【Uberだけじゃない!】インドの最新モビリティ・サービス
今回は、近年インドで普及するモビリティ・サービスについて、その最新トレンド、そして私が住んでいる都市・バンガロールで展開するサービス7つを紹介します。
こんな人に読んでほしい:
・モビリティ・サービス(MaaS; Mobility-as-a-Service)に関心がある
・インドのスタートアップやテック企業に関心がある
・新興国のモビリティ・テックに関心がある
・インド在住で、現地のモビリティ・サービスを使ってみたい
大きく変化した!インドでの移動手段
「インド国内で移動」というと、何を思い浮かべるでしょうか?
オートリキシャ(トゥクトゥク)?タクシー?
または乗客がぎっしり詰まったバスや鉄道をイメージするかもしれません。
これらの移動手段は、現在でも広く利用されていますが、昨今はインド国内、特に都市部内の移動手段において、多くの新しいモビリティ・サービスが展開され、ここ5~6年で劇的に移動手段が多様化しました。
例えば、インド国内の都市部で移動する場合、UberやOla(インド版 Uber)のアプリでタクシーを見つけ移動するのが一般的です。4輪車だけでなく、2輪車や3輪車(オートリキシャ)も、Uber で呼べます。
また、ほんの少しだけ(1~2km のみ)移動する場合、Uber で車を呼ばなくても、電動自転車や電動バイク(スクーター)をアプリでレンタルして、自分自身で運転、移動することも可能。自転車ならば免許も不要です。
私は7年前に、南インドのチェンナイという都市に、インターンシップのため滞在していたことがあります。Uberが一般的でなかった当時は、毎回オートリキシャのドライバーに、行先を伝え(伝わらないことの方が多い..)、値段交渉するのに毎回苦労していました。あの頃に比べると、ここ数年で、モビリティ・サービスは大きく変化したと肌で感じています。
Door-To-Door の移動を、スマホのアプリひとつで完結してしまうのは、東京で地下鉄を乗り継いで移動するよりも、はるかに便利に思うことも。
(インドの大都市の多くでは、都市の拡大、渋滞に伴い公共交通機関(メトロ)の建設を進めています。しかし、やはり人口増加に公共交通インフラの整備が追い付かず、渋滞などの問題はあります。)
なお、今回の記事の中では、インドの大都市部の中で展開している、モビリティ・サービスについて説明します。都市間の長距離移動などの移動手段については、また別の記事で書きたいと思います。
インドのモビリティ・サービスのトレンド3つ
インドの都市部で、ますます多様で便利になるモビリティ・サービス。
最近のトレンドとして、2つ挙げたいと思います。
キーワードは「多様化」「セルフ運転」「EV」です。
以下、少し説明します。
①多様化
近年インドで展開されているモビリティ・サービスには、利用者のニーズに特化して多様化が進んでいます。
3~4年前までは、インドで利用できるモビリティ・サービスといえば、UberかOla(インド版Uber)のみで、4輪車のみでした。しかし、今では利用シーンに合わせて、多様なサービスがあります。例えば、
・数キロだけ移動したい人→2輪車やオートリキシャのタクシー
・市内メトロ利用者→特定の地域とメトロの駅の間を結ぶオートリキシャ
・2~3キロだけ自分で運転したい人→レンタル2輪車・4輪車
など、特定の利用者とニーズに特化した、様々なサービスがあります。
②シェアリング
日本のレンタカーやカーシェアリングのように、4輪車や2輪車を借りて「好きなときに、好きな分だけ運転できる」サービスも増えています。
特にコロナ以降、シェアリング・サービスが増えているように思います。
コロナ前は、公共交通機関以外の移動というと、Uber、Olaのようなタクシー(運転してもらう)が主流でした。しかしコロナ以降、UberやOlaの利用し社内空間を他人と共有して感染することへの不安から、2輪車や4輪車を自分でレンタル、運転するニーズが高まりました。この動きに合わせて、車やバイク、自動車のシェアリング・サービスが増えています。
気軽にいつでも乗り降りできる、レンタルサイクルのサービスもあれば、
レンタカーのように、あらかじめ予約して一定期間借りれるサービスもあります。いずれも以下の例で紹介します。
③EV(電気自動車)
バイクレンタル、レンタカーでは、電気モーターで走る2輪、4輪車のみをレンタルしているサービスが増えています。
近年インドでは、政府がEV普及を急速に進めており(※1)、2輪、3輪、4輪車すべてにおいて、EVへの転換を図っています。
モビリティ・サービスにおいても、車両のEV化が進んでおり、「エコフレンドリー・オプション」として、レンタカー、レンタルサイクルのプロモーションを行う企業も多数あります。
ちなみに、日本発のスタートアップ、テラ・モーターズは、インドで EV オートリキシャを生産、販売しています。同社が拠点をかまえる、インド東部のコルカタを訪れた際は、テラ・モーターズの EV オートリキシャをよく見かけました。
(※1)2019年、インド中央政府は、2023年までに3輪車を、また2025年までにエンジン容量150cc未満のすべての2輪車のEV 化を目標に掲げ、EVへの税制優遇、ガソリン車への規制強化などを実行しています。
バンガロールはスタートアップの実験場
以下では私が住んでいる、南インドの都市、バンガロールで展開している
モビリティ・サービスを紹介します。以下に紹介するサービスの中で、
デリーやムンバイには展開されていないサービスも多数あります。
バンガロールはインド第3位の規模(人口規模)の都市ですが、インド国内では、テック企業やインド国内外のスタートアップが集積するテック・ハブとなっています。そして、インド発、バンガロール発のスタートアップの多くは、「バンガロールで、サービスを試験的に導入し、ビジネスモデル、オペレーションが確立したら、他の都市に展開する」傾向があります。
(都市の規模が試験的な導入に適していること、バンガロールに住む人々の行動特性(新しいサービスや製品を試そうとするマインドを持った人が多い)など、様々な背景があります。)
モビリティ・サービスを展開するスタートアップにとっても、バンガロールを実験場として展開するところは多いです。このため、インド国内の都市の中でも、バンガロールには様々なモビリティ・サービスが次々に展開されています。
栄枯盛衰も激しいので、新しいサービスやアプリが登場したら、数か月後にはサービス終了(事業を撤退)していた、ということも多くあります。
バンガロールにあるモビリティ・サービス7選
では現在(2022年2月時点)で、バンガロールに展開しているモビリティ・サービスを6つ紹介します。
サービスの種類を大別して、2種類あります。
タクシー系(配車して運転してもらう)
→①Uber/Ola ②Rapido ③Metro Ride
レンタル系(一定期間乗り物を借りて、自分で運転する)
→④Yulu ⑤Bounce ⑥Drivezy
①Uber/Ola:インドで最も普及しているモビリティ・サービス
インド全域で最もポピュラーなモビリティ・サービスです。
Uber は全世界的に有名ですし、Olaはインド発 Uber です。
サービスを利用する上では、Uber / Ola 2社に大きな違いはありません。
【どんなサービス?】
・目的地を指定。周辺のドライバーとマッチング。
・支払いは現金、カードなど。都市部ではQRコード決済が主流に。
インド特有(?)なのが、Uber、Olaともに、オートリキシャ(3輪車)も呼べるところです。ちょっとした距離を移動するのに便利なオートリキシャ。UberやOlaが登場する前は、料金を交渉をしたり、行先が伝わってなかったりと、オートリキシャで移動するのは、現地も外国人にとっても一苦労でした。現在は、インドの都市部では、UberやOlaでオートリキシャを呼ぶのが一般的になり、移動するにもかなり便利になりました。
②Rapido:40円から乗れちゃうバイクタクシー
ほんの数km移動したいときに便利なバイク(2輪車)タクシー。
【どんなサービス?】
・Rapido アプリからバイク(ドライバー)を予約。
・ドライバーが到着したら、ヘルメットをもらい目的地まで乗せてもらう。
(バンガロールでは、バイク利用時はヘルメット装着が必須)
・料金は、25ルピー(40円)/1km ほど
2015年創業、インド最大のバイクタクシー・サービス。
インド国内100都市でサービスを展開しています。
Rapidoのような「短距離ライドサービス」が解決するのは「ラストマイル問題」。インドの都市部では、公共交通機関(メトロやバス)で、主要地域まで行けるものの、最終目的地までの道のり(ラストマイル)までの交通手段が必要になります。
【使ってみた感想】
ほんの数キロ移動したいときや、Uber/Olaでタクシーが捕まらないときに便利。バイクだと車の間をスイスイ通り抜けられるので、渋滞中の道路を行くときには便利かも!ただし、バイクなので、4輪車やオートリキシャに比べると、安全には十分注意が必要です。
③Metro Ride :メトロの駅と周辺地域を結ぶEVオートリキシャ
メトロの駅と周辺地域を結ぶ、メトロ駅専用シャトルサービス。
2021年にバンガロールの中心部、インディラナガーで試験的にサービスを開始しました。電動モーターで走る、青いEVオートリキシャ(3輪車)が、特定の停留所⇔メトロ駅を運行しています。
【どんなサービス?】
・専用のオートリキシャ・スタンドで、アプリから予約。
・車両はすべて、電動モーターで走るオートリキシャ。
通常のリキシャと区別できるよう、青い色の車体になっている。
・料金は、片道 40 ルピー(60円)/1km ほど。Uberや流しのオートリキシャの運賃よりも割安
②のRapidoと同様に、都市部の「ラストマイル問題」を解決する同サービス。特に「メトロの駅周辺のラストマイル」に特化し、メトロを利用する通勤、通学客をターゲットにしているようです。
【使ってみた感想】
EVオートリキシャに初めて乗りましたが、静か&スムーズな乗り心地で驚きました!このオートリキシャ体験をするだけでも、乗る価値はありそう笑
メトロ駅を利用する際に便利。通常のオートリキシャよりも料金が安く、リキシャ・スタンドに行けば、すぐに予約が出来るため待ち時間も短縮。
バンガロールの全地域や、他の都市にも展開してほしいです。
④Yulu:インド最大のEVサイクル・シェアリング
電動モーターでスイスイと走れる、EVサイクルのシェアリングサービス。
バンガロール発のスタートアップ、とだけあって、バンガロールの中心部を歩くと、Yulu Zone をあちこちに見かけます。
【どんなサービス?】
・専用アプリで、ロック解除~料金支払まで一括で完了
・Yulu Zone に駐輪してある電動サイクルに付いているQRコードを読み取って、ロック解除。乗り終わったらYulu Zone に駐輪
・料金は「時間」「距離」で計算。30 ルピー(45円)/ 10分間 くらい
・使いたいときに分単位でレンタル可能。何日間か継続的にレンタルできる、デイリーレンタルパッケージもあり。
【使ってみた感想】
電動モーターで走るEVサイクル、とにかく乗り心地が最高です。
車体もタイヤも頑丈なつくりになっていて、インドのでこぼこした道も、スイスイ乗れてしまいます。ちょっとした買い物や移動にとても便利。
⑤Bounce:好きなところで乗り捨てOK!EVバイク・シェアリング
EVバイクのシェアリング・サービス。バンガロール、ハイデラバードなど、インド6都市で展開しています。Bounce の特徴は「専用のバイク置き場」がないこと。乗り終わったら、自宅前でも店先でも、好きなところに停車して、乗り捨てることができます。
【サービス概要】
・GPSで現在地近くに停留しているバイクを見つけて、予約。
・予約後 20分以内にバイクのある場所へ行き、バイク利用開始
(バイクに近づくと Bluetoothで解錠できる仕組み)
・乗り終わったら、好きなところにバイクを止め、アプリで終了操作する。
・支払いはアプリ内のウォレット経由で完了。
・料金は 30 ルピー(45円)/ 分くらい
【利用してみて】
Bounce が便利なのは、どこでも乗り捨て可能なところ。
④に挙げた Yulu は、特定の Yulu zone に行って駐車する必要がありますが、Bounce は好きなところに乗り捨てることが可能です。各車体にGPS が付いており、ユーザーは現在地の近くにあるバイクをピンポイントで予約し、利用することができます。
※利用には2輪車免許証の登録が必要です。
⑥Drivezy:インド最大の個人間カーシェアリング・プラットフォーム
インド国内17都市に展開するインド最大のカーしゃえリングサービスです。2輪車(バイク)も扱っています。
Drivezy の特徴は、一般人が個人同士で車やバイクのレンタルができる、P2P (Peer-To-Peer) レンタル・プラットフォームを提供していること。ご近所さん同士で、車やバイクを貸し借りできるサービス。
【どんなサービス?】
・Drivezy のウェブサイトやアプリから、レンタルしたい車 or バイクを予約
・1時間~1週間単位で予約できる
・自宅の玄関先まで車を運転して持ってきてもらう
・レンタル開始時にアプリ上で支払い
・車 or バイクを貸したいオーナーは、専用サイトに登録しておく
・料金は、1日あたりで、
車→1000ルピー(1500円)、バイク→600ルピー(1000円)ほど。
2015年にバンガロールで創業した同社は、現在インド国内で150万人以上のユーザーがいます。コロナ下のロックダウンによる移動制限から、利用者は一時減りましたが、制限の緩和とともに利用者が増加。また、長期的に続く在宅勤務で、通勤や通学に使っていた車を日常的に使わない車の所有者たちにとっても、眠っている車を有効活用できる場として、支持を得ています。
インドの首都デリーでは、一般家庭の約50%が2輪車を所有している一方、4輪車を所有しているのは約10%に留まります。(2019年)(※2)車を購入せずとも、通常のレンタカーより安く、短時間からレンタルでき、アプリの操作性やプロセスのスムーズが評価され、口コミで利用者を増やしています。
同社には、石油大手のシェルや、日本のヤマハ発動機が投資をしており、2021年には、ヤマハが買収を検討しているとの報道もありました。
私は利用したことがないのですが、バンガロールの街中では、「Drivezy」のステッカーが貼ってある(=同サービスの登録車両)をよく見かけます。
今度ぜひ利用してみたいと思います。
(※2)デリーでの調査より
まとめ:進化を続けるインドのモビリティ・サービスに注目
ここ2~3年で、インドでは多様なモビリティ・サービスが一気に増えました。上に述べたように、バンガロールはスタートアップの実験場。日々の生活の中で、新しいモビリティ・サービスが展開され、進化していくのを実感します。
また2~3年後には、モビリティ・サービスが激変しているかもしれません。引続き注目していきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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