松永大司監督「トイレのピエタ」を振り返る2/主題歌との幸せな関係
野田洋次郎氏とのコラボ
「トイレのピエタ」は、RADWIMPS野田洋次郎氏にとって映画初主演作。余命3ヶ月宣告をきっかけに「生きる」ことを強く意識するようになる美大卒の宏を演じています。ミュージシャン野田氏にとって、撮影期間はいろいろと大変な日々だったのではないかと想像できます。しかし野田氏はその間も少しずつ主題歌作りを進め、撮影終了後すぐに完成させた曲がエンディングテーマとなる「ピクニック」です。
撮影終了から3日後の打上げの席、野田氏がギター弾き語りで歌った「ピクニック」。会場にいた全員が感動していました。そして、そこでこの曲を聴いていたことが、後の私の劇伴音楽作りに幸せな影響を与えていくことになります。
映画のラストは、杉咲花さん演じる真衣が夜の街を歩き続ける場面から劇伴音楽が入り、朝を迎え、宏が発する象徴的なセリフで映画が終わり、主題歌「ピクニック」が流れます。最後の劇伴音楽は、映画に寄り添い、真衣の気持ちを映し、宏のセリフが生き、次に来る主題歌が印象的に聴こえるように意識しました。ぜひ映画を通して観ていただきたいラストです。
チェロ:大前知誇
ピアノ:佐々木京子
映画の内容と関係ない主題歌が商業目的で入る映画とは違い「トイレのピエタ」は、宏役の野田洋次郎氏が宏の気持ちのまま作って歌っているので、エンドクレジットが映画のワンシーンのような存在になっています。その主題歌を早い段階で聴くことができた私は、そこにきれいに繋がることを意識してラストの劇伴音楽を作ることができたのです。主題歌を作った野田洋次郎氏とのコラボといってもいい幸せな劇伴作りでした。
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