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車椅子の泥酔者

ある晩、自転車で歩道を走っていると、車道の真ん中にこんもりとした塊が置いてありました。
その場所は整備されたばかりの道路で、車道が広く、大きくカーブしたところ。
カーブを曲がってくる車からは見通しが悪い場所で、しかも夜だったので、車がこの塊にぶつかっては大変、と思い、自転車を降りてその塊を道路の端に寄せようと近づいてみると...
その「塊」は人間だったのです。

小太りの男性が車椅子に乗ったまま前のめりに倒れていたのでした。
どうやらかなり酔っているようで声をかけても要領を得ません。
自分で起き上がることはできず、また、私だけの力ではどうにも起こすことができず、どうしようかと思っていたところに、通りかかった女性が「どうしました?」声をかけてくださいました。
事情を話したところ、その女性は介護職に就いている方で、起き上がらせる要領を心得ており、二人がかりでなんとか起き上がらせることができました。
しかし、その車椅子には背もたれが腰のあたりまでしかなく、手を離すとまた倒れてしまうほどの泥酔ぶり。
そこへ、その男性のご友人で同じく車椅子利用の男性が通りかかり、その方の案内で泥酔している男性を片手で支え、もう片方の手で車椅子を押しながらご自宅まで連れて行きました。
そこは集合住宅の1階にあるバリアフリーの部屋だったので、部屋の中に入るまでは楽だったのですが、そこからがもう一苦労。
そのままにしておいたら、また倒れてしまいます。
先ほどの女性はかごに荷物を入れたままの私の自転車を見ていてくださっているので、私一人。
力づくでその男性をベッドに横たわらせ、冷蔵庫に入っていたペットボトルの水を手の届くところに置いて、部屋を出てきました。

障がいの有無にかかわらず、度を超えて呑んではいけませんね。