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ウォーキング小景「ためらい」【エッセイ】六〇〇字

 早大エクステンション「エッセイ教室」秋講座。1回目のお題が、「ためらい」(600字)でした。過日書いた「ウォーキング小景(「無敵艦隊」)【エッセイ】一六〇〇字」の向田邦子の『無敵艦隊』に絡めて、(クイズで出したシーンを“結”にし)自分なりのウォーキング小景を描いてみました。

               ※
 「無敵艦隊」のお姉さま方に、よく出会う。
 還暦前から十数年、八千歩ウォーキングが日課。時速5キロ。排ガスを敬遠して、片側一車線脇の歩道を、速足で。すれ違うことはできるが、前を横並びで歩かれると、悩む。2人ぐらいなら、「カニ族」よろしくサイド・ステップで、軽やかに追い越せる。
 が、近所のお茶道場から出てくる、着物姿の女性と遭遇した時は、難渋する。横並びに、仲良く歩いている。かつ、歩幅は、小さい。
 同じ体験をした性急せっかちな向田邦子は、お姉さま方を見て、「無敵艦隊」という言葉が「ひょいと浮かんだりする」と、書いている。
 茶道や華道などの習い事のお仲間は、向田独特の比喩だが、「天平美人」が多いようで、横幅をとる。後ろについてしまったら、迷う。足音で気づいていただこうか、お声掛けしようか、と。我慢して、ついて歩いてもよいのだが、聞き耳を立てているようで、気まずい。 
 追い越す話とは逆だが、こんなことも。
 小雨の日。和服のご婦人が、傘をさし歩いてきた。歩道の左が車道とガードレール、右は3m程の塀。塀側を歩いてくる。塀伝いに進めば、進路を変えてくれるだろうかと迷っていると、察してくれたのか、車道側に傘をちょっとだけ傾け、会釈をして通り過ぎた。その姿は、吉永小百合。ひょいと浮かんだ。無敵艦隊ならぬ、「笹船」という言葉が———。

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https://www.kobaken.info/blog/16754

(おまけ)

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(朝日新聞朝刊10月21日)

 6月22日に、朝日新聞朝刊のコラム「論の芽」を読んで、「すみません」じゃなく「ありがとう」を使おうと、ご提案。そのエッセイと同様に多くの読者が共感し投稿があった旨、紹介されていた(読めなくて、“すみません”)。


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