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まわり道

風の強い日は外に出たくなる。赤いスニーカーを履いて、帽子をかぶる。
雲の動きは早くて太陽は出たり入ったりしている。雨は降らなさそうだ。
いつもの神社までの道を歩く。あともう少しというところで工事をしていて通行止めになっていた。仕方なく手前で曲がって、知らない道に入った。
方向さえ見失わなければ多分、迷わずに済むと思い、狭い路地を進む。
いつもと違う道にはいつもと違う景色がある。当たり前のようなことだけれど、何かないとわざわざ道を変えてみようとは思わないものなのかもしれない。
ということは、景色を変えたければいつもと違う道を選べばいいということなんだと思う。
人生は旅だと誰かが言っていた。景色が変わるのを楽しめばいい、と。
ときには自分から景色を変えた方がいいこともあるのかもしれない。

いつもの道に出た。神社には誰もいない。脇道の赤い彼岸花の中に一輪だけ黄色い彼岸花が咲いていた。毎年来ているけれど見るのは初めてだった。風に運ばれたのか、鳥が種を落としていったのか。
初めての場所ですこし居心地が悪そうに見えた。来年、またこの場所に咲くのかどうか。
それはたぶん、誰にもわからない。

#エッセイ #景色 #いつもの道 #毎日更新 #彼岸花

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