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笑顔がもつチカラ

わたしの母は山陰の山育ちで、兄弟が多く長女だったため小さい頃から祖父の力仕事の手伝いをさせられていたらしい。
そのせいもあって、体は丈夫で足腰が強く、私が子供頃には軽々と持ち上げられていた。

とにかく根性のある人だ。
阪神大震災の際は、かなりの揺れがあり母がいる実家にも影響があったが、母は微動だにせず肚が座っていた。

父は九州出身で刑事をしていた経歴があり、仕事の腕は良かったらしく実家には表彰状がたくさん置いてあった。
厳しく頑固なおやじだった。子供の頃は怖くて嫌いだった。
母は気が強く父とよくケンカをしていたが、わたしには優しい母親だった。

今現在、母は入院中だ。
入院して、もう2年余りになる。

自分で自由に動けない状態なのでじっと天井ばかりを見ている。
耳が遠く話しかけても反応は薄い。

それでも出来る限り話しかけるようにしている。
今はこのご時勢なので、面会もさせてもらえない状況が続いている。

入院して間がない頃は動けないことがかわいそうで仕方がなかった。
生気が抜けたような母親の顔を見るのが辛かった時期もあった。
「帰りたい、帰りたい」と言う母の顔を見るとついつい暗い顔つきになってしまっていた。

しかし、ある日こちらが本気で笑いかけると、それにつられる様に母が声を出して笑った。母と幸せな空気を共有した気がした。
そうだ、こちらが可愛そうだと思っていたら、それが母にも伝わり暗い顔にさせてしまう。

あらためてそれに気がついた。

それからは、母の生きていることに感謝しながら病院に向かっている。

飛び込み営業で初めて訪問する際に、突然の訪問に相手の顔がこわばり警戒しているのが分かり、こちらから本気の笑顔を送ると、ホッとしたように相手も笑顔になる。
その笑顔を見て、わたしはさらに笑顔になっていた。

笑顔というものは、本当に人を幸せな気持ちにするものであることを思い出した。

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