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日々雑感【チューリップのアップリケ】

うちがなんぼ早よ 起きても
お父ちゃんはもう 靴トントンたたいてはる
あんまりうちのこと かもてくれはらへん
うちのお母ちゃん どこに行ってしもたのん
うちの服を 早ようもってきてか

1969年、昭和44年発表。
岡林信康。

発表直後から放送が禁止され、おそらく今でも「放送禁止歌」だと思います。
少なくとも、テレビやラジオで流されることはないでしょう。

そもそも「放送禁止歌」というものの存在をご存知の方が今は少ないかもしれません。
古いところでは、同じく岡林信康の「手紙」、フォーククルセダーズの「イムジン河」、美輪明宏の「ヨイトマケの歌」などが放送を禁止されてきました。
「ヨイトマケの歌」は数年前の紅白歌合戦で美輪明宏によって歌われ、とても驚きました。

今でも歌詞に禁止用語や差別用語が含まれているために、意外な曲が放送禁止になっています。

「禁止」の明確な基準があるのかどうか、私は知りませんが、差別、性、反戦、政治といった内容を含む歌は時代によって禁止されてきました。
放送する側が「好ましくない」と判断する場合もあり、そこに歌われている「当事者」からの抗議による場合もあり、状況はさまざまなようです。

最近は反戦や性については制限が緩くなっているようですが、「差別」については放送する側として今もかなり神経質になっているようです。
冒頭にご紹介したのは「チューリップのアップリケ」の歌詞の最初の5行です。
これだけでも「貧困」「部落」「差別」を連想させるため「禁止」なのです。

この3ヶ月ほど、何故か私は「差別」ということに触れる機会がいくつかありました。

何がきっかけだったか覚えていませんが、最近は、高校生、大学生のころによく聴いていた1970年代のフォークソングを聴いています。
たくさんの懐かしい曲の中で、「チューリップのアップリケ」「手紙」「山谷ブルース」などを聴き、この問題について改めて考えさせられています。
今、通勤時に毎日目にしている公園では、ほんの半世紀前には毎朝炊き出しがおこなわれ、仕事を求めるたくさんの人で溢れていました。
そして、今はラブホテル街になっているその一角はそういう人たち向けの簡易宿泊所が立ち並んでいたのを思い出します。

また、ときどき写真を撮りに出かけていますが、偶然、かつて貧民街があった場所を知り、訪ねてみました。
今、その名残はまったくありませんでしたが、御所のすぐ横にそのような場所があったことに驚きました。

そして、最近の日課の一つである「ゴールデンカムイ」。
アイヌ民族の少女が活躍するアニメです。
このアニメを知ったのは、この北海道の先住民族であるアイヌ民族の文化を紹介する教養番組を、これも偶然に、見始めたからです。
この記事に載せた写真は高校生のときに北海道の阿寒湖で撮ったものです。
だいぶ迷ったのですが、載せることにしました。
迷った理由は、一緒に行った友人(男です!)の了承を得ていないからではなく、背景に「部落」という文字が写っているからです。
私が神経質になる必要はないかもしれませんが、おそらく、この問題を取り扱う文書など以外では見ることのない用語なので、気になっています。
この写真を撮ったときには何の問題意識も持っておらず、そのような民族と文化の存在を初めて知り、店番をしていた人に話を聴き、ムックリや木彫の熊を買い、楽しいひとときを過ごしました。
その後、このアイヌ民族も「差別」という問題を抱えていることを知ったのでした。

今、多くの人にとって「差別」は縁遠いことかもしれません。
しかし、決してそうではないのです。
今も特定の地域の出身だったり血縁であることが分かると企業に採用してもらえない、といったことがあると聞きます。
しかも、それが分かるような一覧があるとも聞きました。

障害者や社会的少数者に対する差別や偏見は依然として存在します。
かく言う自分はどうか。
障害者であることで悔しい思いをしていながら、では、自分は人を差別する意識を持っていないだろうか。
そんなことを改めて考えています。