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漁師のリカコさん脚本塾③「上げて落として引っ張る」

Clubhouseで出会った漁師のリカコさんに「書きぐすりを自分で処方できるようになる」書き方を教える脚本塾(noteをまとめたマガジンはこちら)。ラストまで続く一本道をイメージした第1回「入口と出口を作る」、シーンを料理の一皿に喩えて「面」をイメージした第2回「入口で引きつけて引きこむ」に続いて、第3回は「上下」に注目。

リカコさんの宿題 シーン2脚本

【ここまでのあらすじ】舅の介護で別居していた夫ヒデちゃんから、舅の葬式の後で「別居維持宣言」を言い渡され、ショックを受けるリカコ。

【今回はここから】場面はリカコの家。ヒデちゃんが別居したままなので今はリカコの一人暮らし。別居維持宣言に納得いかないリカコが誰かと電話している。

登場人物
リカコ(57) 

ユカリ(60)近所の漁師の妻
リカコ 「大体あの大きな家をひとりでどないすんねん。 洗濯と掃除機かけるだけでは済まんやん、網戸だって塩吹くし、 植木の水やりも結構大変やで。排水口の毛も、あ、それはまあないか。ハゲやから。ハハハッ、て笑っとる場合ちゃうねん。 うん、うん、うん、そやな。そら確かに。ええこともあるわ。 
テレビは見やすいな。コマーシャルの時、チャンネル次々変えられたら、ほんまごうあくもん。ぶちまわしたろかって思うわ。歯磨き粉も、真ん中でぐちゃっとされたらな、もうほんま嫌やもんな。」
ピンポーン。
リカコ 「あ、誰か来たわ。ごめん、またかける。はーい、開いてます」
ユカリ「リカちゃん」
リカコ 「ああ、ユカリちゃんどうしたん?」
ユカリ 「ヒデちゃんが、ヒデちゃんが布団パンパンしよったで」
リカコ 「えーっ」
ユカリ 「ほんで、そやからリカちゃんが家出したって、みんなゆうとる。」
リカコ 「みんなって誰やねん。」
ユカリ「しらんけど」
リカコ 「あーもう、また私が悪もん確定やん。大体、介護別居の理由だって、ユカリちゃん知らんやろ?私のワガママってことになってるやろ?」
ユカリ「まあ、みんなそうゆうてる。」
リカコ「そのみんなにゆうといて、私が同居せんかった理由は、オジンの色ボケです。私がおったら、彼女と会うのに都合が悪かったからやで!おまけにその女、おばあさんがまだ生きとる間からややこしかったんやから!」
ユカリ 「うへ~っ、ほんまかいな」
リカコ 「嘘ゆうてどうすんねん!その上ヒデちゃんも何でかしらんけど、うちに戻らんて言うし。やっと二人でゆっくり暮らせるって、ちょっと夢見とったのに、ダボが。勝手なんはおじんとヒデちゃんや。うん?血筋?ハ、もしかして、姑に似た嫁が来るっていうから、私もおばあさんと同じ運命?ヒデちゃん、女おるんかも。」
ユカリ「ヒデちゃんの浮気でリカちゃんがキレて別居してるんやな! 
わかった!みんなにゆうてくる!」
リカコ 「ちょっとちゃうけど、まあそうなんかも?  え~っ? そらあかんわ。子供らに連絡や、ゴノヨン会議や。」

今回のテーマ「上下」

✔︎上下を意識して起伏を作る!
感情の上下(喜怒哀楽)
テンションの高低

✔︎人物の上下を掛け合わせて化学変化を起こす
落としたい相手(犯人 高嶺の花)
ステータス(財産 学歴 役職 身分)
情報量の多い少ない(秘密を握っている)

✔︎ドラマの高揚感

✔︎入口と出口の落差

「上下」に注目して一行一行をチェック

❓リカコの感情は? 
抱えている問題の程度は?
電話しているリカコはまだ悶々としているのでは?

❓後から来るユカリのテンションは? 
掛け合わせるとどうなる?(落差をハッキリつける)
ユカリは何しに来た?(目的をハッキリ作る)

上下のメリハリをつける提案

「入口:夫婦間の危機(別居どないしよ)→出口:夫婦まとめて危機(漁港のスキャンダルや!)」をくっきりさせる。

火に油を注ぐ存在として、ユカリに活躍させる。
○野次馬根性と噂拡散力を増強。話を聞かない。一を聞いて十を語る。
○リカコを訪ねる口実を作る(お祝いの花)

テンション低いリカコ(別居宣言に納得いかず悶々)❌テンション高いユカリ(根掘り葉掘り聞く気まんまん)

ユカリの憶測の火消しで活気づくリカコ。話を聞かないユカリが話をさらにややこしくし、「ヒデちゃんの浮気で熟年離婚秒読みや!」。漁港のスキャンダルの危機!

「子どもたちに相談や!」の切迫感がアップ

ポイントを踏まえて今井加筆バージョン

リカコ 「(電話の相手に)私、何かしたかなあ。お葬式のとき? いや、いつもと変わらんかったで。棺に水着の写真集入れたん、やり過ぎやったかなぁ。けど、そんなん、別居の理由になる?」

ピンポーン。

リカコ 「あ、誰か来たわ。ごめん、またかける」
ユカリ 「(近づいて)リカちゃーん、おめでとう!」
リカコ 「ユカリちゃん。何このお花?」
ユカリ「ついにやったなー。長男の嫁35年目の反乱! お目付役のお父さんが亡くなって、ようやくリカちゃんの天下や!」
リカコ 「は? 何それ?」
ユカリ「ヒデちゃん、あっちの家で布団パンパンしよったで。港に響き渡る一人暮らしのせんべい布団のうっすい音。哀愁やわあ。お灸、効いてるで」
リカコ「お灸て。なんでそんな話になってるん?」
ユカリ「みんな言うとる。お父さんの介護が終わったのに、リカちゃんが家に入れてくれへん。かわいそうにて」
リカコ「なんでいっつも私が悪もんなん? 逆や。ヒデちゃんが言うてきたんや。なんか知らんけど、別々のままがええんやて。大体、介護別居の理由かて、あの嫁のワガママや、いうことになってるやろ?」
ユカリ「うん。みんな言うとる」
リカコ 「みんなに言うといて。私が同居せんかった理由は、オジンの色ボケです。私がおったら、いちいちどこ行くんて聞くから、カノジョと会うのに邪魔やったんやて」
ユカリ「カノジョ?」
リカコ「姑さんがまだ生きとる間からゴチャゴチャしてたミナミの女。女で嫁泣かせるんはこの家の血筋や。(ハッ)血筋! (ぽつり)ひょっとして、女?」
ユカリ「どの女? いつの女?」
リカコ「新顔かも知らん。しばらく浮いた話なかったけど、寝たきりになっても、アソコだけは起きとったあのお義父さんの子ぉやからな」
ユカリ「別居の原因はヒデちゃんの浮気かぁ」
リカコ「そうなんかも」
ユカリ「何遍も泣かされてきたけど、全部水に流して、夫婦で手を取り合って穏やかに暮らそと思った矢先に、また女作りやがって! ええ加減にせぇ! 積年の恨み辛みがバクハツ! タコが墨吐くリカコが毒吐く! 二度とこの家の敷居またぐな!」
リカコ「なんで私が悪者になるん? 逆やん! うちに戻りたない言うてるんはヒデちゃんやで」
ユカリ「(聞いてない)熟年離婚秒読みや! (去りながら)はよみんなに知らせんと!」
リカコ 「ちょー待って! あかん。光ファイバーより早いユカリネットワーク。エライコッチャ。子供らに連絡や!」

宿題 4人の子を書き分ける

次のシーンは「子どもたちを招集して緊急家族会議」。4人の子のキャラクター(性格)と両親の別居騒動についてそれぞれが言いそうなセリフを書く。


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