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英会話講師にだけしか通じない英語を話していませんか? <オーストラリア修行編 7>

裏切りのアウグスト 

語学学校の初日に出会った、そのアウグストというブラジルから来た青年は、ネイティブの教師と英語でスラスラと会話をしている

なんでそんなことが可能なのか。自分と同じ、「これから語学学校に入って学ぼう」というレベルの人間が

まぁでもアウグストだけが特別なのかな、と思っていたら、もう一人のブラジル人もその会話に加わり、一緒になって話し出したんですよ。

こちらもまぁ流暢に。

しかもその話すスピードが、二人ともとてつもなく速いんです。

なんでこいつらは語学学校なんかに来てるんだ。

さっきまでこっちが助けてあげようぐらいに思っていたのに

もう助けてやんないもんね

裏切られたような気持ちになりつつも、彼らが何を話しているのか、その会話の内容を聞き取ろうと集中しました。

しかし何言ってんだかさっぱりわかりません。

リスニングが通用しない...

英語が聞き取れない

オーストラリアに来てからここまで、順調すぎるぐらい順調に進んでいました。

道を尋ねた何人ものオーストラリア人、バックパッカーズで会ったイギリス人とドイツ人、そしてホストファミリーと、会う人会う人に

Your English is really good. とお世辞を言われ

まだ勉強を再開して4ヶ月だと言うと誰もが驚きました。

まぁすでにお伝えしているように、実際には相手の話を聞いているふりをしながら、知っている英文を頭の中で何回も練習してから口にする、という禁じ手を使うことで

そう言われるように仕向けていただけなんですが。

でもスピーキングは「なんちゃって」でも、リスニングのほうは聞くことに集中しさえすれば、かなりしっかりとその意味をとることができていました。

ところが彼らの話がまったく理解できない。

考えてみると、他人同士が話す英語を生でじっくり聞くのは、オーストラリアに来てこれが初めてでした。

自分に対して話してくれるのと、自分とは無関係に進む会話を聞くのでは、難易度がまったく違います。

北米英語だけで学んできた弊害

それにプラスして、それまでずっと北米英語だけを教材にして勉強してきたために、「色んなタイプ」の英語に対応できないという問題もありました。

ちなみにオーストラリアの英語も、北米英語とは大きく異る特徴があって

有名なのは エイ を アイ で発音するというもの、例えば today(トゥダイ)のように。

ですから、Did you come here today? 「今日ここに来たの?」をオーストラリア人が言うと

Did you come here to die?「死ぬためにここに来たの?」と聞こえる、という(語りつくされた)ジョークがあります。

他にも、アイ を オイ と発音する → time をトイムのように発音する

などなど。

ただ、北米英語とオーストラリア英語の違いについては、旅に出る前から相当覚悟していましたが、それから考えると、そこまで大きいとは感じませんでした。

普段聞き慣れているのに比べると、ちょっとわかりにくいかなというぐらいで。そういう基本的なルールさえ知ってしまえば、なんてことないです。

正直に言うと、聞き取りの力が上がった今のほうが、その違いが大きく感じられて、苦手な意識があります。

しかしその当時のリスニング力のレベルでは、わざわざアメリカ英語と並べて聞かない限り、わからないぐらい。

どっちを聞いても「おぉ英語だ」てなもんです。

だから「オーストラリアアクセント」を必要以上に気にして、英語を学ぶ場所としてはふさわしくない、と考えている方もいるかもしれませんけど、それほど神経質にならなくともいいと思います。

ブラジル人の英語

それよりも問題なのは、ブラジル人の話す英語の方です。

彼らの口から速射砲のように放たれるその言葉は、それまで自分が持っていた「英語」の概念を根底から覆すものでした。

面接が始まる前にブラジル人同士が話すポルトガル語が耳に入ってきて、それがとにかく早口でまくしたてるようでびっくりしていたんですが

彼らが話す英語は、さっきのポルトガル語を話しているときとまったく同じように聞こえます。

これは英語を話すときにも、ポルトガル語のリズムや発音をそのまま持ち込んでいるということでしょう。これがその言語に慣れていない人間にとっては、とにかく聞き取りにくい。

聞き取れないもう一つの原因は、とにかく話すスピードが速いということ。

あの早口だったポルトガル語を話しているときと、ほぼ変わらないぐらいに聞こえました。

でも母語並みのスピードで、文を作って話せること自体が驚異的ですよね。こっちは単語をいくつかしぼり出すのがやっとなのに。

この違いはいったいなんなのか。

英会話学校の講師の「寛容さ」

しかし僕にとっては意味不明の英語も、どうやらネイティブの先生にはちゃんと伝わっているようです。

せめてネイティブの先生も首を傾げるようなら、「でたらめなことをただ早口で言っているだけのブラジル人」で済んだところですが、

きちんとコミュニケーションがとれている。

まぁ今から考えると、その先生にとって英語は母語である上に

特に英会話学校で働く人たちは、色んな国から来た生徒が話す、色んなタイプの英語を聞き慣れているので、少々わかりにくいものも聞き取れるんですね。

そこの学校にはブラジル、そしてヨーロッパ各国からの生徒が多く在籍していました。

ですからその「ポルトガル語流アクセント」も、そこの先生たちにとっては、お手の物だったわけです。

講師にしか通じない英語

でも、この「語学学校の先生に通じる英語」というのは、注意が必要です。だって以上の理由で、彼らはいろんなタイプの英語に寛容なんです。

寛容とは、わかろうとしてくれるし、わかってくれる、という意味で。

特に日本人をよく相手にしている講師は、日本人のアクセントに寛容。

普段はオンライン英会話で学んでいる、という人が海外に行った時に、そこの講師相手には十分通じているはずの英語が、現地の人にまったく通じないでショックを受けた、

と言うのを聞いたことがありますが、

これなどもまさにその例で、普段日本人を多く相手にしているオンライン英会話の講師は当然、日本語独特のリズムや発音に寛容になっていますから、カタカナ発音でも通じてしまう。

それに甘えたままでは、いつまで経っても「日本語に慣れていない外国人」には伝わりづらいままです。

それはともかく

そういう事情がわからないために、自分にとってまったく意味不明なブラジル人の英語が、ネイティブにはきちんと通じていることがもう衝撃的で

「なんとかわかる」オーストラリア人教師の英語に集中すればいいものを

「まったくわからない」ブラジル人の方にどうしても注目してしまい、

そのわからなさにどんどん追い込まれていく。

孤立する日本人

こうしてただでさえ聞き取れないのに、「万が一自分に振られたらどうしよう」などと余計なことまで考えてしまい、

会話に加わってさえいないのに、すでにアップアップの状態。

「英語」をコミュニケーションのツールにして、にこやかに会話するオーストラリア人とブラジル人

僕を含めた日本人は、その輪に加わることができず、隅っこで顔をこわばらせ、じっと押し黙るばかり

「英語ができないために国際交流できずに孤立する日本人」という図式が確かにそこにはありました。

続きます。

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