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ハイリスクハイリターンの投資

経団連が2022/3/11、スタートアップ企業の育成策を提言しました。2027年までにユニコーン(企業価値10億ドル以上)を100社に増やす目標を掲げ、法人設立手続きの簡素化や大企業による M&Aの推進、海外人材の誘致などを幅広く盛り込みました。
世界銀行がGDPを元に計算した試算では日本におけるユニコーンは138社で、現在の15社と大きな開きがあります。当該ギャップに関して、世銀東京開発ラーニングセンターのビクター氏は専門的アクターの少なさを主因にあげます。専門的アクターとはスタートアップの成長・支援を目的に設計され、行動する組織、人を指します。東京の場合、生態系に占める専門的アクターの比率は30%、ニューヨークの76%と比較して半分以下です。
 
トップキャピタリストの共通項として、投資対象の分析や定点観測といった地道な作業を徹底し、人として謙虚である、起業家とゼロから何かを作り、形が見えてくると興奮し、脳内で化学反応が起き中毒性がある人がよいとされます。起業家と投資家を両方こなし、全体像を捉える鳥の目、物事を緻密に掴む虫の目、時代の流れを読む魚の眼を全て持っていることが理想です。日本は金融出身のキャピタリストが多く、シリコンバレーと違って企業やスタートアップの実務を経験した人材は少数派です。経営のテクニックやノウハウの伝達ではなく、根本的な哲学や価値観を起業家に問うことが大切になります。アメリカ人のビル・キャンベル氏は、ソフト会社などでの経営手法もさることながら、多くの若いリーダー達の導き手となったことで評価が高いです。
 
スタートアップ、ベンチャーはご存知の通り非常にリスクが高い投資となります。私自身もベンチャー企業を立ち上げて起業しておりますが、リスクは高いなと思っております。売上が上がるか、利益が出るか、ビジネスが成功するかは本当に分かりません。ベンチャー企業の生存率は5年後が15%、10年後は6.3%、20年後は1%以下です。
経営者ですら分からないものを、そのベンチャーに投資するシード向けベンチャーキャピタルはさらにハイリスクだと思います。経営者といかにコミュニケーションを頻度多く実施したとしても経営者と完全にシンクロすることはできません。上記の生存率しかない赤の他人の企業にお金を掛けられるスタートアップベンチャーは本当にすごいと思います。ハイリスクな分、議決権やIPOによるキャピタルゲイン、優先配当によるインカムゲイン等ハイリターンを求めるのは理に適っていることです。ベンチャー投資は間違いなく『ハイリスクハイリターン』の最上位に位置する投資だと私は思っております。
 
もし日本がシリコンバレーのようなブルーシリコンバレーを目指すのであれば、一番難しいのは起業の価値観、精神、覚悟のようなものではないかと思います。専門セクターの組織であれば国が予算をつけることはできます。経営大学院でスタートアップのノウハウ等を学ぶこともできます。ただ、ビル・キャンベルのような人を育てることが果たして日本にできるのか、と言われると難しいところです。アメリカ人と日本人の気質の差もありますが、どうやったらスタートアップに必要な覚悟を育てることができるのかは今後の宿題となっております。
私見として日本を活性化し、Japan As No1を復活させるためにはブルーシリコンバレーは必須だと思います。皆様の中でよいアイディアがあればぜひ共有頂ければ幸いです。


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