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ラーメン

子供の頃、冬の寒い夜に、たまにラーメンの屋台が家の近所に来ていた。
チャルメラを吹いて、40前後のおじさんが屋台を引っ張り、家にいる父がそれに気づき、

「お、ラーメンだ、食うか」

とGOサインを出すと、母と僕とでいつもラーメンを買いに行っていた。母が注文をすると、おじさんは屋台を止めてラーメンを作り出す。

今でこそ屋台は店舗型で、移動式で営業してる屋台はあまり見なくなったが、僕が子供の頃はラーメンやおでん、きび団子や玄米パンなどいろいろな屋台があちこちを移動しながら営業していた。

おじさんがラーメンを作ってる間、寒空の中それをじっと待っていた。父は暖かい家でラーメンを待っていたが、いつも買いに行かされる母に着いて行って、僕も寒い中ラーメンが出来上がるのを待っていた。あの、母とラーメンが出来上がるのを待ってる時間がとても好きだったなと思う。

ラーメンを二つ買って家に戻り、父が一つ、母と僕とで一つを分けて食べる。
美味しいものはたくさんあるけど、あの時のラーメンより美味しいラーメンを食べたことがない、わけではない、が、味覚には思い出やノスタルジーが強く影響するようで、やはりあのラーメンをずっと追い求めてるのかもしれない。
何の変哲もない醤油ラーメンだったけど、あれが僕の中でのラーメンなんだなと思う。

「死ぬまでに出来る食事の回数なんて限られてるのだから毎回美味しい物を食べたい」

という誰かが言った言葉を、僕は胸に刻んでいる。
だからサラダチキンなんかでご飯を済まさないし、その時食べたい物をちゃんと食べるようにしている。

でも、20代とかにガツガツ食べていた物を最近食べるとなんだかつらくて。これが老いってやつなんだなと思ったりする。
いやいや、でもまだ自分は若いぞなんて思ったりしながら、Amazonでなめこの味噌汁のフリーズドライなんて買っちゃって、ちゃんと老いて来ている。

結局何が言いたいかと言うと、食欲の秋ですねってことです。
今年の秋は炊き込みご飯を極めたい。

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