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 子供の頃の夢は誰も幸せにしない

 人間のことを何も知らない無知な使い魔がお散歩がてら、極悪ひねくれ非常識人のうp主に人間界の常識を教え込まれているようです……。

 お散歩⑧「子供の頃の夢は誰も幸せにしない」

「これはひどい! 今回ばかりは見損なったよ! これはあんまりだよ! こんなのって……! こんなのって……!!」
「おや、なんか夢があったのだろうか。こいつはまさか人間になりたかったのかな。あんなもの、捨ててしまった人の方が多い虚像なのだがねえ。まあ聞き給えよ人外」
「今回ばかりは何を言われても信じないからな! それでももし騙されそうになったら、後生だから僕の尻尾を切り落としてくれ!」
「処理に困るから嫌だよ。いいかい、人という生き物は誰しもが子供の頃からアレやりたいコレやりたい、ああなりたいこうなりたなどと自分の望む人生、自分が生きていて楽しいと思える人生を思い描いて生きているのだ。中には今まさに熱中している何事かをそのまま将来の生業として生きていきたいと願っている子供もいるだろうね。ゲームが好きだからゲームをつくる人になりたい、昆虫が好きだから昆虫博士になりたい、YouTubeが好きだからYouTuberになりたい……」
「好きなものになろうとするのの何がいけないの? うpは否定的なことしか言えないの? だとしたらすごく残念な人だよ」
「否定しているつもりはないよ。自分が好きだと思うことをして生きる、自分の好きな人生を歩む、これは現代人に与えられた立派な権利だよ。誰が否定できるものでもない」
「だったらこの話はもう終わりだね! あーよかった! 今日も素敵な夢を見て寝るとするかな!」
「ただし問題は……」
「え!?」
「自分の中の「好き」は変化するということ、そしてその「好き」は本当に「好き」なのかということ……」
「あー、何を言うのかと思えば。そんなの好きに決まってるじゃん! バカじゃないの? はい、じゃあもうおしまい!」
「残念なことにね、人外の幼体よ、子供は自分のことをよく分かっていない生き物でもあるのだ。子供および幼体は「そんなことはない」と言うかもしれないが、これは大人になれば誰もが悟る境地でもあるのだ。自分の本心が何を求めていたのかが本当に分かっていなかったと誰もが嘆くのだ。自分に必要なものをことごとく見落としてきた過去を皆が涙するのだ」
「そ、そんなの、僕子供だからよく……」
「自分が本当に何が好きなのかなど、「自分」と付き合って数年の子供にわかるわけがないのだ。自分を知るのはもっと後。自分が本当は何を望んでいるのか、自分は何をどうすれば幸福なのか、それを知るのはずっと後のことなのだ。大人になったって見つけられない人もいるくらいなのだからね。それなのに子供は「今楽しい」というただそれだけで本当は望んでいない夢などを思い描きそれを信じ込もうとする」
「で、でも僕は人間に……」
「何より最悪なのは、子供の夢というものは自分の成長と変化を計算できないということ。他にもっと好きなものができるかもしれない。もう好きではなくなっているかもしれない」
「そ、そんなのすぐ気付くに決まってるじゃない! 気付いたら方向転換すればいいだけで……」
「残念なことに人間は思い込みの生き物だからね。特に子供はその傾向が強くて困る。子供の頃の夢など麻酔をかけられた上に幻覚を見ているようなものだ。実際に望んでいた状況に直面するまでは本当にそれが好きだと思いこんでいる場合が非常に多いのだ。そうなった後で「コレオモテタノトチガウ」という絶望を味わった人は数知れないだろう」
「ソレイマボクモソウダヨ……」
「今回のお話を簡潔にまとめるとだね、その夢が自分に適しているかどうかの判断は、子供の未熟な経験則によるものでしかない、ということになるのだ。人間どうしたってこの呪縛からは逃れられないよ」
「うにゃあ! いまのが分かりやすすぎて体が言うことを聞かない! 現実を認めたくない体がっ!!」
「夢でなくとも、これが自分に合ってる、こういう仕事につきたいレベルの願望でさえ未熟な自己分析や未成熟の人生観が選び出した真偽不明の願望でしかないのだ。子供の自分などそれほど信用のおける存在だったのかな? 絶対にただの阿呆だったろうに。まあ、18歳の自分を疑えるのは大人になった自分だけなのだから、18歳時点で自分を信じ込んでしまうのは仕方のないことなのだがね」
「でもでも、大人になっちゃったら夢を叶える時間なんかなくなっちゃうよ。後戻りもできなくなっちゃう。子供でも夢を見れない、大人でも夢を叶えられないって、どうすればいいのさ」
「だから、人間は思い込みの生き物なのだから、思い込みの世界で生きるのがいいのさ。好きでもないものを好きだと信じ込み、そう言い張り、己の中に刷り込んでしまえばいいのだ。実際は無駄な時間を費やしているだけ、というつまらない現実なんか忘れてね…」
「ああ! なるほど! それでいいのか! なあんだ! 永遠に夢の世界の住人になれば幸福なんだね! よかったよかった! そうだ! みんなにも教えなきゃ!」
「おっと、待ちなさい。尻尾尻尾……」

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