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早くも東南アジアの洗礼

安全だけど骨を抜かれる、出る杭は打つ日本の田舎ルール

 環境や習慣によって、人はありのままの姿から離れていく。同調圧力の強い日本では、それが顕著だと、体験を通して感じている今現在。

 海外から見ると、日本人の感覚は美徳でもあり特殊でもあるのだなぁ~、とマレーシア移住の準備段階で早くもアジアの洗礼を受けている。

 ちなみに、

 地方で暮らしていると、仕事でもプライベートでも自己主張を優先する人は少数派。出る杭にはならず、周りに合わすことがコミュニケーションを円滑にするコツとなる。

 私が住む愛媛県で「会議は下駄箱から始まる」という諺がある。実際の会議ではあまり発言せず場の空気に合わせ、本音は帰り間際の下駄箱でこっそりと仲間内にだけに話すという意味だ。なので事件は、会議室でも現場でも起きないように配慮する。

 これは愛媛に限らず、日本の田舎あるあるかもしれない。だけど、このドメスティック愛媛マインドがマジ苦手だった。
 小学校までの私は、やたら素直なお子様。思ったことを何でも口にしてしまうKYな性格だったこともあり、近所や親戚のおっちゃんおばちゃんにガンガン打たれてきた。田舎は打ち方も独特で、真綿で首を締める作戦で来るから怖い。

 例えば、

 派手な服装をしていた時の反応として、田舎のおばちゃんの典型的な返しがこれ。

 「あら~、マサコちゃん可愛い服着てるね~。あ、でもそれ着てたら、目立ちすぎるんじゃない。ね、○○さん、目立つよね~。私は、その服はマサコちゃんに似合うと思うんだけど、ちょっとねぇ、人はどう思うかなぁ」

 と、自分は相手を養護する心優しい人である体を装いつつ、「世間はお前を認めていないぞ」と脅してくるのだからタチが悪い。

 鼻タレだった私は、この言葉の奥に潜むいやらしさと、どんな意見も言った人の主観に過ぎないと気づけなかった。
 「ありのままの私では世間様に受け入れられない」のだと、自分のセンスを呪った挙げ句、次第に個性を隠すようになった。この呪いを40過ぎまで引きずって、白髪染めで初めて毛を染める時に至っては、美容師さんにしつこく相談して「いかに浮かないか」を確認し、実際の毛の色よりも黒っぽく染めたぐらいである。

 マジ根深い、子供の頃の刷り込みって。。。

 50年前とは時代が変わり、日本も個性を尊重するようになったから、服装や髪型もある程度までは自由に選べるけど、まだまだ愛媛では「空気読めよ」的な圧力を無言でかけられる場面は多い。具体的に言うと、自分が好むような店はレイヤーが同じ知り合いも通っているなんてザラで、人口40万人県庁所在地の松山ですら1回飲みに出たら、3~4人ぐらいは知人に出くわす。そんな環境では、人の悪口や愚痴なんてネガティブ発言は誰にどう伝わるかわからない。まさに口は災いの元。

 伊予弁で言うと、この状況「怖いけん、何まり言えん」のだ。

 ただ、裏を返せば、今日も明日も明後日も来年もずっとずっと一緒な人たちとの関係をつつがなく続けていくには、「ありのままの本音を相手にぶつけない」ことは大事なコミュニケーション手段であると今では納得している。田舎のコミュニティは都会に比べて出入りが少なく、関係が長く継続することを前提にしているので、家族的で情に厚いのが大きなメリットだ。相手を騙したり裏切ったりすれば、すぐ噂になるから変な行為ができないという効果もある。自分がちゃんとコミュニティを選んで関係を結べば、厭味ったらしい人に会うこともない。

 いつしか私は、安全で気心の知れた田舎のコミュニティに慣れきってしまっていた。それがある意味、ものすごくぬるくて特殊なものであると気がついたのは、マレーシア移住を考え始めた頃だった。

自己中で逞しい東南アジア化した日本人に遭遇

 私がマレーシア移住に向けて、最初にやったのは情報収集。ネットや本の知識に加えて、現地に住む日本人から直接話しを聞きたいと思った。マレーシアに知人もツテもないので、まずは「トラベロコ」というサイトを利用することにした。

 これは世界各国在住の日本人から、観光ガイド、現地リサーチ、旅行プランなどのサービスを提供してもらえるマッチングサイト。サービスの内容や価格は、自分が良いと思った現地の日本人を選んでメッセージを使って交渉する。トラベロコ自体は、サイトで情報を掲載しているだけで、サービスや価格に対しての責任は負わない。なので、結構トラブルも多いとの声もある。

 このサイトを見ていた2018年3月時点の私は、半分マレーシア移住に懐疑的な時期で、完全に住むと決めきれない気持ちだった。ぶっちゃけマレーシアに行ったこともないのに、「住む」という直感だけが降りてきて、人生の選択肢に移住が入ってきた感じ。東南アジアに女ひとりで移住して、ホントに大丈夫か、そもそもどんな国なんだ?ってところからのスタートだったので、観光がてら現地視察をすることにした。

 そこで「トラベロコ」の運営側が、サービス提供者の身分を確認して利用者の評価が高い3人にアポを取ってみた。

 結論から言うと、人次第でサービスに対する満足度は大きく変わる。あと私の主観では、最初の料金設定が安すぎたりグイグイ来る人には要注意だと感じた。

 中でも、50過ぎの日本人のおっさん(私も50過ぎのおばさんだけどね、むかつくからおっさん呼ばわり)が強烈だった。何がというと所謂ボッタクリである。

日本人のボッタクリおっさんの返しが斬新!

 おっさんに頼んだサービスは「2時間ほど夕食を共にしながらマレーシアライフをリサーチさせてもらう」だった。その料金は3000円ほど。トラベロコは、現地でのガイドなどを頼むと食事代と車代が利用者持ちになる。現地のレストランならば高い店でも一人2000~3000円ぐらいが相場なので、リサーチでは妥当か安いかも、と安易に決めた。

 すると、おっさんは親切にも事前に答えられるならと、メールで私の質問に一つ一つ超長文で答えてくれた。

 質問は下記のようなもの

・マレーシア移住の注意点
・ビザ取得でおすすめの業者
・英会話学校およびコンドミニアム選びのアドバイス

 注意点に関しては、マレーシアでの情報の取り方、ネット環境や光熱費目安など、住の細かい内容をおっさんなりに解釈して10数回に分けて事前に教えてくれるサービスっぷり。ただし、全部におっさんの私生活あるあるが交じる超長文のため、必要な情報を判別するのに苦労する。さらに、かなり決めつけが入る主観的な表現で、おっさん調べなのか、マレーシアスタンダードなのか、謎が深まることも多い。

 例えば、

 マレーシアでは荷物がまともに届かない。のは事実らしいが、一事が万事全部の荷物がまともに届かないと言い切る。そんなことが事実なら、輸入物は、ただの一つもまともに店頭に並ばないのではないかと思うけど、田舎育ちの私は「そうなんですか、すごいですね」と肯定も否定もしない無難なメールを返す。人に嫌われないことが愛媛では最大の処世術。今後の関係がどうなるのかわからないのだから、意見は差し控えた方がいい。それが私のクセにもなっていた。
 通常こう返すと、私の田舎は「そうなんだよね、気をつけてね」で終わるのだが、おっさんの返しは「だから、引っ越しの荷物とか大事なものは僕の家へ送りなさい!絶対だよ」と来る。

 いやいや、会ったこともないあなたより、郵便局の方が信用できるわ。

 とは言わないけれど、文を終わらせようとしても、グイグイ来る斬新な切り返しに圧倒されていた。

 そんな中、近づく現地での食事会。おっさんから前もって「妻を誘いたい」という申し出があって3人で食事をするのは決まっていたが、ふいに「あなたに紹介したい友達夫婦を誘った」的なメールが来た。

 ん?食事代は私が払うんだよね??え、事後報告なの?

 さすがに田舎育ちでボーっとしている私でも、ちょっとこれは困ると思い、やんわりとおっさんに「食事代はどうなりますか?」的なメールを送る。すると、これも斬新だが、メールでもそれとわかる激怒の返しが来た。

 「たかだか一人100リンギ(約2700円)ぐらいで、そんなことを言うなら、俺が全部仕切る」みたいな感じ。

 いやいや、怒られるのも意味不明だし、お金のことを言ってるわけでもない。直感的に「気持ち悪い」と思ったけれど、クアラルンプールに知り合いもおらず、今まで親切にメールで教えてくれたわけだし(あんまり役に立ってないけど。。)、もう日も近いし、何とかおっさんの機嫌を取りなし、なんだかんだあって私が食事代を払うことにして当日を迎えた。

 紹介してくれたご夫妻は、30代でとても感じのよい人達。おっさんの奥さんも素敵で柔らかい雰囲気の人だった。しか~し、私はおっさんをひと目見たときから、これはアカン、生理的にダメなやつだぁ~とのけ反りそうになった。

今さっきスタバでノートに描いたおっさん図(私はあくまでもエディターでレイアウト指示の人物は全て○でごまかす画力である)

 私の画力では、おっさんのキモさを表現しきれないが、頭皮は薄く残りの髪の毛は肩越しまで伸びてヒラヒラと風になびく。歯はところどころ抜けて、かなりのヘビースモーカーなのか常にタバコを吸っている。

 うわっ、キモっ。。。。

 後退りしたくなるほど、瞬間的にキモいと感じたのは人生で三度目(愛媛は平和なのだ)。私は大人なので、顔にはなるべく出さずにおっさんと話す。話してみれば別に悪い人ではなく、きちんとこちらの質問に答えてくれるし、メールのような居丈高さは感じなかった。

 だが、注文の仕方はエグい。ブキビンタンというクアラルンプールの繁華街のイタリアンだったが、注文を任せたら、一人あたり一度に二杯ずつアルコールを注文し、料理もバンバン頼む。なんと全部で2万円!私はアルコールがほとんど飲めないので1杯とピザ一切れぐらいしか食べていない。

 もちろん、感じのよい夫妻は自分たちの分は払うと申し出たが、実は奥様にはその日、市内を完璧にガイドしてもらったので、彼らには食事ぐらいご馳走したい。

 おっさんが勘定を仕切っていたので、感じよい夫妻の申し出をさえぎりリンギットで全額を渡す。すると、おっさんは私が出したお金をいったん自分の財布に入れてから店の人に渡したのだ。

 ??

 と思ったが、よくよく考えると、感じよい夫妻に自分もいくらか出したと見せたいのだな、と思い当たった次第。なんの、見栄なんだ????

 お願いした現地サービスとしては、あらゆる意味で期待値は超えたのだから、これはこれでいいか、と無理やり自分を納得させて日本に帰った私。だが、それからもおっさんのメールはやって来た。

私の日本人田舎根性こそが、全ての問題の原因だと気づく

 キモい、と思った自分の直感を信じて、バサッと切りたいところだが、せっかくできたマレーシアの知り合いを失いたくないという下心もあった。「キモいけど、悪い人じゃない」と自分を納得させていたが、臭い人と縁を作ると、後々トラブルになると実感する出来事が起こる。

 実は明日10月24日から、クアラルンプールに絞ってコンドミニアムを視察し契約するのだが、その来馬日程をうっかりおっさんに話してしまった。すると、自分の家で食事会をするのでぜひ体を空けておいてほしいというお誘い。正直気はすすまないが、行く予定にしていた。そんな矢先に、おっさんからマルボロブラックと利尻昆布の写真が送られてきて、「免税店でこれを買ってきて」というオーダーが入った。

 文面から払う気がないのは明らかで、手土産としてせしめようという魂胆が見える。さすがに、なんとも言えない嫌な気分になった。女ひとりで、身よりもない状態で行く私から、まだ何かたかろうとするのか、と。それでも、またまた田舎根性で「何カートン必要ですか?」的なことを返してしまい、心から後悔した。

 こんな感じでつけ込まれていたら、東南アジアでは生きていけない。はっきりとノーを言うこと。何度しつこく言われても、ちゃんと自分の意思表示をしなければ、私は結局、愛媛にいる時のまま変わることができない。染み付いた合わせグセのために、自分を無意識に犠牲にするのはもう嫌だ。愛媛でも何度となく出会ってきた、相手のスキを見つけるとすかさず自分の都合だけを優先してサポートを受けるのが当たり前のずるい人やせこい人との縁も本当には断ち切れない。私はいつだって出会った瞬間にわかっていたはずだ。自分を信じていい。そう思い直した。

 数日後、意を決しておっさんに「食事会に行けません」メールを送った。

すると、

「僕のタバコと昆布はどうなるの?」

と来た!

THE 知らんがな。。。

 本質的には悪い人じゃないんだろうな、と思った。

 東南アジアは自分より困っている人に与え、自分より持っている人からもらう慣習がある。財布のヒモがゆるいと思わせた私に問題があるのだ。

 けど、私がこれからの人生に関わりたい人ではない。今からは、愛と感謝のフィールドで生きる。それは、どんな場所でも見失わない私の願いだ。だったら、自分の気持ちを一番に大切にしよう。

 おっさんは、みんなに告知しているのに困るだとか、迷惑かけられたと2,3文を書いてきたけど諦めは早いのか、最後っ屁みたいな「Bye」のメッセージで連絡が途絶えた。どこまでもキモい。。。けど、クアラルンプールは都会だけあって別れはアッサリしているらしい。ホッと一息、まさこです(これ知ってたら、私よりも年上です)。

 そして、

 女ひとり、こんな私が東南アジアで暮らそうと思う意味が、また一つわかった気がする。私は真の意味で、自分の足で立ちたいのだ。やはり頭で考えるよりも、心が決めることは的を得ている。

 気づかせてくれてありがとう、おっさん。
 こちらこそ、Long good-byeならだ😂

 私の曖昧さがトラブルの原因になっていたのだな、とも実感。そこのところをかなりわかりやすく書いているのが下記のコメントだ。

 今回、かなり長くなってごめんなさい。最後まで読んでくれた人はありがとう。次からはもっと簡潔にまとめるように頑張りますね。
 明日からのクアラルンプール視察のレポートも順次アップします~

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