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セーフだったと思うことにする

(虫の嫌いな方はみないほうがいいような表現があります、ご注意ください。お食事中の方もご注意ください)

義母から電動のこぎりを借りた。いい加減、買おうかどうか悩んでいたところ、義母が持っているというのでお願いして借りたのだった。
ずっと放置していた木材を切って捨てる、ということをしたかったのに、なかなかできずにいた。
10年以上前に作ったキッチンカウンターが壊れ、分解して裏の物置の横に立てかけておいた。だんだん木が傷んできていて、何とかしなければとずっと気になっていたところで、充電式の電動のこぎりはありがたい。
早速、いくつか切ってみる。音は大きいし、手の小さい私にはちょっと大変かなと思ったけれど、手動で切るよりは断然早い。毎日、ちょっとずつ片付けて行こうと決めて、今朝、ずっと雨の当たる場所に置いてあったものにとりかかった。何枚か重ねておいてあるので、手前の一枚に手をかけた。
何か動くものがある。一瞬、嫌な予感が走った。裏にびっしりと虫がついている。米粒よりも小さい虫。書いていてもぞっとするので詳細には書かないけれど、とにかく久しぶりに大量の虫を見た。小さい頃はこんな風景にも出くわしたものだけれど、ずいぶん長い間目にしていなかったせいか、絶句してしまった。
次の板もその次の板も、虫のえさと住処になっていた。
無駄な殺生はしない主義のわたしもさすがにアースジェットにお世話になった。いくらやっても足りないので奥に残っていたキンチョールを追加で噴射。懐かしい匂いがするなと思いながら、このあとどうしようかと考えた。
木はだいぶ傷んではいるものの、形は残っている。しかしこれを切るのはちょっと。触りたくはない。しかし捨てたい。どうやって?
空を仰ぎ、軍手をしたまま呆然。あれが欲しいな、ナウシカに出てくる胞子を焼くやつ。でもこれだけ湿っていたら燃えないか。
灯油をかけて燃やす?いや、どこで? いや、ひとまず落ち着こう。
軍手を取り、家に戻って手を洗い、うがいをする。服にキンチョールの匂いがついている気がする。ふとみるとカーディガンが汚れている。Gパンに着替えたのはいいけれど、寒いからと白いカーディガンを羽織っていったのだった。こういうところが本当にバカなのだと思いながら、ひとりため息をつく。
これからは捨てることも考えて、モノを買わねばと本気で思った。
それでもあの幼虫たちが孵化する前でよかったのだ、ぎりぎりセーフだったのだと自分に言い聞かせる。あれだけ孵化したら新聞に載るくらいの事態になるかもなと想像し、一人で首を横に振ったのだった。

#エッセイ #虫 #木 #のこぎり #アースジェット


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