shift innovation #22 (HITACHI hack 1)
今回、日立ソリューションズが主催するオンラインワークショップに参加しました。
ワークショップのテーマは「ITによる未来都市モデル(2025年)のアイデア創出」となり、約1ヶ月間にわたり、「ideagram」というオンライ発想ツールを活用し、個人において、新たなアイデアを発想、評価するというワークショップとなります。
そして、最終のオンラインワークショップにおいては、参加者(個人)が発想したアイデアのうち一つを選定した上で、チームでバリュー・プロポジション・キャンバスを作成し、アイデアを具体化させる中で、実現可能性を高めことにより、事業化を検討するというワークショップとなります。
今回のshift innovation (HITACHI hack )では、ワークショップにおいて創出したアイデアの事例について、3回にわたり説明することとします。
HITACHI hack 1においては、「『ideagram』における課題発見フェーズの必要性」について説明することとします。
HITACHI hack 2においては、「『ideagram』における意外性のあるアイデア創出のためのフレームの必要性」について説明することとします。
HITACHI hack 3においては、「『shift innovation』の方法論に基づくアイデア創出」について説明することとします。
【「ideagram」とは】
「ideagram」とは、デザイン思考に基づき、利用者のニーズ理解からスタートし、「どういう人がどういう状況で困っているのか」を検討する上で、強制発想により自分だけでは思いつかない選択肢(状況)の組み合わせをすることによって、新たなアイデアを創出するというものです。
具体的には、システムがランダムに抽出したWho(誰が)・Where(どこで)・When(いつ)のキーワードを活用し、シチュエーションをイメージした上で、Who(誰が)におけるニーズ(Why)を検討します。
次に、システムがランダムに抽出したWhat(何を)のキーワードを活用することにより、検討をしたニーズ(Why)を実現させる新たなアイデア(How)を創出するというものです。
事例として、(Who)「子育てママ」・(Where)「お風呂」・(When)「ダイエット中」というキーワードを活用し、(Why)「子供を産んで太ってしまった。子供がいるのでジムに行く時間がないが、子供と一緒に痩せたい」というニーズに基づき、(What)「車」というキーワードを活用することによって、(How)「ペダル付きの浴槽を開発する。二人乗りで目の前には画面があり、漕ぐと動画が流れ、子供は見ていて飽きない。自分は湯船の熱気と水圧でダイエットできる」というアイデアが紹介されていました。
【新たに創出したアイデアの比較】
「ideagram」はランダムに抽出されたキーワードに基づき、強制発想できるという仕組みにおいて、アイデアを創出する上で、有効性の高いツールであると考えられます。
一方で、アイデアの中でも意外性のあるアイデアを創出しようとした場合、クリエイティブな閃きができる人であれば、意外性のあるアイデアを瞬時に発想できると思われます。
しかし、「ideagarm」を活用することにより、アイデア創出のトレーニングをしようとする人においては、意外性のあるアイデアを瞬時に発想することは困難であると想定されますので、意外性のあるアイデアを創出するための一定のプロセス(フレーム)を経る必要があるのではないかと、「ideagram」を利用する中で感じました。
そこで、shift innovation (HITACHI hack 1〜3 )を通して、「ideagarm」をそのまま利用しアイデアを創出した場合、「ideagarm」をアレンジしアイデアを創出した場合、「ideagarm」を利用せずアイデアを創出した場合に関して比較することとします。
【同じキーワードにより創出した新たなアイデアの比較】
新たなアイデアを創出する上で、「ideagram」の仕様に基づき、Who・Where・Whenをそのまま活用した場合と、Who・Where・Whenに対してフレームを活用した場合に関して、創出した新たなアイデアの内容を比較することとします。
比較する事例におけるWho・Where・When・Whatは、(Who)「身だしなみに拘りたい人」・(Where)「会議室」・(When)「食事中」・(What)「デジタルサイネージ」となります。
Who・Where・Whenをそのまま活用した場合
Who・Where・Whenに対してフレームを活用した場合
【同じキーワードにより創出した新たなアイデアの解説】
はじめに、Who・Where・Whenをそのまま活用した事例である「どこでも雰囲気ほんまもんサービス」の場合、ニーズ(Why)である「会議室であっても、高級な料理などをケータリングし、正装で食事をしたい」に対して、創出したアイデア(How)は「フランス料理を食べたいとき、高級レストラン風の内装・机・椅子など、プロジェクションマッピングにより会議室に映し出し、フランス料理をケータリングできるサービス」となります。
このアイデアは、ニーズ(Why)に対してそのまま発想をしたアイデアとなりますので、恐らく誰もが思いつくことができるアイデアではないかと考えられます。
この思考プロセスとしては、「身だしなみに拘りたい人」から「正装」を想起すると共に「食事中」と「正装」から、フランス料理などの「高級レストラン」想起したことによって、「会議室」から「高級レストラン」へコンテクストがリフレームしました。
また、「会議室」を「高級レストラン」のような内装にすることによって、よりリアルに食事をすることができるよう、「プロジェクションマッピング」を想起しました。
そして、「プロジェクションマッピング」により背景を変えるだけではなく、実際に会議室で食事ができるよう、「ケータリング」を類推することによって、「フランス料理を食べたいとき、高級レストラン風の内装・机・椅子など、プロジェクションマッピングにより会議室に映し出し、フランス料理をケータリングできるサービス」というアイデアとなりました。
※Who・Where・Whenに対してフレームを活用した事例である「いつでもどこでもプロジェクションマッピングアプリ」のプロセスに関しては、HITACHI hack 2において説明することとします。
【課題発見フェーズと課題解決フェーズ】
アイデアを創出するためのフェーズとして、課題発見フェーズと課題解決フェーズがありますが、「ideagram」を活用し創出したアイデアを比較する中で感じたこととして、意外性のあるアイデアを創出する上で、課題発見フェーズが重要であるものの、「ideagram」に関しては、課題発見フェーズの一部を実施できるものであり、課題発見フェーズと課題解決フェーズを一気通貫に実施できるものではないと感じました。
創出したアイデアである「どこでも雰囲気ほんまもんサービス」の場合、「ideagram」がランダムに抽出したキーワードである(Who)「身だしなみに拘りたい人」・(Where)「会議室」・(When)「食事中」・(What)「デジタルサイネージ」に基づき、「フランス料理を食べたいとき、高級レストラン風の内装・机・椅子など、プロジェクションマッピングにより会議室に映し出し、フランス料理をケータリングできるサービス」というアイデアを創出しました。
本来であれば、アイデアを創出する上で、「ideagram」の利用者自らが、観察等により情報収集をし、利用シーンをイメージすることによって、ニーズはもとより不便益を発見することが重要なこととなります。
例えば、「ideagram」の利用者が、キーワードがない状態において、会議室を利用しようとする方の利用シーンをイメージした上で、ニーズを発見することができる仕組みであれば、「ideagram」は、課題発見から課題解決を一気通貫に実施できるなど、アイデアを創出することができるトレーニングツールとして活用することができると考えられます。
しかし、「ideagram」はランダムに抽出したキーワードに基づき、利用シーンをイメージすることができるなど、ニーズを発見するためのヒントが多分にありますので、「ideagram」の利用者自らが、課題発見から課題解決を一気通貫に実施できるものではありません。
これらのことから、「ideagram」は、抽出されたキーワード、つまりは、提示された課題に基づき、その課題を解決することができるトレーニングツールとしては有効性が高いものと考えられますが、課題自体を利用者自ら発見することができるトレーニングツールとしては有効性が低いものではないかと考えられます。
なお、「ideagram」は、強制発想により自分だけでは思いつかない選択肢(状況)の組み合わせをすることによって、新たなアイデアを創出するというものではありますが、意外性のあるアイデアを創出する上で、この課題発見フェーズが一番重要なフェーズであり、また、システムによりランダムに抽出されたキーワードを一つの利用シーンに収束させようとすると、意外性が失われるように感じました。
【まとめ】
現在、不確実性が高い環境において、今見えている課題を解決することではなく、今見えていない課題を発見し解決することが必要であると言われている中で、「ideagram」において、新たなアイデアを創出できる人材の創造性を育成できるトレーニングツールとするのであれば、課題発見フェーズから課題解決フェーズまで一気通貫に実施できるようにするなど、「ideagram」のコンテンツに関して、改良の余地があるのではないかと感じました。
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