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輝く瞳

私は高校生の時にアイスホッケーが好きになりました。
それもカナダ、アメリカにまたがって行われているプロホッケー、NHL(National Hockey League)の大ファンです。
学生時代から社会人になりたてのころはNHLで最も古い歴史を持つチームがあるカナダのモントリオールまで毎年試合観戦に行っていました。
冬のボーナスは全てこの旅費につぎ込んでいました。

その後、自分でもプレーをし始め、現在はプレーこそしないもののファンであることには変わりありません。
ホッケーの練習は、今は数が少なくなってしまったリンクを借り切って行いますが、当然のことながら一般公開の前後、つまり、早朝か夜ということになります。
その中でも早い時間帯はリンクに所属する少年少女のホッケーチームか大学の強豪チームに使われるため、私たちのようなへぼチームがリンクを借りられるのは深夜になります。
運が良ければ夜9時から、通常は夜11時や深夜1時からということが当たり前でした。

それはさておき、今から5年ほど前のこと。
早朝に電車で出かけた折りに私の前を自分の体と同じくらいの大きな防具バッグを担ぎ、手にスティックを持った少年が歩いていました。
恐らく中学生でしょう。
「早朝練習に行ってきたんだな」と思いながら、ふと見ると、防具バッグにモントリオールのチームのロゴが付いたキーホルダーが下がっていました。
私が持ち歩いていた携帯音楽プレーヤー、i-Pod Touchにも同じロゴがついています。

偶然、ホームでその少年と同じ列に並んだので、私のi-Podをその少年の目の前に差し出すと、少年は目を丸くして驚き、「どうしたんですか、それ」と尋ねてきました。
それを機に、僅か3駅ほどでしたが、中学生の少年と60歳のおじさんとのホッケー談義に花が咲きました。

その少年のキラキラ輝く目が忘れられません。
「なんだよ、このオヤジ」とは思わずに(思ったかもしれませんが)、私の話しかけに応えてきた。
とても素直な心の持ち主なのでしょう。

「いつまでもその情熱と素直な心を忘れないでね」という思いで少年と別れたのでした。

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