shift innovation #16 (UNIVERSITY of CREATIVITY hack 1)
今回は、株式会社博報堂による未来想像の技術としてのクリエイティビティ(創造性)を研究・開発し、社会実験していく研究機関である「UNIVERSITY of CREATIVITY」に参加(2022年3月〜2022年6月)しました。
UNIVERSITY of CREATIVITYには、14のゼミがあり、その中で、私が参加した「創造性特区ゼミ」とは、自治体と連携し、地域の「創造性」をさらに進展させていくために必要な要素や条件を調査・研究する取り組みにより「創造性マネジメント」を研究するゼミとなります。
はじめに、「創造性」とは、「これまでになかった新しいモノやコトを生み出すチカラ」と、より広い概念で捉えることとします。
また、「創造性マネジメント」とは、「創造性」を個人の資質や自己研鑽だけに頼らず、組織・社会の仕組みなどの調整を通じて「創造性」増進をサポートする手法となります。
そして、「創造性特区」とは、全てのステークホルダーが自在に「創造性」を発揮できるルールや仕組みが「創造性マネジメント」として実装された地域社会をいいます。
【「創造性特区」における課題設定】
「創造性特区ゼミ」は、第1期(「クリエイティブ産業ゼミ」)の後継ゼミにあたり、第2期である「創造性特区ゼミ」においては、第1期ゼミにおいて作成した「創造性マネジメント」のプロトタイプ(仮説)に基づき、実際に自治体が実施している施策の内容をはじめ、その運用方法や評価方法などに対して、改善・改革案を提言する取り組みとなります。
第2期では、特定の自治体が実施している「市民が主役のまちづくり事業支援制度(以下、「事業支援制度」)」に関して、改善・改革案を提言するものであり、「事業支援制度」とは、市民活動団体による地域活性化や特色あるまちづくりに寄与する取り組みに対して、市が補助金交付などの支援を行う制度となります。
「創造性特区ゼミ」においては、「事業支援制度」を活用する市民活動団体やこれらの活動に参加する市民が、創造性を発揮することによって、その目的がより効率的・効果的に達成することができる改善・改革案を提言することとします。
そして、私個人においては、改善・改革案を導出した際に発揮したと想定される創造性に基づき、既存の「創造性マネジメント」仮説をブラッシュアップすることとします。
それでは、hack1から4回にわたり、既存の「創造性マネジメント」仮説をブラッシュアップする上で、「これまでになかった新しいモノやコトを生み出す」ための「リフレームに関する方法論」における「フレームワーク」や「思考プロセス」を踏まえ、新たな「創造性マネジメント」仮説を抽出することとします。
hack 1では、「リフレームに関する方法論(「シフト・イノベーション」)」、hack 2「全体構想におけるビジョン・コンセプト・アイデア(構想フェーズ)」、 hack 3「個別発想とリフレームに関する方法論との関係性(発想フェーズ)」、 hack 4「新たな『創造性マネジメント』仮説の抽出」となります。
hack1は、既存の「創造性マネジメント」仮説を紹介した上で、リフレームに関する方法論について説明することとします。
【既存の「創造性マネジメント」仮説】
はじめに、既存の「創造性マネジメント」仮説とは、「発想フェーズ」「構想フェーズ」「実装フェーズ」「還走フェーズ」の4フェーズの順位により区分され、各フェーズにおける目的を達成するためのコンビテンシーを提示しています。
「創造性マネジメント」仮説
(発想フェーズ)
(構想フェーズ)
(実装フェーズ)
(還走フェーズ)
【リフレームに関する方法論(「シフト・イノベーション」)】
「創造性特区ゼミ」における課題に関して、自治体の事業支援制度に関わる課題解決をした際、実際に思考したプロセスに基づき、既存の「創造性マネジメント」仮説の各フェーズに関する区分を整理すると共に新たなコンピテンシーを提示することとします。
hack1では、既存の「創造性マネジメント」仮説の各フェーズに関する区分を整理すると共に新たなコンピテンシーを提示する上で、特に、発想フェーズにおいて、これまでにはないモノやコトを生み出すためのコンピテンシーを抽出する上で必要となると考える「リフレームに関する方法論」について説明することとします。
例えば、クリエィティブな人ではない一般の人が、課題を捉えた瞬間にひらめいたという場合、そのようにひらめいたアイデアは、自身が保有する情報、つまりは、固定観念に基づく情報の範囲において、ひらめいたアイデアとなると想定されることから、常識の範囲におけるアイデアとなり、これまでにはないモノやコトを生み出すことができる可能性は低いのではないかと考えます(※)。
そこで、これまでにはないモノやコトを生み出すためには、これまでとは異なる視点により、これまでとは異なる領域を探索することによって、常識の範囲を超えたアイデアを導出することができるのではないかと考えます。
(※)「リフレームに関する方法論」が習慣化している(癖になっている)人において、課題を捉えた瞬間に「ひらめき」がある場合、これらの思考プロセスを潜在的(無意識)に経ている可能性があるものと推察されます。
方法論における「フレームワーク」「思考プロセス」
それでは、これまでにはないモノやコトを生み出す上で、これまでとは異なる視点により、これまでとは異なる領域を探索するためには、思考するための一定のプロセスが必要であり、その方法論(「リフレームに関する方法論」)として、「転移」「反転」「類推」「収束」「統合」というフェーズを経る「フレームワーク」があります。
また、「転移」「反転」「類推」「収束」「統合」というフェーズを経るためには、「解決困難なコンセプトの設定」→「究極的状況の想起」→「固定観念の抽出(「転移」)」→「本質探求質問の発信」→「固定観念の排除(「反転」)」→「反転事例の適用(「類推」)」→「適用事例の構造化(「類推」)」→「関連事象への収束(「収束))」→「新機能の適用(「統合」)」→「新アイデアの導出」という「思考プロセス」を経る必要があります。
方法論における「脳科学的側面」
そこで、リフレームに関する方法論(「フレームワーク」「思考プロセス」)に関しては、思考の癖(方法)によるものという側面があることにあわせ、思考プロセスのフェーズの順位などの違いが生じることがあるものの、脳科学的側面より、脳機能におけるトップダウン処理は、「無関係と認知された事象は無視される」、「恒常性を求める」、「恒常的な特徴を抽象化する」、「特定の事象と過去に生じた事象を比較する」という原理に基づき実行されます。
そして、これらの原理に基づき、これまでにはないものやコトを生み出すためには、これらの脳機能を活用すると共に排除することによって、意識的に思考を続けると共に一定の思考をするためのプロセスを経る必要があると考えます。
例えば、脳機能におけるトップダウン処理における「無関係と認知された事象は無視される」「恒常性を求める」に関しては、リフレームに関する方法論における「解決困難なコンセプトの設定」→「究極的状況の想起」→「固定観念の抽出(「転移」)」→「本質探求質問の発信」→「固定観念の排除(「反転」)」というプロセスを経るこことによって、固定観念に基づく思考を排除することができます。
また、脳機能におけるトップダウン処理における「恒常的な特徴を抽象化する」「特定の事象と過去に生じた事象を比較する」に関しては、リフレームに関する方法論における「反転事例の適用(「類推」)」→「適用事例の構造化(「類推」)」→「関連事象への収束(「収束))」→「新機能の適用(「統合」)」というプロセスを経ることによって、新たに抽出した特定の事象を活用することができます。
方法論における「認知心理学的側面」
また、認知心理学的側面より、「ひらめき」を導くための思考プロセスを説明する「洞察問題解決研究」があり、解の存在しない不適切な問題空間を繰り返し探索することによる「インバスの発生」、インパスの固着から離れる「心的制約の緩和」、誤った問題空間の探索から、解が存在する「問題空間の切り替え」、現在直面している問題の状況と、過去に既に解決に成功した問題の状況との類似関係を推論する「類推の利用」というフェーズに区分することができます。
例えば、はじめに、「インパスの発生」に関して、「解決困難なコンセプトの設定」→「究極的状況の想起」のフェーズを経ることによって、インパスが発生します。
次に、「心的制約の緩和」に関して、究極的な状況に対して思考を続けることにより、「固定観念の抽出(「転移」)」のフェーズを経ることによって、心的制約が緩和します。
そして、「問題空間の切り替え」に関して、抽出した固定観念に対して批判的になることにより、「本質的探求質問の発信」→「固定観念の排除(「反転」)」のフェーズを経ることによって、問題空間が切り替えられます。
また、「類推の利用」に関して、排除された固定観念に対して妄想することにより、「反転事例の適用」→「適用事例の構造化(「類推」)」のフェーズを経ることによって、類推を利用します。
【まとめ】
これらのように、脳科学的側面と認知心理学的側面との関係性に基づく「フレームワーク」「思考プロセス」として、「解決困難なコンセプトの設定」→「究極的状況の想起」→「固定観念の抽出(「転移」)」→「本質探求質問の発信」→「固定観念の排除(「反転」)」というプロセスを経ることによって、脳科学的側面における「無関係と認知された事象は無視される」「恒常性を求める」という固定観念に基づく思考を排除することができます。
また、同様に、「解決困難なコンセプトの設定」→「究極的状況の想起」→「固定観念の抽出(「転移」)」→「本質探求質問の発信」→「固定観念の排除(「反転」)」というプロセスを経ることによって、認知心理学的側面における「インバスの発生」「心的制約の緩和」「問題空間の切り替え」が生じた結果、固定観念に基づく思考を排除することができます。
これらのことから、脳科学的側面と認知心理学的側面に基づき、リフレームする上で重要となる固定観念に基づく思考を排除することができることから、これまでにはないモノやコトを生み出す上で、これまでとは異なる視点により、これまでとは異なる領域を探索するための「フレームワーク」「思考プロセス」として、「リフレームに関する方法論」は有用性が高いのではないかと考えます。
リフレームに関する方法論(シフト・イノベーション)
(課題転換フェーズ)
(課題解決フェーズ)