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shift innovation #20 (UNIVERSITY of CREATIVITY hack 5)

今回は、株式会社博報堂が発足した、未来想像の技術としてのクリエイティビティ(創造性)を研究・開発し、社会実験していく研究機関である「UNIVERSITY of CREATIVITY」に参加(2022年3月〜2022年6月)しました。

UNIVERSITY of CREATIVITYには、14のゼミがあり、その中で、私が参加した「創造性特区ゼミ」とは、自治体と連携し、地域の創造性をさらに進展させていくために必要な要素や条件を調査・研究する取り組みにより「創造性マネジメント」を研究するゼミとなります。

今回、「創造性特区ゼミ」においては、「市民が主役のまちづくり事業支援制度(以下、事業支援制度)」を活用する市民活動団体やこれらの活動に参加する市民が、創造性を発揮することによって、その目的がより効率的・効果的に達成することができる改善・改革案を提言することとしました。

「創造性特区ゼミ」においては、自治体に提言する上で、4つのグループに分け、各グループから1つの施策を自治体に対して提言することとなりました。

私は、グループ4のメンバーとなり、メンバーには、広告代理店でマーケティング業務をし、今回のグループワークを主導したKE氏、デザイナーとして世界的ブランドに参画するT氏、大学院修了後、地方創生のため鹿児島の離島で仕事をしているKT氏とmasakiの4名となります。

前回までは、既存の「創造性マネジメント」仮説をブラッシュアップした新たな「創造性マネジメント」仮説を導出する上で、個人ワークによる新たなアイデアを導出した内容に基づき説明をしましたが、今回はグループワークにおいて、導出した新たな施策に関する新たな「学び」について、説明することとします。


【各グループにおける施策の概要】

グループ1
新たなチームである公式組織となる「(自治体名)部」を創設し、自治体の未来を担う学生(小中高大学生)を組織員として迎え、「(自治体名)部」における活動が他の部署との関連性の中で効果が波及し、さらに、自治体内の学生をはじめ自治体以外の学生も含め実施する広報(ビデオなど)により、あらゆる関係者を巻き込む施策となります。

グループ2
自治体の市民を主体的な行動ができる人材に育成する上で、既に行動している市民に対しては、不足している人材・資金など、仲介・支援できるプラットフォームを構築し、まだ行動に至っていない市民に対しては、ボランティア団体などのコミュニティに参加する機会を提供できるエコシステムを構築することにより、ボランティア団体が次々に生まれ支え合うことができる仕組みを構築する施策となります。

グループ3
資金調達を自立的にできる団体を目指すのではなく、人材不足を回避できる団体を目指すものであり、小中学校向けの地域活性化事業に関するアクティブラーニング、市外の人材のビッチコンテストによる参画、知見・ノウハウ保持者による支援のためのソーシャルグッドサポーター制度など、幅広い世代の市民の発想が活かされ、地域課題解決の取り組みが生まれ続ける施策となります。

グループ4
現行の事業支援制度を維持した上で、現在のボランティア団体及び過去に運営していたボランティア団体における既存の資産(スキル)を活用することからはじめ、総合計画参加者や自治体内外のスキル保有者なども含めた既存の資産(スキル)を活用することにより、既存のボランティア団体を支援する仕組みを構築する施策となります。


【創造性特区ゼミの活動における「学び」】

創造性特区ゼミの活動における大きな学びに関して、「エフェクチュエーション」という概念に基づき説明することができます。

起業時において活用される「エフェクチュエーション」の概念は、保有する資産から目的を設定した上で、失敗が許容される範囲から事業をはじめ、そして、保有する資産にコミットする関与者とパートナーシップを構築し、偶然性に基づき事業をコントロールするというものです。

一方で、相対する「コーゼーション」という概念は、設定した目的から必要とする、今は保有していない資産を集めた上で、事業を予測し計画的に実施するものであり、成功する事業者においては、「エフェクチュエーション」の概念に基づき起業する傾向があり、一例として、「eBay」、「Estee Lauder」などがあります。

そこで、創造性特区ゼミの活動において、自身が導出した施策は、これまでとは異なる視点により、これまでにはないモノやコトを生み出す上で、ボランティア団体や自治体だけではなく、その他自治体内外の事業者など、これまで直接関わりがなかった者も含め検討するというように、「コーゼーション」の概念に基づく施策となりました。

一方で、今回、最終的にグループ4において、自治体に提案することとなった施策は、既存の事業支援制度を活用(維持)した施策であり、且つ、現行のボランティア団体及び過去に運営していたボランティア団体の運営者などにおける保有する資産(スキル)を活用した施策であるなど、新たな制度をスタートする上で、リスクを最小限に抑えた、「エフェクチュエーション」の概念に基づく施策ではないかと考えます。

この施策に関しては、現行のボランティア団体及び過去に運営していたボランティア団体の運営者(個人)は、既存の資産(スキル)を提供するなど、保有する資産からはじめるものであり、また、この提案した施策自体(組織)も、既存の事業支援制度を活用など、保有する資産をからはじめるものとなります。

そして、この施策を利用するボランティア団体も、既に創設されたボランティア団体であることから、保有する資産からはじめるものであり、個人・組織・社会、全てのレイヤーにおいて、保有する資産からはじめるものであり、誰もが無理なくはじめるこができる施策であると考えます。

また、「エフェクチュエーション」の概念にある、保有する資産にコミットする関与者とパートナーシップを構築することとして、例えば、ステークホルダーとなるボランティア団体運営者・参加者、自治体職員をはじめ、今後関与するあらゆる者とのつながりにより、新たな機会を偶然得ることによって、制度を無理なく拡大することができると考えます。

一方で、この施策の発展的制度として、例えば、提供する者として、ネットワークづくりに関するスキルを保有する者、後継者育成に関するスキルを保有する者、税務・会計に関するスキルを保有する者など、ボランティア団体運営に関するスキルだけに留まるものではなく、生活全般に関わるスキルを保有する者に拡大するなど、保有する資産(スキル)を提供する者を積極的に拡大することにあわせ、それらの資産(スキル)を利用する者も拡大するなど、「コーゼーション」の概念に基づく施策となりました。

また、利用する者としては、ボランティア団体の運営者だけに留まるものではなく、自治体内外の事業者、自治体の市民、そして、他自治体の市民など、あらゆる事業者や個人まで拡大し、そして、これら保有する資産(スキル)を提供する者とそれらの資産(スキル)を利用する者をマッチングするためのプラットフォームを構築することにより、積極的にこの制度を発展させるという施策となります。

これらのように「エフェクチュエーション」の概念に対して、「コーゼーション」の概念に基づく施策、例えば、プラットフォームを構築する施策は、提供者と利用者共に拡大しないとネットワーク効果が発揮されないなど、事業が成り立たない場合があるため、プラットフォームの構築を目的にするなど、目的主導で事業計画を立てることは、投資に対する回収のリスクが高いことからも、特に個人や自治体など、リスクを極力回避すべき者にとって、事業をはじめる(起業する)上で、失敗が許容される範囲にある保有する資産からはじめる「エフェクチュエーション」の概念の方が、有効性が高い場合もあると考えます。

なお、これらに関して、「エフェクチュエーション」の概念が、必ずしも「コーゼーション」の概念より有効性が高いというものではなく、また、これまでにはないモノやコトを生み出すためには、「コーゼーション」の概念に基づく必要があるというものでもなく、あくまでも、保有する資産を活用することにより、無理なく導入することが可能であることにあわせて、効率的・効果的にこれまでにはないモノやコトを生み出すことができることから、今回の創造性特区ゼミにおける自治体に対する提言に関して、「エフェクチュエーション」の概念に基づく施策の方が、有効性が高いものであったのではないかと考えます。


【まとめ】

「エフェクチュエーション」の概念は、保有する資産から目的を設定した上で、失敗が許容される範囲から事業をはじめ、そして、保有する資産にコミットする関与者とパートナーシップを構築し、偶然性に基づき事業をコントロールするというものです。

これに関して、保有する資産から小さな活動であっても、まずは動き出すことにより、それに伴い様々な関係者を含む資産を結びつけることができることから、現在、保有する資産を精査することは重要な作業であると考えます。

特に、自社(自身)における強みに関して、自社(自身)や業界においては当然保有する資産であるという認識によって、自社(自身)における強みであると認識していない場合があるため、強みであるのかどうかを十分精査する必要があると考えます。

今回の提案に関して言えば、ボランティア団体の運営者や参加者における経験など、現在、ボランティア団体を運営している人をはじめ、これらかボランティア団体を創設する予定の人においても、重要な知見となることから、これらの強みである資産を活用できるようにすることは、まさに「エフェクチュエーション」の概念に基づく施策であると考えます。



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