「令和6年能登半島地震」から考えさせられる原発震災
能登には志賀(しか)原発と中止になった珠洲(すず)原発計画*があり、「令和6年能登半島地震」から、原発災害避難について考えさせられることは多い。
1.道路通行止め
能登半島地震により24路線54ヶ所の国道、県道、高速道路の通行止めがあった。
このことから原発災害からの避難計画は、道路が使えないということを前提にしなければならない。それが不可能なら原発は断念すべきであるということ。
2.屋内退避は机上の空論
石川県の珠洲市長は、「市内の6000世帯のうち9割が全壊またはほぼ全壊だ」と災害対策本部会議で語ったとされている。
屋内退避をする考えは机上の空論であり、政府が有効だと考える屋内退避はできないことを前提にしなければならない。それが不可能なら原発は断念すべきであるということ。(既報:原発避難は「弊害」という考え方はどこから来る?)
3.震央や最大震度と異なる場所で地殻変動
国土地理院は「だいち2号」観測データの解析による令和6年能登半島地震(2024年1月1日)に伴う地殻変動を発表した。これを見ると、震央とも、最大震度7の石川県志賀町(気象庁発表参考)とも違うところで、上下・東西に地殻変動が起き、斜面崩壊が生じたことがわかる。
どこで何が起きてもそれは想定内だということ。
上下方向の変動量
東西方向の変動量
斜面崩壊・堆積
4.150kmの逆断層、地震の巣窟
政府の地震調査研究推進本部(令和6年能登半島地震に関する情報)は、1月1日16時10分頃の地震について「推定される震源断層は、北東-南西に延びる150km程度の主として南東傾斜の逆断層であると考えられる」と発表。根拠資料として、産総研地質調査総合センター「令和6年(2024年)能登半島地震の関連情報」を用いている。
また、「過去の地震活動」(P30)によれば、能登半島周辺では1700年以降に多くの大地震があり、1892年12月には志賀原発近傍でも2度起きている。このような地域で行う発電が、本当に原子力でなければならないのか。これは、事業者にとっても、国民の安全を考えるべき政府にとっても、これは再考する機会だ。
5.原発情報は後出しになること
今回の地震では過酷事故が発生しなかったことは不幸中の幸だった。北陸電力は、停電や復旧対応に追われる中、地震の翌日11時になってようやく、志賀原発について、情報を出していった。
第二報までに(第一報は既にリンク切れ)、1・2号機の変圧器からの油漏れ、1・2号機の使用済燃料貯蔵プールからの溢水、1号機の冷却水の漏洩、2号機の蒸気タービンの「伸び差大」の警報が出ていたこと、外部電源3系統66kV、275kV、500kV(規制庁は2系統と1日にブリーフィング)のうち500kVの電源は受電できない(下図によれば2号機主変圧器の故障によるものか)ことが発表された。
第三報で、高さ4メートルの防潮壁が数センチ傾いたこと、1・2号機の廃棄物処理建屋の接続部分のカバー約15メートルが脱落していたこと、2号機の使用済燃料貯蔵プールに2.5メートルのケーブルカバーなどが落下していたことが発表された。
第四報で、2号機では、発電機のコイルから油漏れし、取水槽内では海面が3メートル上昇していたことが発表された。
第四報が出たのは、事故から2日目だ。このことから、広大な敷地に立つ巨大システム原発が震災に見舞われると、全体の異常の有無を把握するだけで時間を要し、情報は後出しとならざるを得ないことがわかる。
まとめ
今回、過酷事故は起きなかった。しかし、道路を使った避難や屋内退避の困難性、人知を超えた天変地異、巨大システム原発に関する情報遅延問題を踏まえ、私たちはもう一度、原発政策について議論をし直すときが与えられたのだと、考えさせられた。
令和6年能登半島地震 関係ウェブサイト
*珠洲原子力発電所計画の凍結について(平成15年12月5日、中部電力株式会社、北陸電力株式会社、関西電力株式会社)
【タイトル画像】
国土地理院「「だいち2号」観測データの解析による令和6年能登半島地震(2024年1月1日)に伴う地殻変動(2024年1月2日発表)」より
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