(1分読み)ユニバーサルデザイン(UD)の教科書127 階段はバリアフリーか?ユニバーサルデザインか?
階段はバリアフリーか?ユニバーサルデザインか?
バリアフリーは、原則、社会的弱者に寄り添う考え方。
そして、ユニバーサルデザインは、人の属性・特性に関わらず、多様な人々の利用しやすさを前提にした考え方。
では、その境界線は何か?
何がバリアフリーで、
何がユニバーサルデザインか?
はじめに
社会は多様なニーズを持つ人々で構成されています。
高齢者、障害者、小さな子供を持つ家族、妊婦、一時的に障害を持つ人々など、さまざまな状況にある人々がいます。
このような背景から、私たちの生活空間は、すべての人にとって使いやすく、アクセス可能であることが求められています。
そこで重要な役割を果たすのが、「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」の概念です。
しかし、これら二つの概念はしばしば混同されがちです。
今回は、階段、エスカレーター、エレベーターという三つの具体的な例を通じて、これらの概念を掘り下げてみます。
❶階段:バリアフリーとユニバーサルデザイン
階段は、建築の基本的な要素であり、古くから使われてきました。しかし、階段は一部の人々にとって大きな障害となり得ます。例えば、車椅子を使用する人々や、歩行困難を抱える高齢者にとっては、階段の存在自体がアクセスを困難にします。
バリアフリーの観点から階段を考えると、階段の代わりに設けられたスロープや、階段の側に設けられた手すりなどが挙げられます。これらは特定の障害を持つ人々のアクセスを可能にするためのものです。
一方で、ユニバーサルデザインのアプローチは、階段を使うすべての人々のニーズを考慮に入れます。例えば、段差を低く設定する、滑りにくい素材を使用する、視覚的にわかりやすいデザインを採用するなど、多様な利用者の利便性を高める工夫が施されます。
❷エスカレーター:利便性と限界
エスカレーターは、移動の効率性を高めるために広く使われています。しかし、エスカレーターは特定の障害を持つ人々や、乳幼児を抱える親、大きな荷物を持つ人々にとっては使いにくい、または危険なものになり得ます。
バリアフリーの観点からは、エスカレーターの代替としてエレベーターやリフトの設置が考えられます。これにより、車椅子を利用する人々や、歩行に不安のある高齢者も含め、より多くの人々がアクセスできるようになります。
一方、ユニバーサルデザインの観点では、エスカレーター自体の改善も考えられます。例えば、よりゆっくり動くエスカレーター、手すりの高さや形状の最適化、緊急停止ボタンの設置位置の改善などが挙げられます。これにより、エスカレーターはより広範な利用者にとって安全で利用しやすいものになります。
❸エレベーター:アクセシビリティの象徴
エレベーターは、多様性設計の代表的な例と言えます。階段やエスカレーターにアクセスできない人々にとって、エレベーターは建物内の移動を可能にする重要な手段です。
バリアフリーの観点からエレベーターを考えると、車椅子での利用を可能にする十分なスペース、手すりの設置、階数を表示する音声案内などが重要です。
これらの設備は、特に視覚障害者や聴覚障害者、車椅子利用者など、特定の障害を持つ人々のために考慮されています。
一方、ユニバーサルデザインの観点では、エレベーターはただ障害を持つ人々のニーズを満たすだけでなく、全ての利用者にとって使いやすいように設計されます。たとえば、ボタンの大きさや位置、照明の強さ、扉の開閉速度、操作パネルの高さなど、細かいディテールにまで配慮されます。これにより、小さな子供から高齢者まで、あらゆる利用者がストレスなくエレベーターを使用できるようになります。
まとめ:包括的なデザインへの移行
階段、エスカレーター、エレベーターを通じて見てきたように、バリアフリーとユニバーサルデザインは似て非なる概念です。
バリアフリーは
特定の障害を持つ人々のニーズに焦点を当て、それらの障害を克服するための特別な配慮を行います。(=専用品)
一方、ユニバーサルデザインは
すべての人々が平等にアクセスし、利用できるようにすることを目指します。(=共用品)
このように、私たちの社会は、特定のグループだけでなく、すべての人々が快適に生活できる環境を目指して、進化し続けている必要があります。
建築やデザインの分野においても、階段、エスカレーター、エレベーターなどの日常的な要素に対して、バリアフリーとユニバーサルデザインの両方の視点を統合し(専用品✖️共用品)、より包括的なアプローチを取ることが求められています。
それにより、私たちの社会は、全ての人々が共有し、楽しむことができる、より豊かで快適なものへと進化していくことが求められているのです。
追伸:
私は約20年間、ユニバーサルデザインを推進してきました。今回あらためてバリアフリーとユニバーサルデザインを考えるきっかけとして、階段・エスカレーター・エレベーターといった身近なモチーフでコラムを書きました。
違い(Difference)に寄り添い、
普遍性(Universality)を考えること。
これからも、人類共通のテーマとして、この問いを探究していきたいと思います。
Think Universality.Think Difference.
m.m
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