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弱さは強さ 最低は最高

伝説のケルンコンサート

知り合いの結婚式で、ピアノの生演奏を披露宴中ずっと演奏してくれるというなんとも贅沢な結婚式に参加させていただいた時、僕は小休憩中にピアノのお姉さんに語りかけた。

「すみません。曲のリクエストをしてもいいですか?」
「もちろん大丈夫です。ちなみになんですか?」
「キースジャレットの曲なんですが・・・」
「すみません。分かりません。。」

僕の勇気を出してオーダーしたリクエストは呆気なく終わる。
鼻息が荒かった僕に引いていたのかも笑
それくらい僕は、キース・ジャレットが大好き。

僕がキース・ジャレットを知ったのは、伝説となったケルンでのコンサートの話を聞いてから。

1975年1月、ドイツのケルンでのコンサートのこと。
当時29歳のキースはアートブレイキーに見出され、すでにピアニストとしての名声を得ていた。前日はチューリッヒでのコンサートで、ケルンまでは車で5時間掛けての移動。持病の脊椎痛も酷い状態。なおかつ連日の演奏による疲労とプレッシャーから、満足な睡眠も得られず、
体調は最悪。
また、当日ピアニストの命であるピアノは、事前にキースがオーダーしたピアノではなく、リハーサル用の小さいなピアノがなぜか用意されており、きちんと調律もされていない。
しかも開演時間は深夜で、ピアノの交換は不可能。

キースはコンサートを中止しようと思ったらしいです。しかし、1400席のチケットは満席。演奏の録音も予定されており、公演は予定通り行うことに。
キースに出来る事は、調律を整えることだけだったといいます。
要するに、超最低の状況だったわけです。

巷で人気の、エビデンスとか、そんなもんをぶった斬るような、言葉には言い表せない奇跡の創出をキースはやってのけたわけです。
お客さんはもちろんそんなこと知る由もありません。
そして、聴衆からは鳴りやまない拍手と喝采。
まさに最低から最高への転換。
そしてこれが後のキースのティッピングポイントとなるわけです。

僕は音楽は全くの素人で、聴く専門なので、詳しい事は全く分からないのですが、
1時間余りの演奏は圧巻の一言に尽きます。冒頭15秒で既にヤバいです。
ちなみに当時のキースのライブスタイルは即興演奏会。
最低の心理状況からよくこんな希望に満ち溢れた音が奏でられるかと思うほどです。

ぜひ皆さんも聴いてみてください。当時の背景に身を任せながらでも、まっさらな気持ちでも、どんな気分でも、キースの音色は優しく迎え入れてくれるはずです。
ちなみに僕はPt.II Cが大好きです。

最低な状況こそ、最高に繋がってるのかも

突拍子もないけど、少し現代に戻って考えてみたいと思います。

やり方ばかりが求められ、そこに群がる人達が大勢いる現代の状況。
一見、そこに追従出来た人だけが、勝者となる世界。
誰しもが利用するSNSは、バズったかどうか?が何より大事。
じゃあそこに付いていけなかった人達は敗者なの?
絶対違うでしょ。

目標を持てとか、夢を持てとか、何も知らないくせに、目の前をことで精一杯なのに、夢?そんなもん持つほど余裕ないです。

自分らしくとか言うけど、自分らしさって何?誰か教えてくれよ。
誰かに嫌われないように、多数派の意見に迎合していば、嫌われることはないんだし、それで良いでしょ。

そんな声が聞こえてきそうです。
何が正解か分かりづらいから、より正解を求めるような風潮になり、余計分かりづらくなる。
真面目な人ほど生きづらいこの世界に、たまにどうしようもなくもどかしくなります。

自分がダメだから。
自分が弱いから。

そんなこと思ってませんか。
仮にそうだとしたら、それは今いる場所がたまたまそうなのであって、自分の全てを否定する必要は全くないと思います。
弱い人は、弱い人の気持ちが分かる優しい人です。弱いからこそ、コツコツ努力する力があります。実は良いところいっぱいあるんですよ。

そんな人達は、もう充分、足掻いて、努力してきたと思います。
それでも合わないなら、場所を変えてみたら良い。
それは逃げじゃない。移動です。
アスリートだって、チームが変わったことで大活躍する人もたくさんいるんです。

人間誰しも、100%満足出来た日なんて、1年のうち数えるほどです。
仮に1%の日があったって良いじゃん。
なんなら0%だって良いじゃん。
そういう時期なんだよきっと。
逆に120%の日とかあったりして、段々帳尻合っていくから。

高くジャンプするには、深くしゃがむ必要があります。
キースにとっては、最低な状況を、深くしゃがむ事と捉えられたから、コンサートが大成功したんだと思います。
まあ当時はそんなこと思ってないと思いますけど笑

今は辛いかもしれない。ふと考えちゃうのかもしれない。
現実はそんなに簡単じゃないのも分かってる。

でも、だからこそ、そんな時は思いきって休みませんか?
思いきって旅をしてみませんか?
好きなことだけ、楽しいことだけ考えてみません?
心の栄養摂ってみません?
休んでる自分はダメだと思うの、やめません?

せめて自分の身近な人だけは、こんな言葉を掛けてあげたいし、力になりたいと思う今日この頃です。

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