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短編小説とエッセイ

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短編小説もどき(断片小説)と日記とエッセイを不定期で書いています。 『だれかが見つけていても、じぶんのことばで』
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#断片小説

線路は続くが終電がない#1

電車が目の前で発車する。目的地と出発地を間違えて検索していたらしい。 主役になれなかった…

まさき
1年前

500wで2分半

ラベルに書いてある指定の温め時間を確認する。 コンビニのレジ裏のレンジは1500wで自宅より早…

まさき
1年前
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お席2時間制

「当店お席2時間制ですが、よろしいでしょうか」 俺は頷いて席についた。 一人寂しく呑んで適…

まさき
1年前
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大縄跳び

「元気になりたい人、おはいんなさい」 給食のおばさんたちが縄の両端を大きく回している。双…

まさき
1年前

ボーディング・ブリッジ

新幹線の駅に降り立つ。終電が迫っている時間ではないが、概ね店舗は閉まっている。 あとはど…

まさき
2年前

Ctrl X

寮の駐車場に車を停める。ドアを開けて外に出る。最近めっきり寒くなった。 西側の空は日が沈…

まさき
2年前

花も幹もなく根だけが

食べるよりめんどくさいが勝るときないでしょうか? 時間は溶けるように早く過ぎていくのに、お腹はなかなか空いてこない。 「3食食べて、運動して、早めに寝ましょう」 みたいな、健康法は当然知っている。 自分でも食べられるものを食べようと思うのだが、気がついたら昼食に適した時間を超えている。朝は寝過ごして食べてない。みたいなことが起こる。 お腹が空いていたり、食事が美味しくて得られる幸せよりも、このままゴロゴロしていたいという気持ちが勝ってしまう。 自分が植物になったみたいだ。

レジャーシート

ひとりでいることは平気なはずなのに、涙が出そうになった。 保育園に通い初めの頃、みんなが…

まさき
2年前
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キムチの香り

朝から食欲がない。でも、薬を飲むために何か胃にいれなくてはいけない。 あんなに苦労して、…

まさき
2年前

一進一退のサイン

台風が来るのをじっと待っている。 「時間切れになるのをじっと待っている」 それは今に始まっ…

まさき
2年前

壁としての肉体

酔っ払ったこの人は、いま話すべきことではなくて、聞いてほしいことを話しているだけだった。…

まさき
2年前
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会いたい人

「明日よろしくお願いします!楽しみにしてます!」 スーツ姿の男性のアイコンから予定のリマ…

まさき
2年前

何かへの抵抗

「茉子、最近何しているの?」 大学の食堂で向かいに座る有紗から、気軽に近況を聞かれただけ…

まさき
2年前

咬ませ犬と夜桜

仕事が早めに終わる。入社してはじめてのフレックス。「お先に失礼します」と言って、逃げるようにオフィスを後にする。 外に出ると西の空に高々と日が残っていた。 「今日何でもできるじゃん」 と心躍らせて帰路に着いたのだが、なぜだか気になっていたカフェにも寄れず、デパートの化粧品とか洋服とか見ようかと思っても素通りし、映画を調べる気にもならず、気がつけば家でダラダラして、いつもの食事の時間になった。 疲れているのかもしれない。 去年入社した地元の食品会社。春の気配から、新入社員