見出し画像

双極性障害のこと 【障害者雇用について】

私は定年退職した後、今は別の企業で障害者雇用枠で働いています。

今の職場には同じように障害者雇用枠で勤務していた人が多いときは6人いました。
いずれも精神障害者です。

今でこそ、私は責任のある業務を任せてもらっていますが、そのころの業務内容は、定型書類に番号を割り当てて記録し、印刷して渡すという簡単なものが中心でした。
他にもいくつかの業務がありましたが、文具品の在庫管理や発注、郵便物の集配といった、責任が少なく、期限も緩いものばかりでした。
間違えても、対外的に影響があるものはありませんでした。

そういう中で、私は突出した年長者であり、それ故、社会経験が長いことから、この5人の取りまとめ役的な立場になりました。
皆さんの業務内容や業務状況を障害者担当の正社員に報告したり、私たちの業務についてその方と検討したりといったこともしていました。
(時給は全員同じでしたけどね…)

6人の特性は様々です。
1度説明しただけで、迅速に間違いなく業務をこなせる人がいる一方で、何度説明しても間違える、遅いという人もいます。
そのため、絵を多用した手順書を作ることも私の業務の一つになりました。
どうしたら間違えることなく処理ができるか。
どういう段取りを整えればいいのか。
いろいろ考えました。

しかし、人によっては、なかなか間違いが減りません。
書類を五十音順に並べる業務では1割くらい間違える。
書類を、番号順に分けられたバインダーに入れるにも、やはり1割くらいは違うバインダーに入れてしまう。
簡単な書類を作るにも、間違いを見逃してしまう。

パワーポイントで資料を作ってもらおうとすれば、ずっと横についていなくてはならない。
1回目、2回目は当然としても、3回目も、4回目も、5回目も…

その結果、今、思っていること。
残念ながら、その人たちに任せられる業務は、少なくとも今私が勤務する職場にはない。

就労している障害者の多くには「支援者」と呼ばれる人がいます。
居住地の自治体の障害支援部門だったり、民間の障害者就労支援施設の職員だったり。
この人たちの役目の一つは、担当している障害者を職場に定着させるにはどうしたら良いかを職場の担当者と検討することです。

先述の障害者の支援者からは「ジョブコーチをつけてみたら」という提案がなされました。
「ジョブコーチ」は、その障害者の横について、一緒に業務をしながら、どうやったらその業務ができるようになるかを職場の障害者担当者と検討します。
しかし、社員でもない第三者を職場に入れ、業務を見せることは機密上できません。
また、仮にそれを許したとしても、そのジョブコーチなる人に業務を教え、日々の質問、疑問に答えるのは誰なのでしょう。
さらには、その「検討」にどのくらいの時間がかかるのでしょう。
少なくとも、私がいる職場では、それはできません。
会社は「職業訓練所」ではないのですから。

また、ある支援者はこんなことを提案してきました。
「任せられる業務がなければ、勉強をしてもらってはどうでしょう?」
ワードやエクセルなどの勉強をするということだそうです。
給与をもらいながら勉強?

障害者の就労には「合理的配慮」が求められています。
職場内の段差をなくすとか、車椅子で利用できるトイレを用意するといったことが含まれます。

私が勤務する職場では、私たち精神障害者に対して、
休みがちだったり早退、遅刻をしても、それを咎めることはしない、
業務の進捗は各自に任せ、遅くても急かすことはない、
各人が自己判断で休息を取れる、
その人が休んでも業務が滞ることのないよう、他の人が補助できる体制にしておく、
その人が業務できるよう、手順書を作り、段取りを整える、
といったことをしています。

精神障害者に対する「合理的配慮」としては、これが最大限ですし、私もこのような配慮をしていただいていることをありがたく思っています。
これ以上のことが必要なのだとしたら、残念ですが、その方を受け入れることはできません。
「そんなことを言ったら、精神障害者は働けないではないか!」という声をいただくかもしれません。
しかし、私が知っている限り、企業はこういうものだと思います。
給与をもらって、それに見合う成果を出す。
その人に仕事をしてもらうために、他の社員がその倍以上の時間をかけることはできないと思います。

障害者雇用の促進、そして、そのために求められる「合理的配慮」。
すべての職場がどんな「配慮」もしなくてはならないわけではないと思います。
支援者を含む、働く側は本人の適性に合った職場で働こうとすることが大切ではないでしょうか。
「合理的配慮」を大上段に構えて、要求ばかりしていては、かえって障害者雇用促進の妨げになると思います。