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結核病棟(番外篇)『霜柱』【エッセイ】八〇〇字(本文)

 朝カル通信講座「エッセイ教室」2022年後期の最終課題、「霜柱」。北海道では、雪が降る前に、サイレンが鳴ることが何度かある。「霜が降りるゾー」という警報。農家にとっては作物を護るために一騒動。その後、さらに冷え込んでくると霜柱が、にょきにょきと持ち上がってくる。ときには、線路を持ち上げたり、コンクリートさえ破壊したりする威力がある。
 この『霜柱』は、「結核病棟シリーズ」で登場しているエピソードと、一部重なる。なので、いつもよく読み込んでくださる方は、「またかよ~」と、お思いやもしれません(笑。が、「霜柱」のテーマで、長編を八〇〇字に詰めた書き下ろしとして、ご判断いただければ幸いです。講師からは、まあまあの評価をいただきました。
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 三学期最終日の朝。病棟前の通学路を歩いていた。キュキュっと、雪音を立てながら。
 半世紀以上も前。高校二年の年末。結核と宣告され、三が日明けから隔離病棟に。
 診断では、軽症で無菌。生まれた頃には、特効薬が開発され、「不治の病」ではなくなっていたが、それでも、退院まで半年。病棟は、母校がある北海道・滝川の市立病院に併設されていた。当時でも重症者は、『菜穂子』のように、高原のサナトリウムに隔離されていたのだろうが、市中にある施設。みな無菌で、看護婦達以外は、マスクをしていなかった。なので、病棟内は、比較的、自由だった。
 ただ、長期療養になるので、定期的にイベントが企画され、映画や演奏会等が集会場で、行われた。
 中でも楽しかったのは、「大相撲勝ち力士予想大会」。その日の取組がガリ版印刷された用紙を、看護婦が配る。予想する勝ち力士に〇を付け、締切りまでに箱に入れる。柏鵬時代。北の富士も大関だった。集会場のテレビで観戦するか、部屋のラジオで聴くか。一番ごとに歓声が響く。禁止されてはいたが、麻雀もあった。花札のような紙にパイの絵柄が印刷されていて、針金で造られたものに立てる。紙なので、音がしない。足音がすると、布団を覆う。むろん、看護婦は気づいている。
 楽しいこともあったが、普段は、安静にすることと、よく食べて太ることが、仕事。一日が長かった。特に、最初の三か月は・・・。
 入院から四か月目。根雪が消え始め、外に出ることを許され、病棟前にある広場辺りの散歩を日課にした。蕗の薹やつくしんぼうが顔を出し始める。しかし、寒い朝には霜が降りる。ある朝、食事の後に外に出て、広場を挟んだ通学路を見ていた。入院前に、病棟を見ながら歩いていた道だ。ちょうどそのとき、同学年と思われる新三年生たちが、歩いているのが、見えた。ザクザクと、音を立てながら。
 この音を聞くと、まもなく桜の季節になり、遅い春がやってくる。

(おまけ)

1月28日にアップした若菜【エッセイ】六〇〇字の(おまけ)で、青学大名誉教授・三木義一氏のコラムを紹介した。大いに同意する内容だった。

「東京新聞」朝刊(1月26日)

最近(1月8日)、朝日新聞は、その社説で「松竹伸幸氏の除名問題」についての意見文を書いた。

「朝日新聞」朝刊(2月8日)

この朝日新聞社説に対して、志位委員長は、“猛反論”していると、テレビ朝日(ANN)は報じている。
この日本共産党の姿勢について、「ご隠居」(青学大名誉教授・三木義一)と同じく、期待していただけに残念である。内田樹氏をはじめ、ジャーナリストの有田芳生氏、 江川紹子氏、政治学者の山口二郎氏も批判している。共産党に理解を示していた彼らでさえも。日本共産党は、いまからでも遅くはないので、その姿勢を改めることを、切に願う。

<テレビ朝日(ANN)の報道文>
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共産・志位委員長「いきなり外から攻撃を…」党員除名は妥当 朝日社説に“猛反論”も
2/9(木) 23:39配信

共産党の志位委員長は9日、「党首公選制」の導入を訴えた党員について「いきなり外から攻撃した」と批判したうえで、除名とした処分は「妥当な対応だ」と強調しました。
 共産党・志位委員長:「異論をですね、党内の正式なルートにルールに基づいて表明するという努力を一切しないまま、いきなり外から攻撃したと。しかも規約と綱領の根本的立場を攻撃したと。これはルール違反です。(除名処分は)妥当な対応だと考えております」
 共産党は6日、党首公選制の導入を主張したジャーナリストの松竹伸幸氏を「事実を歪めて攻撃している」などの理由で除名処分としました。
 志位委員長は「異論を持っているから排除したわけではない」と説明し、党首公選制を「押し付けるのは道理がない」と強調しました。
 そのうえで、中央委員会で党首を選出する今の方法が「一番、民主的で合理的だ」という考えを示しました。
 さらに、志位委員長は「国民遠ざける異論封じ」と題して松竹氏への処分を批判した朝日新聞の社説について「あまりに不見識だ」と厳しく批判しました。
 共産党・志位委員長:「あまりに不見識だと思います。まさに党の自主的、自律的な運営に対する乱暴な介入であり、干渉であり、攻撃だと私たちは断じざるを得ません。朝日に指図されるいわれはないんです」

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