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原発抜きに考えても深刻な問題:家屋の耐震化

「新耐震基準」導入後に新築・改築でも半数の木造家屋が「全壊」に…石川・珠洲の現地調査(2024/01/06 読売新聞)というニュースは衝撃的だった。1981(昭和56)年に厳しくなった「耐震基準」導入後の家も全壊したという。


「屋内退避」を求める原発の不可能性

これでは事故が起きたときに「屋内退避」(*)を求める原発そのものの不可能性を証明したと言える。

だから、原子力災害対策指針を見直すべきだと問うた(既報)。見直しの結果、深層防護の第5段階である「避難計画」の立案が不可能なら、原発は断念されるべきだ。間違っても原発ありきの「避難計画」をでっちあげるべきではない。

原発抜きに考えても深刻

しかし、原発抜きに考えても、これは深刻な問題だ。珠洲市では2019年に「珠洲市耐震改修促進計画」を立てていた。

その背景は全国の市町村で役に立つので抜き出す

1−4 耐震化の必要性
東海、東南海、南海、首都直下型などの大地震の脅威が切迫し、いつどこで発生するかわからない地震に対して備えておく必要があります。過去の地震被害の多くは建築物の倒壊等によるものであったことから、住宅・建築物の耐震化を図ることは地震対策を行う上で重要といえます

2019年「珠洲市耐震改修促進計画」p.11太字は筆者

阪神・淡路大震災でも被害者の9割は建物倒壊

その例として、1995年の阪神・淡路大震災のグラフが記されている。「被害者の約9割(4,831人)は住宅の下敷きなどにより命を奪われた」(2019年「珠洲市耐震改修促進計画」p.11)というものだ。

2019年「珠洲市耐震改修促進計画」p.11

どの地域でも全半壊は免れない

続いて、1993年2月「能登半島沖地震」でも珠洲市で全壊1棟、2007年「能登半島地震」で全壊686棟(地理的範囲は明記されていない)、2011年「東日本大震災」で全壊・半壊39万戸、2016年「熊本地震」で全壊8,668棟、半壊34,720棟、2018年「大阪府北部地震」で全壊9棟、半壊87棟(「珠洲市耐震改修促進計画」p.11~12)だとし、大地震のなかでも規模には差はあるが、どの地域でも全半壊は免れなかったことを示している。

この珠洲市の計画では、耐震化が効果的だとして2028年までに住宅の耐震化率目標70%を掲げていた(2018年度末実績で51%)。しかし、冒頭のニュースは、たとえ、新耐震基準をクリアしても、半数の木造家屋は「全壊」したというものだ。

原子力災害対策防災指針が、この新旧の知見を反映したものでなければならないのは当然だが、原発抜きに考えても、どの自治体も住民も、地震被害の多くが建物倒壊によるものだという厳しい事実認識と準備をする必要がある。

石川県の2019年の地震想定

実は、私自身の認識も甘かったことを、上記の珠洲市が整理したデータで気付かされたが、それ以上に驚いたことがある。それについても言及しておきたい。

9頁目だ。今回の地震は想定された「能登半島北方沖の地震」想定に位置と規模が近い(想定はマグニチュード7.0で、今回は7.4)。それでも、今のようなあらゆる混乱が起きている。被害想定とその準備は不十分だったということ。

2019年「珠洲市耐震改修促進計画」p.9

想定される「邑知潟の地震」は志賀原発のすぐ南

また、能登半島の付け根に近いところには「邑知潟(おうちがた)の地震」が想定され、Googleマップで見てみると、志賀原発のすぐ南であることがわかる。

「邑知潟」からズームアウトすると、そこは、羽咋市から中能登町を通って七尾市にかけて、地図でわかるほどの巨大な断層の一部ではないか。通称「推本(すいほん)」と呼ばれる政府の地震調査研究推進本部では、これを「邑知潟地溝帯」と読んでいることもわかった。

Googleマップより

今回の断層の長さ(150km)や、これまでに起きた地震の多さを調べた上で、地震の巣窟だと既報したものの、これほどまでかと。そして、なぜ、ここで志賀原発を再稼働しようと考えることができるのか。北陸電力に問いたい、と思った。

(*)「たとえ屋内退避ができたとして、その後、状況が悪化したときに誰が助けに来てくれるのだ」旨の声や、「避難しても戻れない」の声もいただいている。

【タイトル画像】

2019年「珠洲市耐震改修促進計画」P.12 より

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