リリとロロ 「羽化」 ①
正木諧のロロ
放たれた空砲が鼓膜を痺れさせるような感覚。
サナギが音を立てて羽化するように、それは徐々に、そして突然に訪れた、脳を掻くような高く乾いた振動だった。
まだ朝靄の滲む空にぬるく溶けるように眠りにつく、自堕落な生活に身を委ねていた。
ただ生活を死なないために続け、時折来る痙攣に怯えながら社会的に放棄された自分を遠くから見つめる。
「ここから飛び降りれば」
「この紐で気管を塞げば」
友人が試した世界と一つになる方法が、幾度となく頭の中を巡る。
ただ、どれも芸術性がなく、悔しい。
無駄な思考。
無駄な思想。
生まれ変わるなら、魚。
生まれ変わるなら、花。
生まれ変わるなら、風。
生まれ変わるなら、「女性になってみたい」。
綿の名を掲げる三人に楽曲を提供したときは、そこまで深く考えていただろうか。
「もし女性だったら、たった今受け取った言葉は違うものだったかもしれない」
「もし女性だったら、たった今受けた対応は違ったかもしれない」
ただそう思う程度だった。
ただ女性に歌ってもらうために贈る作品といった程度の認識だった。
僕はまだ、僕を追い込み切れていない。
自分の甘さを知った。
これが一つの起点となった。
正木諧 「羽化」
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