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涙の行く先

産婦人科の受付という仕事は、ものすごく気を使う。他の仕事は気を使わないということではなくて、女性の性を扱うということに関しては、やはり気を使いすぎるくらいがちょうどいいみたいだ。
いつもの通り、流れに身を任せてみたら、こんな仕事をすることになっている。ちゃんと考えることができないのはわたしの欠点だと思うけれど、そのおかげで予想もできないものに出会うこともある。もちろん、いい方も悪い方も、だ。
今日のお昼、書類を持って入院しているママさんのお部屋に入った。生まれたての赤ちゃんと暗い部屋で食事をするママさん。
声をかけると、ご飯を食べながら頬に涙を伝わせている。
なるべく普通の口調で書類を渡し、部屋を出た。
声をかけたほうがよかったかなぁと思いながら階段を降りる。
こういうとき、自分ならどうしてほしいのかと考えると、わたしの場合、そっとしておくという判断になってしまう。自分ならそっとしておいてほしいと思うからだ。けれど、他の人がそうとは限らない。
昔からあまり人に相談しないタイプだったなと思う。相談できる人がいなかったからだ。
母があまりにも頼りなく、高校生の頃、もう相談するのはやめようと心に決めた。
欲しい答えがあるのなら、もう答えは出ているのだと思う。
けれど一人で判断すると、しまったと思うこともある。結局は、何事もバランスなのだと思いながら、病院を後にした。
明日、あの泣いていたママさんのことは、職場の人に相談してみようと思った。気にかけてほしいと思うときも、あったりする、わたしも。

#エッセイ #病院 #産後

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