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クレーマー・クレーマー【エッセイ】一四〇〇字

 高田明氏が創業した「ジャパネットたかた」。氏の独特な声色、トークが話題で、急成長した。彼が引退した後も、甲高い声がテレビから流れると、画面がつい気になる。
 そのセールス・トークに乗せられ、ついに初めて注文してしまった。コードレス掃除機と体重計。最近見かけたひとも多かったのではないだろうか。使用済みを引き取ってくれて割引してくれることに、つられた。
(以下、ジャパネットたかた社にはなんの落ち度はありませんので、最初におことわりしておきます)

 商品が到着し、直ちに掃除機を組み立て、使ってみる。価格は、これまで使っていたものの倍だが、吸引力は、同程度。でもまあ使い方や得意技があるだろうと、何日か使ってみることにした。
 体重計は、取説を見ながら設定するが、従来のものよりもちょっと複雑。新機種だしいろんな数値が測れるのだから仕方ない。体重(は当然)、BMI、体脂肪率、内臓脂肪、筋肉量、推定骨量、基礎代謝量、体内年齢、そして、脚腰年齢など、使用していた機器よりは種類が多い。さすがに高いと違うなと感心。測定してみる。体内年齢は、61歳。フムフム10歳若い。ま、そんなもんだろう。しかし、ある数値に驚愕した。脚腰年齢が、75歳と出たのだ。
「えええええええええ、嘘でしょう?」
「8000歩ウォーキングを毎日やっているんだよ。嘘でしょ?」
 しかも、従来器には、体水分率があったが、この機器にはない。血液サラサラにするためには、水分量が重要。とたんに、古い方が良かったのではないかと思うようになってきた。体重計で懐疑的になると、掃除機の性能までが信じられなくなってきた。

 そこでカスタマーセンターに電話をかけることにした。
「使ってみたら、引き取ってもらった古い物の方が、性能が良いので、返品したいのですが」
「あの・・・返品は受け付けていません。すみません」
「クーリングオフがあるじゃないですか?到着してきょうで7日です」
「あの・・・クーリングオフは、訪問販売の法律であって、テレビショッピングでは適用されません」
「それは知っていますが(実は失念していた・・・)、使ってみないとわからないじゃないですか。アマゾンでは返品を受け付けていますよ」
「アマゾンさんはそうでしょうが・・・」
「あの、出るところに出ますよ」
この会話を何回か繰り返す。ついに、先方が音を上げてきた。
「少々お待ちください。上司に相談してみます」
 10分くらい待っただろうか。
「それでは、今回に限り特別に受け付けますので、ご返品ください」
「どうすればいいでしょうか」
「製品が入っていた箱に入れて戻していただけますでしょう。運送業者を手配しますので」
「え? 箱なんて捨てましたよ。戻すことを想定していないでしょ。普通」
 都合30分になっただろうか、返品送料は負担することで一件落着とあいなった。
 電話を切り、少々自己嫌悪に陥った。応対してくれた女性には問題なかった。いや、むしろワタクシのほうがモンスター・カスタマーであったのではないか。

 翌日、家電量販店に走った。コードレス掃除機は「ダイソン」に、体重計は以前使った旧式のタイプを買うことにする。最初からケチらずに評判の製品にしておけば良かった、と思う。
「良い子は、絶対にマネをしないように」

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