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aikoに学ぶ危機管理

昨今、ソーシャルメディアが発達したおかげで誰でも情報を発信して、様々な情報を手軽に入手できるようになった。
一方で失言や問題行動をしてしまった場合、それが評価・批判され、場合によっては拡散されて人々に広く知られてしまうリスクもソーシャルメディアが発達するとともに上がってしまった。芸能人・有名人はもちろんのこと、一般の人達にもそのリスクがある。
最近では、他人の金メダルをなんの前置きもなく齧って方々からフルボッコされている市長ホームレスをディスったら炎上しちゃって涙目敗走しようとしてるメンタリストなどが記憶に新しい。
いずれの事例も自らやらかした非を鎮火しようと対応はしているものの、却って火に薪を焚べているが如く批判がエスカレートしてしまっている様に見える。

既に起こってしまった問題についてできるだけ最小限のダメージで抑え、最終的に回避・解決する事を一般に「危機管理」と言う。
上記のケースで両者がやった事は基本的に許される事ではないものの、危機管理の意識を持って初動の対応さえ間違えなければ、ここまで炎上する事は無かったのではないかと思う。しかし既報の通り、いずれのケースも対応が後手に回ったり、誤った対応を取ったことで、さらなる批判を呼んでしまった。そういう点では両者とも危機管理能力はあまり高いとは言えない。

・・・話は変わるが、私はaikoが好きである。
aikoは音楽の才能は勿論の事、若い頃にラジオ畑で培ったトーク力、何より自身のファンを第一に考え行動する姿勢等、様々な才能・能力に恵まれていると常々感じる。
その秀でた能力の中に、危機管理能力もあると私は考えている。aikoは自身の失態やトラブルに関する対処が上手いのだ。
aikoの素行や性格を考えるとそもそも問題を起こすことがとても少ないのだが、それでも長く歌手をやっていると、やはり多少なりとも問題は発生していた。
それらを何なりと対処して歌手生活を20年以上やっていけるのは、ひとえにaikoやその周りの危機管理能力の高さのお陰である。

今回はaikoの危機管理能力の高さが見て取れる事例をいくつかご紹介する。また、それらの事例からaikoの危機管理能力が高い理由について考察していく。

事例1:ライブ中止に対する対応

2018年に行われたaikoのライブツアーLove Like Pop vol.20の神戸公演にて、aikoの声が公演中に枯れてしまいライブを中止するトラブルが発生した。
その際に取ったaiko側の対応について、同時期に客の入りが悪いからライブを中止した沢田研二の対応と比較されて素晴らしいと絶賛されることがあった。当時マスコミでも取り上げられていたので、覚えている方もいるかも知れない。

この時、aiko側が取ったアクションは、「①予定のプログラムを歌い切る」「②即日で公式謝罪文を出す」「③aiko本人がTwitterで謝罪する」「④翌日に振替公演の日程を出す」の4つである。

まず①について、「ライブを中止したのに歌い切るってどういう事?」と思うかも知れないが、aikoはライブの10曲目でこの日のライブの中止と振替公演をやる旨を観客に直接伝えた後、予定していた残り7曲(アンコール除く)を歌い切って終了している。
この部分はaikoのプロ歌手としての意地もあるとは思うが、少なくとも観客はこれを見て、「辛いながらも私たちの為に頑張って歌ってくれている」とポジティブに捉えている。

ライブ終了後、②の通り即座に公式から謝罪文を出している。

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また、aiko本人からTwitterにて即日で直接謝罪している(③)。

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そして翌日、④に書いた通り追加公演の詳細を公式で通知している。

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ケースバイケースだが、基本的に謝罪を要するようなトラブルはスピードが命である。対応が遅くなればなる程、不満は指数関数的に膨れ上がる。そういう意味で即座に謝罪とリカバリーを行ったaiko側の対応はお手本の様なものである。
また、③aiko本人からの謝罪もポイントが高い。②で公式で謝罪文を出しているものの、やはり当事者本人からの謝罪が一番響くものである。特にファンとしてはaiko本人がどう思っているかと言うのは知りたいものであるし、こういう時はきちんと出してくれる。

尚、このライブのライブレポートを書いている方がいるので、見るとその時のaikoやスタッフ、観客の状況が解るだろう。

尚、今年はコロナ禍ながらもライブツアーを行っているのだが、やはり開催地の感染状況によっては公演を中止しなければいけないケースが出てくるものである。
その場合も基本的にここで紹介した対処をaiko側は粛々と行っている。ある種トラブルシュートとしてテンプレ化しているのだろう。

事例2:ライブ中の機材トラブルに対する対応

aikoのスタンディングライブツアーLove Like Rock vol.8の東京公演での出来事。因みに私もこの日のライブに参戦していて、トラブルを目の前で目撃している。
曲間のMCをしている最中、「ザザッ、ザザッ」とマイクにノイズが入り始めた。機材トラブルで音声にノイズが乗る様になってしまったらしい。
これにaikoは特に物怖じせず、「直るまでしゃべってていい?」とスタッフに確認を取った上でMCを継続。20分くらい経ってようやくトラブルを解消したらしく、aikoも「よっしゃ!」と言いつつライブを再開した。

よくよく考えるとあの場面はライブを中断してしばし休憩時間、とか最悪中止という自体もあり得た。ライブが継続できたのはひとえにスタッフの努力の賜物である。
また、aikoが機転を利かせてMCを延長して繋いでくれたお陰で観客である我々としては特に退屈することもなく、というよりトラブルというのも感じなかった。何よりライブのテンションを切ることなく継続できたのはaikoのおかげである。

こういう突発的なトラブルにもaikoは機転を利かせて観客を不安にさせず逆に楽しませてくれるくれることが多い。小さな事だが、これも危機管理能力が高いからこそなせる業である。

尚、これについてもライブレポートを書いているお方がいらっしゃるので、気になる方は見てみると良いだろう。

事例3:週刊誌に記事を書かれた時の対処

有名人・芸能人ならば一度はプライベートを週刊誌にすっぱ抜かれた経験が(恐らく)あろだろう。
aikoも何度か週刊誌に記事を書かれた経験があるのだが、その時のaikoの対処について紹介する。

まず、基本的にはaiko本人の口から話す事が多い。
例えばフライデーにaikoと立川談春夫妻との会食での写真を撮られた際、自らのTwitterで状況説明をしている。

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他にも、aikoメール(携帯サイト会員限定サービス、aikoからメールが届く)、自身のWEBラジオ等、話す事のできる内容ならば極力自分で言うスタイルである。
危機管理上、素早くかつ正しい情報を出す事が肝心な為、対応としては正しい。

但し、話す事の出来ない内容の場合は対応が変わってくる。例えば交際をすっぱ抜かれた場合、相手側の立場もある為に突っ込んだ話をする事は出来ない。
aikoは過去に2度交際記事を書かれているが、いずれも公式にて「プライベートな事なので当人間でお任せしております」という曖昧な表現で発表するに留めている。また、aiko本人からも声明は出すものの、相手側の立場もある関係上、基本的には内容には言及せずにファンに対して心配させてしまった事への謝罪をしている。
コレは決してベストな対応ではないが、相手側関係者を配慮した上で取れる唯一の手段だったのではないかと今では思っている。

ファンを第一に考えた行動を取る

3つの事例を紹介させて頂いたが、いずれの事例にも共通している事がある。それは、aikoがファンを第一に考えた結果の行動であると言う事だ。
事例1については「会場に来たお客様」を第一に考えた結果、中止の決定をした上でプログラムを歌い切り、中止と追加公演の情報も素早く出した。
事例2も基本的には「会場に来たお客様」に心配させない、ライブのテンションを切らない様にaikoが取った最善手である。
更に事例1, 3で共通しているaiko自らが出す声明は、aikoを心配している「全てのaikoファン」を安心・納得させる為に出している。
その為、恐らくaikoにとってはファンの事を考えた上での当たり前の行動であって危機管理云々は特に考えていないが、結果的に危機管理的に最善手になっている可能性がある。

この、「関係する人」を第一に考えた行動というのは危機管理的に最善手になり得ることが多い。
例えば災害が発生した場合、自治体が「被災した人々」を第一に考えれば、早急な災害対策体制の組立、被災した人々の避難及び救出という考えが浮かんで当然である。また、「被害状況を知りたい人」を考えれば、早急かつ正確な情報開示が必要であると浮かぶ筈である。
・・・言ってしまえば至極当然な事ではあるが、これをできる人はそこまで多くはない。
現に冒頭でご紹介した2つのケースは、「被害に遭われた人」「発言や行動で不快に思った人」ではなく、「自身の保身」をまず先に考えて行動してしまった結果が出ているのではないかと思っている。

状況や条件によっては最善とならないケースもあるとは思うが、aikoの「ファンの事を第一に考える」事は危機管理の基本である。
そういう基本的な姿勢を、危機管理能力の低い人はまず学ぶべきではなかろうか。

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