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日記/ しかたなく芋けんぴを

あさ、好天。やがて荒天。ところで、ノースカラーズという、当地の製菓店の芋けんぴは、これはうまい。この恋慕、ステロイダーとしては、あまり望ましくない。いけない恋を経験した人には、必ずわかる心境だ。ていよく忘れるすべはない。力業ちからわざのみ。メアド、LINE、住所、所属、これらを、記録と記憶から抹消する。すきまの時間は、徒らにうめる。後ろめたさは度外視する、なんでも利用する、濫用する。これらすべてを実行すれば、やがて、いけなくない恋が待ちうけている、かどうかは未知だ。ただ、あなたは美しくなる。強くなる。魅力を具える。本日、コンビ(妻と娘)で発熱した。看病用品を補充しに、最寄りの COOP にゆく。経口補水ゼリー、冷凍うどん、卵、服薬用のアイス、あと、ノースカラーズの芋けんぴを、みっつ。なにしろ、コメ油のみ使用、甜菜てんさい糖のみ使用、とにかく、身体にとてもよいのだ。娘も妻も、汗をかいて、すこし甘いものを欲する夜半すぎなど、どうぞご自由に召し上がったらよい。実にこまやかな心づかい。マイバッグに入れる段で、案の定、茫然とするわけだ。また、やってしまった。己の忍耐の弱さ、煩悩のしぶとさ、これはいまにはじまったことではない。忍耐の欠如は、集中と瞬発で補完してきた。煩悩こそ、わたしの隠れた、アウトローな魅力だ、と自賛してきた。ひとは変化を欲するかぎり、きっとどこかで変われる、そして、それはいまではない・・・・。なぜなら、別に、このままでも、特にさしつかえはないからだ。芋けんぴくらい。カロリーと糖質と脂質さえ見なければ、健康食品と言って過言ではない。いま、ひと袋の半分を、無我のうちにむさぼった。薬をのむため、しかたなく胃に入れときました、みたいな顔をしているのである。鏡を見ずとも、それくらいわかる。一日にとっての日記とは、世界にとっての史実だ。まさか、芋けんぴのみが、わたしの一日だったはずはない。しかし、もし仮に、わたしが後世、ひょんなことで語り継がれれば、榊は、餅と芋けんぴの人である。あの榊が言うならば、と、餅は国民食となり、芋けんぴは代表的なおやつに復権する。もちろん、そこまでは見越しているし、こんなろくでもないことを見越すひとが、語り継がれることは、けっして・・・・ない。好物のタフグミをいくら食べても、よみがえるものはない。芋けんぴはこう見えて、存外、たくさんの思い出を運んでくるものだ。など、これはこれは、格好の弁明をみつけた。

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