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老朽化原発:見ていないケーブル接続部 #GX

ケーブルの接続部の話にこだわって書いてきた。ケーブルは原子炉などともに、老朽原発の安全を確認する上で一番のハードルだと、山中伸介原子力規制委員長が述べていたからだ。

にもかかわらず、現在の制度のもとでは「ケーブル」の点検はしても、「ケーブルの接続部」の点検は、後述する「高経年化技術評価」でも「特別点検」でも行われていない。(実は、取材をしながら、だんだん、そのことがわかってきた。)

なぜGX脱炭素電源法案がダメか

今、参議院で審議されているGX脱炭素電源法案で束ねられた原子炉等規制法一部改正法案では、運転期間を削除しようとしている。そして、その代わりに同法案で法律に格上げするという劣化評価でも、「高経年化技術評価」と「特別点検」を踏襲しようとしている。これはまずい。

ハードルの高いのは?「原子炉、ケーブル、コンクリート」

遡る。2022年10月12日、山中委員長は、記者会見で記者と以下のようなやりとりを行っていた。

○記者 共同通信のヒロエといいます。よろしくお願いします。僕も長期運転の話でお伺いしたいのですけれども、長期運転の安全確認で事業者側の一番のハードル、立証が難しくなってくるのは何なのかなというのをちょっと考えて、その圧力容器の照射脆化というのがやはり一番ハードルが高い、立証のハードルが一番高いということになってくるのでしょうか。

○山中委員長 恐らく、物理的性質としては多分3つ。1つが圧力容器の中性子脆化の話、それからもう1つがケーブル、それから3つ目がコンクリート。その3つがかなり難しいハードルになるかなというふうに思っております。

2022年10月12日記者会見

この時のことを覚えていたので、2022年11月9日の会見で、この時は「配管」を例に挙げて尋ねた。

○記者 フリーのまさのです。委員長、10月12日の会見で、老朽原発の安全確認で一番ハードルが高いものということで三つ挙げられておられます。圧力容器、ケーブル、コンクリートで、今度その注視して見ていきたいところということで聞かれて、11月2日には、その三つに加えて、配管と電気部品ということもおっしゃられています。配管についてなんですけれども(略)

○山中委員長 詳細な議論というのは、多分これから設計をしていかないといけないところだと思います。(略)

2022年11月9日会見

そして、GXの法案審議が次々と進む中、同時並行で、枠組みしか書かれていない法案の中身の制度設計の議論が、原子力規制委員会が設置した高経年化した発電用原子炉の安全規制に関する検討チーム で始まった。

「高経年化技術評価」ではケーブルの接続部は見ない

法案が成立した後の新制度でも「高経年化技術評価」(=運転開始後30年目と、その後10年ごとに行う経年劣化の評価)は、名前を変えて、そのまま踏襲しようとしている。現在の評価の中身は以下のようなものだ。

令和5年2月22日高経年化した発電用原子炉の安全規制に関する検討チーム
発電用原子炉の規制制度の枠組み」  

上の図を書き出すと以下の通り。
●配管関係(①④)
・低サイクル疲労温度・圧力の変化によって、大きな繰り返し応力がかかる部位に割れが発生する事象
・2相ステンレス鋼が高温での長期使用に伴い、靱性の低下を起こす事象
●原子炉(③)
 中性子の照射により、応力腐食割れの感受性が高くなり、日々割れが発生する事象
●ケーブルなど(⑤)
 電気・計装設備に使用されている絶縁物が環境要因等で劣化し、電気抵抗が低下する事象
●コンクリート構造物(⑥)
 コンクリートの強度が、熱、放射線照射等により低下する事象。また、放射線の遮へい能力が熱により低下する事象
●耐震・耐津波安全性評価(⑦)
 耐震設計において、必要な構造・強度に影響する劣化事象を考慮した評価津波を受ける浸水防護施設の経年劣化事象を考慮した評価

「ケーブル」は絶縁物の劣化が評価対象で「接続部」は見当たらない。

特別点検ではどうか?

では特別点検ではどうか。特別点検とは、現在の原子炉等規制法(第43条の3の32第4項)に基づく運転期間の延長申請の前に行って、その評価を申請書に添付することが求められているものだ。

具体的には、「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則第113条第2項第1号で「申請に至るまでの間の運転に伴い生じた原子炉その他の設備の劣化の状況の把握のための点検」という言い回しになっている。これが「特別点検」のことだ。自己評価だ。自分で通信簿を書いて親に渡すようなものだ。

点検すべき内容は、「実用発電用原子炉の運転期間延長認可申請に係る運用ガイド」に書かれている。以下の通り、点検の対象は原子炉容器(原子炉圧力容器)、原子炉格納容器、コンクリート構造物。3つだけだ。ケーブルもケーブル接続部も対象ではない。

令和5年4月26日高経年化した発電用原子炉の安全規制に関する検討チーム
特別点検の実施項目・実施結果等について  」

ああ。だから、関西電力が、高浜原発4号機は特別点検で対象機器4200点の劣化状況を評価しましたよといった後で、原子炉が緊急停止するようなことが起きたのだ。

【タイトル画像】

高経年化した発電用原子炉の安全規制に関する検討チーム
令和5年2月22日「発電用原子炉の規制制度の枠組み」  より

関係取材ノート

高浜原発4号機(37歳)の緊急停止:考えるべき3つのこと

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