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ほころび【エッセイ】八〇〇字

 朝日カルチャーセンター通信教育「エッセイ講座」2021年後期。最終回(12月)の提出課題は、「ほころび」。どんな「ほころび」を想像するか。男と女のほころびか、人間関係のほころびか、セーターのほころびか。因みにヘッダーの写真は、ビートルズのほころびのきっかけとなったシーン。

 13年前購入した終の棲家(のつもり)の、新築マンション。最近、不吉な事が続いている。
 コロナ禍。「巣ごもり」中にはテレビで映画を観る事が、慰みだった。しかし、宣言解除後の昨年7月、12年つきあったテレビが、突然真っ暗に。そろそろ流行りの4K有機ELに買い替えなければと、考えていた矢先なだけに、タイミングのよさに、びっくり。
 今年の6月。3台のエアコンのうち1台が、瀕死の重症から、ご臨終とあいなった。一番こき使っただけに、宜なるかなと、諦める。
 その後、ポストに「給湯器が13年を超えました。そろそろお取替えをお薦めします」なんてチラシ。購入した際の業者と思われる。そんな短期間で交換する必要があるのか。残りの人生、10年とするなら切りが良いが、想定外に20年なら、あと5年は持たせたい。独居なので、いま替えたら中途半端だと思案していると、給湯リモコンが狂い始めた。就寝中に突然、「給湯温度を変更しました」と、機械音のあの女性の声が。触っていないのに。
 加えて、洗濯機も異常音が出始めた。SNS仲間の「突然、洗濯機止まった」の投稿を思い出し、動いているうちにと、手配中。ウオッシュレットも、水漏れで、ボウルを置いて受けている。5.1サラウンドのウーハ・スピーカーも、音が出なくなった。全てがおかしくなってきた。しかし、コロナ禍の影響で半導体が品薄で納期の保障ができないという、「傷に塩」だ。
 ほぼ同時期に。あまりにもタイミングが良すぎる。ひょっとしてメーカーが、新製品を買わせるために遠隔操作しているのじゃ、機器の基板に10年で故障するようにプログラムを仕組んでいるのじゃ、と勘ぐりたくなる。
 その部屋の住人、71年付き合ってきた肉体にも、異変が目立ってきた。小学生のときは、健康優良児で毎年表彰された。何度か入院を経験したが、概ね健康体で来た。しかし、経年劣化なのか? それとも、これもプログラムが、仕組まれているというのだろうか。

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