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スペイン語を学んでわかった、日本人が英語に苦労する理由とは?

英語の知識がスペイン語を助ける

以前スペイン語を学んだ際、

すでに英語が使えることで、その勉強は大いに助けられました。

前にもお伝えしましたが、スペイン語と英語は「距離が近い」言語であるため(スペイン語は、英語のネイティブにとってもっとも習得に時間がかからない言語の一つ)、

例えば単語の並べ方が同じSVOであったり、さらには単語が両方の言語で重なっている(似ていて連想できる)ものも多くあるからです。

I study English.(英語)→ Yo estudio inglés.(スペイン語)

こういう単語の並べ方は知識として知っているだけでなく、自分の中ですでに「自動化」しているので、あとはその骨組みにスペイン語の単語をあてはめればいい、だけですからね。

英語との小さな、でも大きな違い

ただし、この「単語の並べ方」についてですが、スペイン語と英語でかなり重なっているものの、全く一緒ということではありません。

その違いの一つが、

英語では目的語(「〜を」にあたる言葉)は常に動詞の後に置かれますよね。例えば

Maria bought a book.

Maria bought it.

のように。

ところがスペイン語では目的語が名詞の場合は英語と同じですが、代名詞の場合は動詞の前に置かれるのです。

María compró un libro.(マリアは本を買った)

María lo compró.(マリアはそれを買った)

のように。

自分にはこれがとてつもなく難しく感じました。こんなシンプルなことが。

もちろんそのルールを頭に入れるだけなら、ものの1分で済みますが、それを自分でできるようにするためには、前にもお話した「自動化」を達成しなくちゃいけない

そうなると時間がかかるんです。

理解は数分、自動化(それをスラスラ使いこなせるようになる)には数時間、ですからね(一つのルールだけで)。

で、どうしてそれに苦労したのかというと、それは前述したように、長年英語の勉強を続けてきて、英語の語順がすっかり体に染み付いていたからです。

英語の知識がスペイン語の邪魔に

英語の文を作る上でもっとも大切なのは、最初に主語と述語(動詞)を何で行くか決めること。

目的語はその後です。英語では目的語となる代名詞は動詞の後に置きますからね。

ですから

動詞 → その目的語

という語順で考えることがすでに自分の中で「自動化」していた

だから意識せずとも勝手にこの順番で単語を思いついてしまうし、そう並べてしまう

このためにスペイン語で話そう、とする時もそのクセが抜けずに、どうしても動詞のことを先に考えてしまうし、口にも出してしまう。それはすなわち動詞を先に用意してしまう、ということ。

で、「いや違った、スペイン語では代名詞が先にくるんだった」と思い出し、そこから代名詞について考え始める、

ただし英語の代名詞の場合は単数と複数の区別だけですが、

スペイン語の場合は名詞に男性名詞と女性名詞があるために、代名詞をどれにするか確定するのが、英語よりも複雑になるんですね

→単・複の2択ではなく、それに女性・男性かが加わるので4択になる

そうして処理が増える分、ただでさえ考えるのに時間がかかるのに、

この英語の語順が身についているせいで、それを考えることを後回しにしてしまい、いや、先に出さなきゃいけないんだ、とそこから考えるために、焦りもあってもっと時間がかかってしまう

ですからこの形をスッと言えるようになるには、とても苦労しました。

動詞と代名詞の順番が変わる「だけ」でものすごく苦労するわけです。

日本人が英語に苦労する理由

ここでメチャクチャ手こずった経験を持ったときに、そりゃ日本人が英語を話すのに苦労するわけだ、とあらためて思いました。

だって日本語の語順って、英語とまったく違いますからね。

その最大の違いは日本語では述語が文の最後に来ること。

ですから日本語で話している場合、述語は最後に用意すればいいわけです。

ところが英語では主語のすぐ後、つまり1番最初の段階で述語(動詞)のことを考えなくてはいけない。

この違いは本当に大きい。

単語を並べる順とはすなわち単語を用意する順番、それは思考の順番だと言い換えてもいい。

私たち日本人にとって、述語っていうの最後に用意すればいい、これはもう何十年も日本語を使ってきて、がっちり身に付いているわけですから。

でも英語では、その述語を最初の段階で用意しなくてはならない、

それは「代名詞を先に用意する」レベルとは比較にならない、「思考の大改革」が必要になる

多くの方はここに苦労するんだと思うんですね。

話の組み立て方も違う

そしてもう一つ言うと、これは文レベルでとどまる話ではなく、文章レベル、つまり話の持っていき方にも同じことがあてはまります。

80〜90年代にたくさんの日本企業がアメリカの企業と取引するようになった際、「日本人の話は要領を得ない、何を言いたいのかがよくわからない」という声がアメリカ人からよく上がったといいます。

これは「話の組み立て方」の順番が、日本語と英語とではまるで違うからです。

日本語の場合は、「起承転結」という言葉があるように、結論は最後。

周りの事情を全てしっかり説明し、共感してもらいやすい土壌を十分に作っておいてから、「だからこうなんだ」というふうに結論を持ってきます。

外堀を先に埋めてから最後に本丸を攻めるんですね。その方が相手にも(この場合の「相手」とは、とうぜん同じ日本人です)納得してもらいやすいから。

でもこれに対して英語の話の組み立て方は、一般的なエッセイの型に PREPというのがあるように

P:Point(言いたいこと・主張)

R:Reason(主張の理由)

E:Example(その具体例)

P:Point(もう一度主張)

「結論は最初」が基本です。

で、どうしてなのかという理由やそうなった背景、具体例などを、その後にくっつけていく。

このように、英語での話の組み立て方の順番は、結論をどこで出すかという点において、日本語のそれとは「全く逆」と言っても過言ではないわけです。

だからそうして「結論を最初に言う」話し方に慣れている人たちにとっては、日本流の話の組み立てが、何を言いたいのかよくわからん、となるわけです。

だって最後まで聞かないと結論が出てこないわけですからね。

要領を得ない、ダラダラと話して最後まで聞かないと Yes なんだか No なんだかわからない、しかも No の場合は、相手の心情を慮ってはっきり言わずに、遠回しな言い方をしたりする

「検討します」が本当は No だったり

それを英語でやるもんだから、まったく伝わらない、どころか相手を怒らせる結果になったことも多くあったといいます。

単に日本語を英語に直す、だけじゃ駄目で、話の順番自体を変えないと、スムーズに伝わらなくなるわけですね。

体に染み付いたものを変えるのは難しい

こういうことって、知識として頭でわかっても、実際に変えるというのはとても難しい。

なぜならこういう思考の仕方をもう何十年も続けてきて、このスタイルががっちり身についているからです。

語順や文章の組み立て方というのは思考の順番であり、その国の文化に深く根ざしたものであるということ。だからこれを変えるというのは並大抵ではありません。

これも、日本人が英語に苦労する大きな原因の一つじゃないかと。

例えば「主語に応じて動詞に s をつける」なんていうルールは日本語に存在しない、だからこれを「自動化」させるのはとても大変ですよね(もう自動化していますか?)。

でも「述語が先」というのは、日本語と逆。これを自動化させることは、「動詞に s を付ける」のように日本語に存在しないルールを体で覚える、以上に大変なのです。

わかりますよね。日本語に存在しないルールを自動化させるのは大変ですが、日本語に存在するルールと異なるものを自動化させるのはもっともっともっと大変だということ。

でも英語では述語が先、結論が先、ですから、英語でコミュニケーションを取れるようになりたければ、どうしてもこのスタイルに慣れなければいけない。

新しいスタイルを身につけるには

ではどうすればそれが可能になるか、というと、それは反復以外にありません。

毎日英文を作ることでSVOのスタイルに慣れる、そして文章を作ることで「結論が先」というスタイルに慣れること、です。

これは根性論でもなんでもなく、そうしないとこういうことが勝手に身につくことはないのです。

毎日英語で「文」を作ること、そして「文章」を作ること。

例えば以前ご紹介した elllo。この One Minute English というコーナーでは、世界中の方々が英語でのいろんな質問に対して一分程度で答えています。

いろいろ見てみてください。ほとんどのケースで質問に対する答えを最初に言っておいて、後からその説明をつける、という形をとっているはずです。

これを参考に、自分ならその質問になんと答えるかと考えて、英語で作ってみる。もちろん「結論が先」というスタイルでですよ。

いきなり口頭では難しいなら、ネットで調べつつまずは書く。そしてそれをスムーズに言えるようになるまで練習する。

長いものが難しいなら短くてもいいので、まずは結論を、というスタイルで。

これを毎日やれば、相当力はつきます。

やらなければ力はつきません。

これまでにも何度もお伝えしてきたように、「アウトプットは筋トレ」ですからね。


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