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漁師のリカコさん脚本塾④「押して引いてシーソーゲーム」

Clubhouseで5回にわたって開いた「漁師のリカコさん×脚本家・今井雅子 自分で書ける力をつける塾」(noteをまとめたマガジンはこちら)。

ラストまで続く一本道をイメージした第1回「入口と出口を作る」、シーンを料理の一皿に喩えて「面」をイメージした第2回「入口で引きつけて引きこむ」、「上下」に注目した第3回「上げて落として引っ張る」に続いて、今回は「ベクトル」がテーマ。

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リカコさんの宿題 4人の子のキャラとセリフ

【ここまでのあらすじ】舅の介護で別居していた夫ヒデちゃんから、舅の葬式の後で「別居維持宣言」を言い渡され、ショックを受けるリカコ。噂好きなご近所さんの里美が熟年離婚やと面白がって言いふらし、火に油。

【今回はここから】リカコの家に性格バラバラな子ども4人(健太郎、あずさ、裕次郎、福三郎)が招集され、緊急会議が開かれることに。

今回のテーマは「ベクトル」なので登場人物の力関係や関心の方向に注目してキャラづけをした上でセリフを書くことに。

リカコさんの宿題は「4人の子のキャラクター」と「親の別居問題について、それぞれが言いそうなセリフ」。

健太郎 (33)医師 既婚  堅実な努力家 石橋を叩いて渡るタイプ。夢やロマンは人生の無駄だと思っている。趣味は親孝行と家族サービス。お金が大好き。大阪在住。
あずさ (31)税理士 既婚 ファザコンのブラコン。家族の男達は全員自分のことが大好きで、何でも言うことを聞いてくれると思っている。しかし、リカコのことは世界で一番怖い。ラッキーが自然に訪れるタイプ。もと和裁士。趣味は魚料理。神戸市在住。
裕次郎 (29)ダンサー 独身 恋愛至上主義。自己肯定感が高い。 いつも人の中心にいたいタイプ。奉仕の精神が強い。兄弟の中で唯一人、ボランティアをしている。趣味 筋トレ。大阪在住。
福三郎 (28)釣り船経営 婚約中 分析家。理屈っぽい。しかしおだてに弱く酒を飲むと気が大きくなり、おごりまくってしまうタイプ。 金勘定に弱い。マザコン。趣味 麻雀 明石市在住。

そんな4人が言いそうなセリフは?

健太郎 「なんでわざわざ二軒分も水道光熱費払うねん? 無駄やろ。ネズミも走り回っとうねんし、浜の家はサッサと壊して立体駐車場にでもしたらどうなん? 親父に女がおる? まっさか。風俗は大好きやけど、素人の彼女なんか、ナイナイ。そんなマメちゃうし、だいたいケチやん。かあさん、里美ちゃんの妄想大会に自ら参加してどうするねん。とにかく離婚とか別居とか、今更そんなめんどくさいことやめてや」
あずさ 「お母さん、ちょうど良かったわ。相続が終わるまでは、税金の関係上、お父さんにはどうしても、浜の家に住んどってもらわなあかんねん。どないして納得してもらおうかって思ってたところや。でも、お父さんが一人暮らしできるんやったらラッキー。そないせんと300万くらい損するねん。私も手数料もらいたいし、もしな、浮気しとってもな、子供らみんなで見張っとくから大丈夫やて」
裕次郎 「ママには気の毒やけど、人を好きになる気持ちは誰にも止められないからなぁ。僕は、その愛が本物やったら応援したいと思う。パパは柔らかな心があったんやね。彼女、何歳? 実はこの際やから僕も言ってしまうね。驚かないで、好きな人がいます。お付き合いしてます。彼女、ママと同い年。愛は生きる糧なんだ、年の差なんか関係ない。もちろん、ママは僕が慰めてあげるから心配しないで。あ、ごめん、ちょっと電話してくる」
福三郎 「おとん、ワレどないゆうとんねん? なんでオカン泣かせる? わしはおとんの一人暮らし、賛成できん。家事できるようになってんやったら、オカン助たれや。掃除できるて偉そうに言うけど、ルンバがしてるんやんけ。洗濯かて、浜の家のは全自動乾燥機付きやさかい入れるだけやろ。な、タコぐらい洗てから威張れや。40年も漁師しとってからあの洗濯機の使い方も知らんのやろ? そう、あの二槽式よ。わし等がこまい時、ぶちまわされて閉じ込められた納屋の隅にあ るやつよ。え? みんな知らんの? あ、わしだけでしたか、それ」

セリフについてはリカコさんの創作が加わっているが、四者四様なキャラ立ちが素晴らしい。職業も大事なものも口調もバラバラ。今回のテーマ「ベクトル」に打ってつけ‼︎

1)ベクトルに注目してキャラを立たせる

✔︎ベクトル=「どっち向いてる?」
好き嫌い 敵味方 関心 嗜好 思想 視線 

✔︎人物相関図=登場人物間の力学
各キャラの関心・それぞれの力関係
建前と本音(ウラハラ)

リカコとの関係は?(敵味方 好き嫌い)
健太郎 波風立てて欲しくない 我慢して欲しい(抑圧)
あずさ 父に同情 母が怖い
裕次郎 恋人と同い年の母にも幸せになって欲しい
福三郎 父への反発から母の肩を持つ

浜の家(ヒデちゃんの実家)をどう思っている?(関心 利害)
健太郎 別居は光熱費ムダ 更地にして駐車場にして欲しい
あずさ 相続手続き優先 300万浮かせて手数料もらいたい
裕次郎 自分の恋愛には関係がないので眼中にない
福三郎 土地が空くなら新居を建てたい

2)ベクトルを踏まえてキャラを整理

健太郎 (33)医師 ケチ 波風立てたくない 無駄なことはしない 
→「離婚反対!」「浜の家は駐車場に!」 

あずさ (31)税理士 ファザコン リカコ怖い
→「相続の手続き終わるまで別居してて!」「手数料欲しい!」  

裕次郎 (29)ダンサー 独身 恋愛至上主義 自分に酔う
→「大好きなママ、幸せになって!」「僕、ママと同い年の恋人と幸せになる!」 

福三郎 (28)同業の父親への反感から母親の肩持つ 新居を建てたい
→「オカン泣かせやがって!」「後継いだんやから、あの土地はもらう!」 

忘れちゃいけない「主人公リカコ」
リカコ(57)結婚35年の夫から別居宣言 4人の子を招集して相談
→「あんたらどう思う?」「私どないしたらええ?」

ヒデちゃんをオフに(不在の存在感)


3)キャラを踏まえてセリフを整理

セリフの駆け引きでシーンの風向きを変える
建前と本音(ウラハラ) 

人物の出入り/ON OFFで風向きを変える
(第2回のヒデちゃんの弟・妹の退場 第3回のユカリの登場)
 一人だけ違う世界を見ているキャラ=裕次郎 目線も違うところを見ている

✔︎「入口と出口」の意識も忘れない!
入口:子どもらに相談して別居問題を解決したいリカコ
出口:ますます手に負えないリカコ、ヒデちゃんに助けを求める

ポイントを踏まえて今井加筆バージョン

リカコ「お茶淹れて来よか」
あずさ「お母さん、ええから座っとって」
健太郎「とにかく今更離婚とか、めんどくさいことやめてや。早いとこ火ぃ消さんと、あっという間に噂広まるで」
リカコ「せやからあんたら呼んだんやん」
あずさ「ほんまに浮気なん?」
リカコ「わからんけど、お父さん、やましいことあるとき、『あの、あの』て口ごもるやん」
あずさ「覚えてる。お父さんが『あの、あの』言うたび、お母さんが目ぇ吊り上げて、落とし前にエアコン買わせとった」
リカコ「あずさ、鬼みたいに言わんといて」
福三郎「(近づいて)うちのエアコン3台、そんな歴史があったん?」
健太郎「別居の理由、福三郎も聞いてないん? 親父と漁に出てるんやろ?」
福三郎「知らんわ。あのタコ、オカン泣かせやがって。離婚して慰謝料踏んだくったったれ!」
健太郎「エアコンは電気代食うで。夫婦別々に暮らしたら、光熱費も倍かかる。浜の家はサッサと壊して駐車場にでもしたらどうなん?」
リカコ「健太郎、それお父さんに言うたって」
あずさ「ちょう待って。相続が終わるまでは、お父さんには浜の家に住んどってもらわなあかん。そないせんと300万くらい損するねん」
一同「300万!」
あずさ「お父さんに不自由させるん悪いなぁて思っとったら、自分からあっちで一人暮らししたい言うてくれて、良かったわ。私にも手数料入るし」
福三郎「身内からも手数料取るん? 悪徳税理士」
あずさ「敏腕て言うてくれる?」
健太郎「そしたら、手続き済んだら浜の家引き払って、こっち戻って来てもらお。かあさん、駐車場、考えといて」
福三郎「いや、あの土地空くんやったら、わし、そこに新居建てるわ」
あずさ「さっきは慰謝料踏んだくったれ言うとったくせに」
健太郎「現金やなあ」
福三郎「それくらいさせてもろたかてええやろ。わしが漁師継いだんやから」
裕次郎「(ぽつり)お金で買えないもの、それが愛」
リカコ「裕ちゃん」
健太郎「裕次郎、やっと口きいたな」
裕次郎「ひとつ屋根の下でママを裏切れない。別居はパパの優しさなんだよ」
あずさ「やっぱり浮気なん?」
福三郎「裕兄、なんで東京弁なん?」
健太郎「ていうか、なんで俺ら通り越して、庭見てしゃべってるねん?」
裕次郎「咲き誇る命は美しい。ママもパパから自由になって、恋をしたらいいんだよ。今だって綺麗なんだから」
リカコ「裕ちゃん。そんな歯ぁ浮くようなことよう言うわ」
あずさ「そらダンサーやもん。バラくわえて踊ってるんやから」
福三郎「タコ踊りしてる漁師とは見てる世界がちゃうわ」
あずさ「健兄も見習ったら?」
健太郎「こんな浮かれたこと言う医者、不安になるやろ」
裕次郎「ママ、僕、好きな人がいます。おつき合いしてます」
リカコ「裕ちゃん、そうなん? どんな人?」
裕次郎「ママみたいな素敵な人。歳もママと同じだよ」
リカコ「はあっ?」
あずさ「ママと同い年て、何歳違い?」
裕次郎「人類が誕生して何万年の時の流れの中で、この星に居合わせた。それだけで奇跡だよね」
健太郎「せやから庭やなくて、こっち見ろや」
あずさ「なんで兄弟でこんな性格違うん? ひょっとして、裕次郎だけ、タネ違い?」
リカコ「はあ? あずさ、あんた何言い出すの!」
裕次郎「ママ、幸せになってね。僕だけ幸せになるわけには、いかないから」
リカコ「ちょっとこれ一人で抱えきれんわ。あれ? ヒデちゃん? ヒデちゃんどこ?」
福三郎「納屋から洗濯機の音してる」
一同「洗濯機?」
福三郎「タコがタコ洗っとる」

これまでのシーンのまとめ

全体の設計
入口=夫からの別居維持宣言 どういうこと?
出口=別居の理由はリカコのイビキ問題

シーン1   珍味な前菜(問題勃発)
リカコの義理の父の介護のために実家に住み込んでた夫・ヒデちゃん。義父を看取り、葬式も終わり、ようやくうちに戻って来ると思ったら、まさかの別居維持宣言。

シーン2   スパイシースープ(火に油)
別居の理由は何やろとリカコ悶々。おしゃべりなご近所さんのユカリに知られて、「長男の嫁35年目の反乱」と間違った情報が拡散。漁港を巻き込むスキャンダルに、の危機。

シーン3   混ぜるな危険メイン料理(炎上)
4人の子どもたちを招集して対策会議。「別居の理由は?」「浜の家どうする?」それぞれの思惑がぶつかり、さらに混乱。一人で抱えきれないリカコ。こんな大変なときに納屋にこもっているヒデちゃん。

シーン4 意外と美味しかったデザート(鎮火)
あの手この手でヒデちゃんを納屋から引っ張り出す。ようやく語られる別居の理由。なーんや、めでたし。


次回宿題 集大成でラストを書く!

納屋の洗濯機でタコを洗っている(現実逃避)ヒデちゃん。戸の外からリカコと4人の子どもたちが呼びかけ、戸を開けさせ、別居の理由が語られめでたし、まで。

✔︎戸を開ける=心を開く(ヒデちゃんなぜ逃げてる? 何を失うのが怖い?)

✔︎それぞれのキャラがどうやって呼びかける?(本音とウラハラ 駆け引き

✔︎溜めて溜めて溜めて、とどめの一手(リカコと4人の子の連携プレー)

✔︎戸を開けさせるのは言葉だけではない(ヒデちゃん空腹設定使えそう)

✔︎一気に初稿を書いて、読み返し、加筆したものを提出。(時間を置いて読み返す・声に出して読む・どんどん上書き・1500字以内)

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脚本家・今井雅子(Clubhouse朗読 #膝枕リレー)

目に留めていただき、ありがとうございます。わたしが物書きでいられるのは、面白がってくださる方々のおかげです。

ありがとうございます。スではじまりキで終わるステーキどうぞ。
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