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志賀原発で何が起きていたか? ④変圧器が壊れた後のできごと

志賀原発で何が起きていたか? ③変圧器が壊れる意味の続報。1月30日にようやく北陸電力の会見に参加し、いくつかの謎が解けた。


変圧器の絶縁油漏えいの写真

1月2日に各紙が、志賀原発の変圧器から「油が漏れた現場」写真(北陸電力提供)を報じたが、どこを映したものなのかが疑問だった。

それは、志賀原発1号機の変圧器」を構成する部品のひとつ「放熱器」の1個半の分の下部(以下、黄色枠)を拡大して写したものだった。

北陸電力「令和6年能登半島地震以降の 志賀原子力発電所の現況について」(1月30日現在)などより
筆者作成

「損傷」とは「亀裂」

漏れたのは1号機で3600リットル(L)、2号機で2万4600Lだと分かっていた(既報)が、それが「絶縁油」で、何故だったかを北陸電力は30日に説明したのだ。リリースには「損傷」としてあるが、「1号機変圧器の損傷とはどういったものか? 揺れによる破断か? 歪みか? ズレか?」など色々聞いて、やっと変圧器本体と放熱器の接続部に「揺れによって亀裂が入って、そこから油が出た」とわかった。50センチの円周で、20センチの亀裂だそうだ。

内部調査はこれから:だから原発は安定供給電源ではない

ちなみに、1月30日の会見は、あくまで15日までの外部点検の結果で、原子炉をはじめとする内部の調査はまだまだこれから。

巨大な精密機械である原発は、一度、大地震で揺れると、その後の点検は長期にわたる。エネルギーの安定供給のために原発を!と推進派は謳うが、日本ではまったく違う。原発は安定供給源とはみなせないと批判される所以でもある。(いずれにせよ、志賀原発はまだ新規制基準の審査が終わっていない。その前提となる地震動の新知見すらこれから検討が始まる。)

変圧器の耐震重要度は?

1月10日の原子力規制委員会で「変圧器につきましては(略)ほかの原子力施設の安全上重要な施設のような、高い耐震基準は求めてございません」と既に規制庁の事故対処室長が述べていた。原発における耐震重要度は、S、B、Cと3クラスあり、放射性物質を外部に放散する可能性のあるSクラス、Bクラスと比べると、Cクラスは一般の産業施設と同等でいい。変圧器は1番下のCクラスなのだ。

399ガルで壊れた耐震500ガルのはずの変圧器

この件では、さらに具体的なことがある事件が起きて判明した。

1月31日の北陸電力の決算会見をもとに報じた読売新聞が、北陸電力の抗議「読売新聞社に対する当社の抗議内容について(2月5日掲載)」を受け、元の「志賀原発の変圧器、最も強い揺れに耐える「クラスC」でも壊れる…修理見通し立たず」との見出しを「志賀原発、変圧器故障など複数トラブル…北陸電「新しい知見に基づき安全対策講じるに変えた。

この抗議を読むと、「今回の地震で観測した地震動は、志賀原子力発電所で399ガル」。一方で、「今回損傷した変圧器は一般産業品と同等の耐震設計(耐震Cクラス)が要求されており、当然ながら、その要求を満たした変圧器を設置しています。 その耐震性として500ガル程度の揺れまで耐えられる」と書いてあったのだ。

変圧器がポンコツ?399ガルが間違い?

つまり志賀原発の変圧器は、500ガル程度までの耐震設計を要求されていたのに、399ガルで壊れてしまった。変圧器がポンコツだったのか、そもそも耐震性はあてにならないのか? 老朽化していたのか? それとも、399ガルという観測値が間違っていたのか? そのどれかか全てか? そういう新たな疑問が浮かんでくる。

ドラム缶123個分の油は二重底から回収

なお、先日「志賀原発で何が起きていたか? ③変圧器が壊れる意味」で、漏れた油について次のように書いた。

規制庁の広報室にに聞くと、この変圧器の下には13.2m✖️5.2m✖️深さ5.4mの「堰」が掘られていて、油が漏れることは想定された上で砂利で満たされているという。ドラム缶123個分の油はそこに入ったというが、どう回収したのかは分からないという。不思議な装置である。

志賀原発で何が起きていたか? ③変圧器が壊れる意味

その後、さらに聞くと、変圧器の下にある「堰」は2重になっていて、油は砂利を通って外側の堰に落ちるので、ポンプでくみ出して回収できるのだという。

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北陸電力「令和6年能登半島地震以降の 志賀原子力発電所の現況について」(1月30日現在)などより筆者作成


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