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日々雑感 【「盗む」ということ】

私は落語が好きです。
それも、噺を聴くだけでなく、あの社会の習慣や個々の噺家さんの考え方などを知るのも大きな楽しみです。

そんな中で、私が好きなことの一つは「芸は盗むもの」ということです。
教わるのではなく、あるいは、教わったままではなく、自分で考えて自分のやり方を見つけてゆく。

これは仕事でも言えることです。
上司や先輩、あるいは同僚や後輩のやり方を盗んで自分のものにする。
このような姿勢が大切だと思います。

残念ながら、そういう姿勢を持っている人には長らくお目にかかりませんでしたが、現れたのです。
現在、私が勤務している職場にいた女性。
28歳。
久しぶりに「これは!」と思いました。
最近、転職して別の仕事をしています。

その女性が同じ職場にいたころ、ときどき相談を受けました。
例えば、「社長に代わって対外的な手紙を書かなくてはならないが、どう書いたら良いのか分からない」と。
彼女の職務経歴からすれば、仕方のないことでした。
そこで、言葉遣いや全体の組み立てなど、私の考えや文章の案を伝えました。
しばらくして、自分で書いたものを見せに来ました。
大筋は私の案に従っているものの、彼女なりに書き換えた部分が多々ありました。
「これは!」と思いました。
いえ、「せっかく私が考えたものを変えやがって!」ということではありません。
「素晴らしい!」と思ったのです。
人に言われたことをそのまま受け売りにするのではなく、私が知らない事情や彼女の考えを踏まえた内容になっていたからです。
私の案そのままだったら、むしろ、がっかりしたことでしょう。

また、最近はこんなことがありました。
彼女の今の仕事で、
・取引先から難題を頼まれて困っている。
・上司に相談したところ、断るように言われた。
・どう断ったら良いのか知恵を借りたい。
そういったことでした。
その「難題」の概略も話してくれました。

それに対して、
「断り方やできない理由を考えるよりも、どうしたらその難題を実現できるかを考えたほうがいい。そのほうがあなたのためにも、組織のためにもはるかに良いと思う。」と答えました。
彼女は納得し、数時間後に連絡が来ました。
その難題を実現する方法を考え、取引先にも上司にも了解してもらえた、と。
嬉しかったです。

こういう人はどんどん成長すると思います。
仕事の面でも、人としても。
だから、余計なお世話だとは思いますが、彼女にはできるだけ長く仕事を続けて欲しいと思っています。

一方で、結婚して仕事を辞めてしまう女性が多いのは残念なことです。
最近は「女性の社会進出」が言われていますが、上辺だけの施策しか打たれておらず、本来の意味での「女性の社会進出」が実現するのはだいぶ先のこと、か、日本では実現しないかもしれません。
女性管理職を増やすといっても、数だけを追いかけて実が伴っていなければ意味がありません。
政治家は口先だけ、上辺だけ、自分のことしか考えていないように思えてなりません。
おっと、話がそれました。

誤解しないでいただきたいのですが、女性に家庭に入って欲しくないと考えているわけではありません。
家庭も一つの社会ですし、「育児は育自」といわれるように、母親や主婦という仕事を通して人として大きくなる人はたくさんいます。
ただ、先に紹介した女性の場合は会社という組織での仕事を通じてのほうがより大きくなれると思うのです。

今は職場が変わってしまいましたが、機会があれば、また何かお伝えできたらと思っています。

私の考えや言うことが正しいとは限りません。
時代や状況にそぐわないことも多々あるでしょう。
ですから、私が伝えることを参考にして自分のものを作りあげて欲しいのです。

「盗む」とはそういうことだと思います。


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