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経産省と原子力規制委員会の境目

2023年12月27日午前、原子力規制委員会が、東京電力の柏崎刈羽原発(KK)の燃料移動の禁止命令を解除して、市民団体が抗議の声を上げている頃、齋藤経済産業大臣はすでに東電の小早川社長と会っていた。


KKの禁止命令解除は、この日、原子力規制委員会の審査の結果、決まったことだ。しかし、その結果が、事業者の東電にも原発推進官庁の経産省にも見透かされ、この日程が確保されていたことになる。

経済産業大臣は元経産官僚

齋藤大臣は経産出身。前任者であり、現在、裏金問題で揺れる清和政策研究会(安倍派)の事務総長だった西村康稔氏もまた経産省出身(経歴より)だった。

経産省ウェブサイトより

原子力規制庁トップ5も元経産官僚

今や原子力規制委員会の裏方である原子力規制庁幹部(長官、次長、原子力規制技監、緊急事態対策監、核物質・放射線総括審議官)も元経産官僚が占めている。

出典:「原子力規制庁の運転期間延長事前検討の分析」松久保肇(原子力資料情報室)
2022年12月27日記者会見資料より

原発の運転期間を延長する法改正を巡っては、規制庁とエネ庁が事前に相談していたことが明らかになったり、その発覚後に、規制庁とエネ庁が駅で「面談」していたことが内部告発で明らかになったりした。

規制委員会と推進官庁の境目はどこに?

原子力規制委員会の山中委員長は12月27日の東電社長との面談において、最後に「核物質防護、安全についての第一義の責任は、事業者である東京電力にあるということは忘れないでいただきたい」と述べた。

また、齋藤大臣は、12月28日には「東京電力に対し安全・着実な廃炉に向け最大限の緊張感を持って取り組むことや、わかりやすい情報提供、風評対策、迅速・適切な賠償に取り組むよう」伝えたという。

原子力規制委員会設置法は、その第3条で、原子力規制委員会は、「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図ること」を「任務」とし、経済産業省設置法は、その第4条で経産省は「54 エネルギーに関する原子力政策に関すること。55 エネルギーとしての利用に関する原子力の技術開発に関すること」を「所掌事務」としているが、その2つの境目が、どこにあるのかが、わからなくなる年だった。

【タイトル写真】

2023年12月20日筆者撮影

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