不在着信。
不在着信1件。
昨夜は仲間と飲み過ぎたせいか、何かその関連の連絡だろうとスマホを手にとると、表示されているのは君の名前だった。
目を疑った。
一気に目も覚めたが、すぐ折り返しの電話をするのにも躊躇うほど頭のなかは混乱していた。
だってそうでしょう。君と別れてから10年が経つのだから。
あの日、君との最後の日。
どれだけ…目の前にある事実を受け入れらずどれだけ泣いたか。結婚も考えていた君との別れは、あの頃の僕には受け入れられることは出来なかった。
あの日からこの10年、君と同じ名前を見れば、君に似た女性を街で見れば、君がつけていた香水と同じ香りを感じれば、君との思い出がすぐによみがえる日々を過ごしてきた。
それでも徐々に、止まっていた時間を前を向いて歩き出せるようになってきた。
そんな矢先の君からの不在着信。
でもね、
君から電話が来ることはないはずなんだ。
10年前のあの日、君は天国へ旅立ったのだから。