志賀原発で何が起きていたか? ⑤壊れた変圧器は、データ改ざんのあった三菱電機製だった
能登半島地震で、志賀原発1号の変圧器から3,600リットル、2号機の変圧器から19,800リットルもの油が漏えいして機能しなくなった問題の続き。
【3月25日加筆】1号機の変圧器は「東芝製」であると北陸電力に確認し、「北陸電力が三菱電機に確かめるべきこと」を「北陸電力が東芝と三菱電機に確かめるべきこと」として修正を行いました。
参議院予算委員会での質疑
「志賀原発の変圧器は、500ガル程度までの耐震設計を要求されていたのに、399ガルで壊れてしまった」と書いた(2月8日「志賀原発で何が起きていたか? ④変圧器が壊れた後のできごと」)。
まさにこの点を含めた質疑が、3月4日の参議院予算委員会で行われた。
石垣のりこ議員による質疑で、まずは壊れた変圧器が、試験性能データに改ざんがあったものだったことが明らかにされた。その概要は以下の通り。
不適切な検査が行われた三菱電機製の変圧器
ん? 1号機でも壊れたんだが。
国会質問で問題とされたのは2号機だけだが、変圧器の油漏れは1号機にもあった。3,600リットルが起動変圧器のコンサベータから漏れた。
2号機からは主変圧器のコンサベータから3,500、冷却機配管から1,800、本体から14,500、合計19,800リットルが漏れた。
つまり、1号機変圧器は、たった399ガルでも壊れた。
また、2号機は本体まで大々的に壊れた。ということは、1号機(399ガル)以上揺れたと考えるのが自然ではないか。
山中委員長のいう「399ガルは志賀原発1号機の原子炉建屋地下2階に設置された地震計で記録された最大加速度。今回、損傷した変圧器が受けた加速度と必ずしも同じではないために、500ガルの耐震性能があるはずなのに399ガルで損傷したとのご指摘は必ずしもあたらない」というのは何の説明にもなっていないのではないか。
北陸電力が三菱電機と東芝に確かめるべきこと
1号機の変圧器で東芝が、そして2号機の変圧器で三菱電機が報告していた耐震性と、その裏付けとなる試験データ、およびそこにも不正がなかったかは、最低でも北陸電力が自らの点検以外にも、三菱電機に対して求めるべきではないか?原子力規制委員会がやる気がないのであれば。
他の電源との接続がなければ、「外部電源」を喪失しかねない事態だったからだ。
あと2つの素朴な疑問
なお、北陸電力は「読売新聞社に対する当社の抗議内容について(2月5日掲載)」で以下のように説明していた。
基準地震動は1,000ガルでいいのか?
北陸電力のこの説明をまとめると、
・志賀町富来地区の地震観測計で2,828ガル
・北陸電力が申請している志賀原発の基準地震動は1,000ガル
・2つは地盤が異なるから単純比較できない
ということになる。
しかし、第1に、北陸電力が申請した「基準地震動1,000ガル」が十分かどうかは別問題として残る。今回の能登半島地震を受けての新知見は、2、3年はかかるのではないかと原子力規制委員会周辺では囁かれている。また、住民からはそれ以上の厳格さが規制側に求められている(「地震や津波は止められない。でも原発は止められる」原発周辺住民が要請)。いずれにしても、見直しは必至だ。
変圧器耐震性は500ガルでいいのか?
第2に、100歩譲って、たとえ基準地震動が1,000ガルだとしても、変圧器の耐震性が500ガルでいいのかどうか。壊れることが前提でいいのかという問題も残る。
安全性の確保に時間と人材が削がれる電源
このように微に入り細に入り、安全性の確保に時間と人材が削がれる。それを無視して再稼働をすることが許されないのが原発だ。非効率な電源だ。石垣議員は岸田総理大臣にも見解を求めた。
2022年の不正の背景もわかりにくい
なお、原子力規制庁は2022年12月14日に原子力エネルギー協議会(ATENA)から、不正について説明を受けていた。「規定されている通りに試験を実施していなかったものであるが、電気設備技術基準の要求は満足している」というものだ。
その会合で、不正をされた側の電力会社が束になって作って出した資料によれば、不正があったのは、山中委員長が国会で答弁したように、「交流耐電圧試験」と「温度上昇試験」の2つ。
「交流耐電圧試験」については、現地での試験を省略してよい規制緩和が行われていたことがわかる。
「温度上昇試験」についても同様だ。
これだけを見れば、現場での試験データを求められなくなり、工場試験を実施すればいいという規制緩和がなされたことが事実としてあり、結果的にデータ改ざんが行われていたことがわかる。しかし、それだけでは1982年から不正が行われていたことの説明にはならない。齋藤経産大臣が求めた「十分な対外説明」にはなっていないように思う。
不正発覚後も検査不正が行われていた
さらに、2022年4月21日高知新聞「三菱電機、また検査不正 40年間で変圧器3千台超」や同年4月22日朝日新聞「三菱電機、変圧器の性能不正を3月まで継続 出荷先の原発は非公表」によれば、こうした検査不正に関する調査は2021年7月に始まったにもかかわらず、出荷は2022年3月まで続いていた。悪質だ。
調査は、経産大臣が国会で「第三者調査委員会による」と答弁したが、第三者と言っても、「調査委員会による調査報告書」によれば三菱電機が依頼した社外弁護士(西村あさひ法律事務所の弁護士)らによるものだ。
2ヶ月後にメディア公開
北陸電力は3月7日に地震以来初めて、メディアに公開。2号機変圧器については「復旧に向けて補修方法などを検討している」段階だとされる。
原発の部品は1000万点にものぼると言われる。その安全性を一つひとつ確認しなければならない(実際にはされていない)。故障する。老朽化もする。少子高齢化する日本で本当に、必要とされる電源なんだろうかと首を傾げる。
【タイトル画像】
2022年12月14日 原子力規制委員会資料1「三菱電機(株)及び日本製鋼所(株)子会社の不適切行為に関する電力各社の状況 令和4年12月14日 」表紙より
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