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暴投が生むイノベーション

いつも話すと脳内がドライブする人というのがいて、尾原さんはその最たる人なんですが、今日(と書いたが文章を書き終えることができず昨日のこと)もいろいろ話せて非常に面白かった。

その中で、僕は普通にやってるつもりけど、尾原さん的に脳汁でた!と言っていただいたメソッドがあり、もしかしたらこれは他の人の脳汁分泌を促せるのかもしれないと思ったのでシェアします。

今回の話しのきっかけは、5年くらい前にビデオチャット対談した際に話した、ハイコンテクスト/ベーシックコンテキストみたいな内容のアップデートについてだったのですが、途中でどうやってコンテキストを超えて誰にでも理解されるようなイノベーティブだけど共感されるアイデアを生んでいるのか、何かチーム内で共有してるメソッドや、ディレクションの秘密みたいなものはあるのか、という話になり(尾原さん間違ってたら指摘して!) 僕が普段から実践してる、「直球・変化球・暴投」メソッドをその一部でお話ししました。

「直球・変化球・暴投」メソッドって何かというと、新しい誰も実現したことがなかったようなアイデアをお買い上げいただくための手法の一つです。僕は性格的にあんまり一案プレというものをしなくて(答えはひとつじゃないから)、大体3案は出すようにしていて、それをそれぞれ直球、変化球、暴投と分類しています。

直球はまさにクライアントのオーダー通りのアイデア。予算も時間もメディアも先方の要望の中にキッチリはめつつ、その中で一番ハネるアイデアを提案します。それはクライアントにとってはミットを動かさないでもストライクになるので飲み込みやすい。しかし大概、新しい誰も見たことないアイデアをくださいという依頼に対して、直球は意外とみたことないものにはなりにくく、また本当にクライアントが求めている/必要としているものではなかったりします。

そこで次に変化球を投げます。それは時間なのか予算なのかメディアなのか、オリエンの中の何かを無視しているが、まだちゃんとミットに収められるようなアイデアだけど直球よりは見たことのない球筋を描く。そんなクライアントがちょっとだけミットを動かしてくれたら、ストライクは取れるような提案。

そして最後は暴投。これは先の2案があるから投げられる玉。大リーグボールも真っ青。もう全然ミットにはまらないけど、バッター(オーディエンス)がバットを振ってくれるからストライクがとれますよ!と説明するようなアイデアです。意外と三案を提案すると、面白いことに、この暴投が選ばれることが多いため、僕はなるべくこの三球を投げるようにしていて、それゆえに「直球・変化球・暴投」メソッドと呼んでいます。理由は簡単で、見たことないものは誰でも怖いし不安になるけれど、ちゃんと課題を理解してくれていて、きちんとした提案もできるということをわかってくれた上でロジカルに説明されれば、ちょっとラディカルなアイデアでも冷静に受け止めてくれやすくなるからです。例えばピカソがいきなしゲルニカを書いても理解されなかったかもしれないけど、それまでの天才的なデッサンや青の時代があったからこそコンテキストの延長としてみたこともないような作品が受け止められたみたいなことなのかなと(勝手なこといってますが)。昔の作品でいうと、Nike Unlimited StadiumGagadollなどがまさにそうだったように記憶しています。

毎回ルールを無視してあらぬ方向へ球を投げろというつもりはないのですが、僕はそういう暴投にこそイノベーション(という言葉は嫌いなのですが)の芽があるのではないかと思っています。つまらない言い方をするとout of the box thinkingというやつになるのでしょうか。既存のルールややり方を一回無視してみないと、効率よく見たことがないものは作れない。思えば、まだオムツを履いていた佐藤雅彦研究室時代に、先生から「川村さんは反則技の人ですから」と言われていたことを思い出す。反則技すなわち暴投。美しい球筋でストライクを取れる職人のようなクリエイティブに憧れる反面、僕は暴投に、そこにしかない何か一つのパンクな美学、社会を変えられる突破口を見出しているような気もします。

暴投上等。

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