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ひとり親が住む築古マンションの気になるお金のこと

私の実家のマンション(川崎市)には、現在母が一人で暮らしている。父が亡くなってから5年が過ぎた。今年80歳なる母は、利便性の良いマンションで元気に生活している。

実家のマンションは、私が高校2年の時に両親が購入したものだ。新築で入居し、現在の築年数は38年になる。1982年築になるのかな?新耐震になったばかりの年代とはいえ、古いタイプのマンションである。管理組合はしっかりしていて、これまで3回の大規模修繕が完了している。

マンション住まいで気になるお金のこととして、まずは管理費や修繕積立金について先日母に聞いてみた。入居当初より、大規模修繕が終わるごとに値上がりして、現在は入居当初より管理費込で2.5倍となっている。

遺族年金で暮らしている母にとって、管理費と修繕積立金という固定費の上昇は蓄えがあるとはいえ、気になるところだ。年金が少なく貯蓄を取り崩している方への影響は少なくないと思われる。

もっと気になることは、マンションの建て替えだ。

管理や修繕が行き届いたマンションは最長どれくらい住めるのだろう?

実家マンションは後12年で節目となる築50年となるが、今の母の元気な姿を見ていると12年後も実家マンションに住んでいそうな気がする。

管理組合がしっかりしているマンションなので、「次の大規模修繕以降、建て替えも視野に話し合う」というような議事録が上がってきているようだ。母のような新築当初からの入居者よりも、若い世代の入居者が多く、入れ替わりがうまくいっているマンションだ。管理修繕が行き届けば、2~3世代先も住み続けられる…という記録を作ってほしいというのは密かな願望だ。

経年劣化による建て替えは「計画的」にすすめることができるが、ひとたび災害が起こるとそうはいってられなくなる。

母も古いタイプのマンションということでその辺は不安なようだ。「地震で建物の損傷が激しく建て替えになったら、どうする?」と聞いてみると「もう住まないわよ~、どこかに移り住むわ~」という回答が。

実家は弟家族が引き継ぐ予定となっているが、まずは母の生活場所は大切だ。とはいえ住み続けるにしても、売却して移り住むにしても、お金はかかる。災害は待ってくれない。

FPとしては遺族年金で一人暮らしの親という属性において、災害時のマンション特有のリスクを考慮した資金想定をしなければならないのでは?という想いに駆られてまずはいろいろ調べてみた。

災害時のマンションリスクについて考えてみたが、直近では昨年の台風での浸水が記憶に新しい。武蔵小杉のタワマンはその後どうなったのだろう。

被害にあったタワマンの公式HPには管理組合や理事会の情報などが掲載されるようだが、台風による被害のその後の情報は記載されていなかった。その他では、今年2月の週刊誌系の記事が私の検索した中では新しい情報だった。

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タイトルは過激な感じだが、状況はどうなっているか知りたいということだけで見ると、復旧はまだできていないようだ。地下にあった駐車場は使えず車所有者は外に駐車場を借り、費用も今のところ個人持ち。復旧費用がどのくらいかかり誰が負担するか、保険の補償はあるのかなどもまだ定まってないようだ。2008年築で大規模修繕直前での被災で、大規模修繕もとん挫している模様。住民にとっては深刻な事態だろう。

タワマンの浸水は建物自体に大きな損傷はないので生活はしていけるが、損傷個所の復旧や費用負担の解決に時間がかかりそうだ。自分の家なのに先行きが見えない不安な日々は精神的に良くない。

同じ災害でも地震による建物の損傷はもっと深刻な事態となる。熊本地震のその後を調べてみた。

熊本市による資料を見ると、地震による建物損傷の90%は修繕で復旧したようだ。建て替え、建物取り壊し後の土地売却に至るケースもあった。住民の協力が素晴らしく、スピード決議で進められた建て替え事例では、今年の夏ごろ建物完成予定という。

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様々な資料を読み解くと、建て替えにしても、土地売却にしても、修繕にしても、うまくいくキモは住民の協力を取り付ける管理組合の力である。被災マンション法では、住民の4/5の賛成によりはじめて物事が進められる。災害により被災すると避難先がバラバラとなり、住人との連絡がつきにくく、復旧の話し合いにまでになかなか至らないという。

熊本地震の際は、建て替えや土地売却のための解体費用が公費から出ることになっていたが、公費拠出の要件は、「住民全員の賛成」。こちらもなかなか物事を進められない要因となったようだ。

また、マンションの住人の年齢幅が大きい、管理費滞納者がいることなども合意を得られない要因のようだ。これは、災害に関わらず経年劣化による建て替えや大規模修繕の資金不足による臨時支出などでも懸念される点である。

前述の建て替え事例の情報を見ると、新たに負担する費用は1,000万円~2,000万円と記されている。費用だけでなく住民の決議に時間がかかる、新しい住まいができるまでに数年かかる。それまでの仮住まい、引っ越しの負担などを考えると、母が言うように、地震で建物が壊れたら高齢者はもうそこには住めないという気持ちになるだろう。

マンションリスクの度合いは、管理組合の組織力によって変わってくるということが分かった。

次に、母のマンションが壊れたらもうそこには住まない発言に従い、別のところに移り住むには、どのような選択肢が考えられるのだろう。

1.子供のと同居
2.賃貸:仮設住宅・賃貸住宅・高齢者専用賃貸住宅など
3.有料老人ホーム入居
4.マンション購入:高齢者専用マンション、一般マンションなど

経済面では、年金と蓄えで判断することになる。被災したことによる国や自治体からもらえるお金や、マンションの売却代金、保険金等は考慮しない。それらのお金は、災害による生活再建に使うお金という扱いとしたい。シミュレーションするには、「どこに(何に)住むのか」と「期間」をざっくり決めることだ。

実際は心身の状態を考慮して親の意思を尊重することになるのだが…

我が家の場合、経済面だけで見ると、引き継ぐはずだった弟には泣いてもらい1~3のどれかであれば改めてシミュレーションしなくでも大丈夫だ。

というのも、5年前に父が亡くなった後、遺族年金の額が確定したのを機に2次相続に備えて(父の財産は全部は母へ相続したため)母のライフプランを立てているからだ。介護状態となり少し高めの有料老人ホームでの生活を想定して95歳までのキャッシュフローを作り、金融資産が足りることを確認している。

一番お金のかかるプランを作りお金が足りてれば、様々なお金の使い方ができるという考え方だ。後期高齢者、遺族年金受給者は、収入が一定で、イベントも大きなものはないので、介護をどう見積もるかが重要になる。上記選択肢では、1<2<3とお金がかかることになる。

すでに5年が経過しているが、貯蓄の取り崩しがほとんどない今のマンションでの自立した暮らしが、長くなるほど余裕が出ることになる。昨年は「飛鳥Ⅱ」の船旅(国内)を初体験して喜んでいた。

このライフプランには、マンションの最大リスクであるの建て替えを加味していないが、1~3を選べば事足りることがわかった。

では母の意思として1~3は本当に+OKなのか?

同居に関して私は、母を引き取る気満々で常にいるのだが、同じ首都圏に住んでいる関係上、地震の際には私の家も損傷を受ける可能性がある。落ち着くまでは不安だから一緒にというのもあるだろうが基本的には、一緒住む気はない。これはその時の状況によって判断が異なるだろう。弟家族の住居は同居できるスペースがない。

2と3では、仮に地震被害のなかった地域で新たな住まいを構えることに関しては、特に抵抗がないと思われる。というのは、父が転勤族で、住まいを転々としてもそれを楽しみに思うタイプだったからだ。今もそうであるかはわからないが…。また、有料老人ホームに入ることは、抵抗がないとすでに確認済み。元気であれば一旦賃貸生活をして介護度が重くなったら施設ということもあるだろう。

4に関しては、経済面でNGであるため選択肢としてはない。弟家族が引き継ぐ想定で資金援助することは可能性としては0。

最後に、今のマンションが建て替えとなった場合、建て替えの話が進む中で母に引き続き住みたいという想いが湧いてくることはあるのだろうか。あるとしたら、弟に家を遺したいという想いが強いかどうかだろう。現在80歳という年齢から現実問題を考えると、いつどうなるかはわからない年齢である。調査した事例から考えると、建て替え決議、取り壊し、建築と数年を経るわけである。住宅金融支援機構の災害復興住宅融資などを活用すると、経済面でクリアになるかもしれないが優先度は低いだろう。

マンションに1人で住んでいる高齢の親への、災害時の想定していなかったことがが心配になり、調べたことを基に色々考えてみたが、
・現時点で将来のライフプランがある程度できていること
・親と普段からコミュニケーションをとり、意思を時々確認していること
により、そんなに心配ではなかったことに落ち着いた。

ただ、災害時のマンション損傷による復旧は、「住民の話し合い」による決議が大前提。東日本大震災や熊本地震のその後を調べていると、専門家が入ったとしても管理組合の疲弊が顕著に読み取れた。いかに粘り強く取り組むかにかかっている。管理組合の組織力があるなしによって、マンション特有のリスクつながることは充分認識した。

今回は、高齢の一人暮らしの母を題材にしたが、マンションにはあらゆる世代が住んでいる。各属性によって選択肢や見積もる費用も変わってくるだろう。

我が家は災害のためにライフプランを立てていたわけではないが、ライフプランがあると、状況が変わることへの想定も早くできるということも分かった。「ライフプランをいつも手元に」は重要だということも再認識した。








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