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見上げた空

昨日の夜、棚の整理をしていたら青いファイルを見つけた。見覚えがあった。
中を見るとルーズリーフには私の字で、好きな詩や言葉、好きな作曲家や作家のことをまとめたものがつらつらと書かれていた。
学生のころ、空いた時間に図書館に入り浸っていたなぁと思い出した。
調べ物は好きだった。ただし、自分の興味をひくものに限るけれど。
懐かしくめくっていると、最後に日記を抜粋したものが出てきた。
日記は中学の頃から書いていて、全部処分していたけども、気に入ったものだけ抜き出して書き写していたようだ。
これは記憶になかった。ポツリと独り言のようなものばかり。
でも、どれも書いたときの気持ちをはっきり思い出せた。
ーー体育の授業のとき、運動場で体を折り曲げたら、足の隙間から逆さまになった青空が見えた。幸せだと思ったーー
このときの空を私はまだ思い出せるし、これを書いたときの私はまだ私の中にいる。
言葉とは言葉そのものに意味があるのではなくて、言葉にしたそのときの気持ちを伝えるための手段でしかない。
当然、言葉ではない溢れ出た何かがあり、その何かは時間が経っても色あせてはしまわないのかもしれない。
あの日も今日みたいな夏空だった。
高校生の私が今の私の目を覗き込む。
なにがあなたの幸せ?
私はたじろいで答えられない。
嘘はつきたくない。

#エッセイ #私に #幸せ #言葉

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