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寅さんの優しさ 20240411

実は、私、脳腫瘍が見つかりました。
当初8月の予定だった摘出手術ですが、痛みがあまりに激しいので医師に頼み込み、6月末に早めてもらうことができました。

暇で暇でしようがないであろう入院と自宅療養の約2ヶ月間のお楽しみにしようと思っているのが「男はつらいよ」シリーズです。
ですので、今はできるだけ見ないようにしているのですが、仕事で疲れているときなどに寅さんに会いたくなり、ときどき見ています。

寅さん。
なんと優しいのでしょう。
あの優しさはどこからくるのでしょう。

ときには傍若無人とも思える大暴れをしてしまいますが、決して理不尽なのではなく、むしろ寅さんの優しさや正義感からきているように思います。

もちろん、寅さんは映画の中の人物で実在の人ではありません。
ですので「寅さんの優しさ」ではなく、「男はつらいよという映画の優しさ」というべきかもしれません。

それは山田洋次監督だけではなく、渥美清さん、倍賞千恵子さんを始めとするすべての役者さん、そして、あの作品に関わったすべての人たちの優しさが込められているように思えるのです。

役者さんたちの細かな所作は、演技ではなく、それぞれが元々持っている優しさの表れだと思います。
画面の端にいる役者さんたちにいたるまでのちょっとした表情、視線、手の動き、声がけなどなど、演技とは思えないのです。

映像の角度も山田監督の指示だけではなく、撮影者の何か優しさやこの作品への思い入れを感じます。

この作品を見る前、正直なところ、「あんな古臭い映画なんて」「どうせ毎回同じことを繰り返しているんだろう」という気持ちを持っていました。
今もそう思っている人たちがたくさんいることでしょう。

しかし、その思いは覆りました。
なんと素晴らしい映画なんだろう、と。
最初から最後まで優しさに溢れ、こちらも優しい気持ちになれる。

映画は国宝や世界遺産に指定できないのでしょうか。