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ペイメントサービスの濫立について思うこと

ペイメントサービスにゆうちょも参入し、銀行系だけでも複数のサービスが濫立することに対して冷めた声も聞かれます。

キャッシュレス狂想曲?

現状のボーナスで殴り合う競争は、キャッシュで支払いをすることがメイクセンスしない状況を作り出しつつあります。PayPayは何を買っても1000円を上限に20%を還元してくれますし、merpayは明日まで50%のポイント付与を打ち出していますので商品が半額で買えてしまうことになります。こうなると、キャッシュレスでの支払いをしないことによる合理性が見いだせないといっていいのではないかと思います。

もちろん、いかに購買データに価値があると言っても、こうしたものが常態化するということはありえず、普及期において見られる顧客獲得を目指した一時的な競争形態であるわけですが、人々をキャッシュレスに移行させてデジタル社会突入のための基盤をつくるという国家政策を民間が自己資金を用いて積極的に後押ししてくれているということで、それはそれでたいへん歓迎すべきことだと思います。

ボーナス競争の先にあるもの

ボーナスは、今後サービスが普及して競合が減り、ある程度のロックインの形が出来上がれば徐々に小さくなってくると思いますが、そのフェーズの後に提供されるはずの、単にボーナスが提供されるという話ではない利便性・ベネフィットが、キャッシュレスが社会にもたらす真の価値なのだということを、少なくとも界隈の人たちは共通の理解としたいところです。

キャッシュレスがもたらす本質的な利便性・ベネフィットの具体的内容については、各事業者さんがそれぞれお持ちのビッグ・ピクチャーがあり、それぞれが少しずつ異なるうえにあまり公にされていないので、詳細について述べることは避けますが、少なくとも、今のフェーズのあとにキャッシュレスの本質的な利便性・ベネフィットが追求されるフェーズが来るのだという将来の姿がしっかりと見据えられていれば、支払いのインターフェースがQRなのかどうか(QRはもう時代遅れだという言説を含めて)、サービスが濫立し過ぎていて余計不便なのではないか、などといった今の現象面に着目した話題は、(どうでもいいこととまでは言わないものの)あまり本質的ではないという視座を持てるのではないでしょうか。

今後やらなければいけないこと

評論家的なポジショニングではなく、フィンテックのための制度インフラの確立に主体的に貢献するという僕のミッションから、僕がペイメントの領域で腰を据えて取り掛からなければならないのは、次のフェーズにたどりつくために必ず論点となる法制度の課題を先回りして研究し、事業者の皆さんが見据えている世界にタイムラグなく到達できるよう、タイムリーにアジェンダを設定したうえでソリューションを提示する、という活動だと思っています。決済法制まわりのアジェンダは概ね政府関係者を含む皆さんの中で共有され、方向性も出つつありますので、僕はその先に進みたいと思います。

金融法制を飛び出し、論点が広範にわたる大きなテーマなので、引き続き界隈の皆さんのお力を借りながら、個別案件への対処(ミクロ)の観点と世界動向を見据えた競争政策(マクロ)の観点の両方から、取り組んでいきたいです。


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