまったのか? 年収を引き上げる方策はないのか? が本記事のテーマである。

筆者は『消えた年収』(2009年・文藝春秋刊)を著したが、そのなかで「1997年→2007年」という10年間を比較した。本記事はその続編で「1997年→2020年」という24年間の変化を分析した。

税務統計を

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筆者が独自に行っている給与調査から探る動向

グラフ①をご覧いただきたい。

これは愛知県の中小企業の正規従業員の2021年度の給与明細を集めてプロットした分布図である。企業数229社、従業員数1万8188人の年収のサンプルが含まれている。

筆者は、このように給与の独自調査を行ってきた。

筆者は、給与のコンサルタント業を行っている。従業員の給与をどう昇給するべきか、賞与を分配するべきかというプランを作成して提案するのが仕事である。

従業

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給与動向を知るためのクイズ

ここから賃金問題を論じることになるが、まず最初にクイズを出したい。国税庁のデータを基に筆者が作ったクイズである。

Q① 1997年と2020年とを比べると、平均年収(非正規従業員含む・1年以上勤続者)はどう変化したか?
 A 14万円増  B 34万円減  C 62万円減

Q② 1997年と2020年とを比べると、勤労者数(非正規従業員含む・1年以上勤続者)はどう変化したか?
 A 719万人

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おじいちゃんも、おばあちゃんも、奥さんも働きに出ざるをえない! 磯野家に例えた実情

先ほどのクイズでも出したが、日本は勤労者数が増えた。1997年から2020年にかけて、4526万人から5245万人になり、719万人も増加した(1年以上勤務者。非正規含む。国税庁)。ちなみに生産人口(15歳~65歳)は1187万人減っている。

少子高齢化だというのに、なぜ勤労者は増えたのか、その背景を漫画・アニメの『サザエさん』の磯野家を例に想像してみた。

まず、マシな時代だった1997年の頃

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平均年収は34万円もダウンした(1997年→2020年)

日本の勤労者の給与は、どう変わったのか?

筆者が本記事で頻繁に使用するのは、国税庁の民間給与実態統計調査結果である。これは年末調整の結果であり、いわゆるアンケート調査ではない。日本の給与を調査したデータとして、これ以上信頼性の高いものはない。本記事では「民間給与実態調査」と略す。ちなみに本記事を執筆している2022年4月時点では、2020年分が最新のデータである。

筆者は『消えた年収』(200

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社会保険料と税金を控除した手取りは62万円もダウン

給与が減っただけではない。手取りの収入も大きく落ち込んだ。手取り収入は、次の算式から導き出される。

給与の総額 ー(公的保険料の本人負担分 + 所得税 + 住民税)= 手取り収入

社会保険料は、この24年間で何度も増額された。その主なものは以下であった。
 ①厚生年金保険料率が引き上げられた。
 ②賞与からも社会保険料を徴収するようになった。
 ③介護保険制度が2000年から導入された。
 ④

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消費税率の引き上げで“実際に使えるオカネ”は75万円もダウン

「手取り収入」を割り出したので、次に消費税の影響も考えてみた。この「手取り収入」からさらに消費税を差し引くと「実際に使えるオカネ」となる。

消費税は1997年は5%だったが、2020年は10%である。そうなると「実際に使えるオカネ」は、次のように計算できる。

1997年
手取り収入392万4700円 × 0.95 = 実際に使えるオカネ372万8500円
  ↓
2020年
手取り収入330万

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物価上昇で“実質収入”は84万円もダウン

物価も考慮したい。では、何の物価と比較するべきだろうか? 筆者はいろいろなモノを思い浮かべた。そこで浮かんだのは「パン」だった。それなら庶民感覚でイメージしやすいはずだ。

総務省に問い合わせたところ、食パンの価格(東京都)は、2020年を100とすると、1997年は96.4であった。つまり食パンは3.7%値上がりしていた。ちなみに総務省の消費者物価指数の「総合」は、1997年が99.5で、202

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家計を支えるため働きに出る人が急増

ここからは「勤労者1人あたりの給与」という視点ではなく「日本全体の勤労者の給与総額」というマクロ的な視点からデータを検証する。市中にオカネがいかに回らなくなったか? を例を挙げながら説明したい。

給与総額(平均年収×勤労者数)は、年収がピーク時であった1997年と直近の2020年とを比較すると、次のようになる。

1997年の給与総額 211兆5080億円
  ↓
2020年の給与総額 227兆

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厚生年金の保険料は57%増で約6兆円増

社会保険(労使折半)には、厚生年金、健康保険、介護保険がある。また、労働保険には雇用保険(一部本人負担)、労災保険(全額会社負担)がある。

日本の勤労者は、厚生年金、健康保険、介護保険、雇用保険の本人負担分をいくら払ったのか? まず厚生年金から調べた。

厚生年金事業年報によると、厚生年金の保険料(本人負担分)は次のとおりだった。

1997年の保険料総額 10兆3415億円
  ↓
2020年

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健康保険の保険料は50%増で約3兆円増

健康保険の保険料(本人負担分)は、次のようになった。

1997年の保険料総額 5兆9000億円
  ↓
2020年の保険料総額 8兆8934億円(2兆9934億円、50.7%増)

この保険料には、協会けんぽ及び健康保険組合が含まれている。
下記の表は、1997年以降の健康保険料率の推移である。全国健康保険協会のサイトから転載。 グラフ⑩

注:2009年9月より都道府県単位保険料率へ変更となっ

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介護保険が新設されて1兆円超の保険料負担が発生

介護保険は2000年から導入された。介護保険料(本人負担分)の総額は、次のとおりだった。厚労省のサイトから得たデータである。

1997年の介護保険料総額 ゼロ
  ↓
2020年の介護保険料総額 1兆3461億円

注:40歳以上64歳未満の勤労者が納付している額を掲載した。

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序文 韓国にも負けて中進国になり果てるのか(動画あり)

第1部

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雇用保険料は12%の減少

「社会保険料増」で稼ぎが飛んでしまった!(1997年→2020年)⑤雇用保険料(本人負担額)は、次のとおりだった。

1997年の保険料総額 6458億円
  ↓
2020年の保険料総額 5665億円(793億円減、12.3%減)

注:このデータは、厚労省に問い合わせて得た。ただし雇用保険料の収入は、国のデータが本人負担分と事業主負担分に区分されていなかったため、一定の割合を筆者が乗じて算出した

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住民税は3兆円増

所得税の総額は、次のとおりであった。国税庁に問い合わせて得た。

1997年の所得税総額 3兆5013億円
  ↓
2020年の所得税総額 3兆1664億円(3349億円減、9.6%減)

また、住民税の総額は次のとおりであった。総務省に問い合わせて得た。

1997年の住民税総額 10兆4275億円
  ↓
2020年の住民税総額 13兆3812億円(2兆9536億円増、12.8%増)

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