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56話-全日本王者として

決勝の相手は大塚さん

大輔さんの後輩なので私の事は全てバレていると思った。

最近、黒帯になったばかりだったが戦略的な戦い方が出来る実力者だと私も知っていた。


試合が始まった。

初めに私は相手の構えを見た。

構えが広くて低い。

引き込んだら引き込み合いになると分かった。

しかし、それでは私のタックルが切れないことも分かった。

いきなりの両足タックルで2点。

吸い込まれるように入れた。

このノーモーションのタックルを手に入れるため、何度も1人打ち込みをして確認した。

今大会はそれが二試合も成功した。

いかに私が引き込みの人間だと認識されているかを逆手に取る戦法が功を奏した。

そこからトップをとり担ぎを狙いながらオーバーアンダーへ。

すると大塚さんは私のラペラを引き出し蹴ってきた。

ラペラスパイダーだった。

この型はディフェンスには優れている。

突っ込むと足を取られたりポジションのトランジションをする為にはもってこいの技術だ。

しかし代わりに攻撃力がないのが弱点だ。

私はしっかり動きつつも脚を取られないよう注意を払った。

私が2ポイントを持っていると言う心理的アドバンテージをフルに使った戦法を取った。

私は何が何でも勝ちたかった。

時間が進むに連れ大塚さんはどんどん自分から攻め込むようになって来た。

後半は三角締めのラッシュに来たが私はしっかりディフェンスしつつ時間を使わせるように動いた。

大塚さんの必死さが伝わり私も必死で耐える。

セコンドの時間の指示を聞きながら私は冷静に対処した。

2-0で私は勝利した。


安堵の後に私が全日本王者だと思いグッと熱くなった。

こうして私はフェザー級で全日本王者と言う称号を手に入れた。

やはり男として日本一とは嬉しいものだ。

滅多に連絡はしないが母に連絡すると「ふーん。すごいやん」と分かっているのかいないのかそんな感じだった。

何故かは分からないが一つ階段を登ったような気がした。

後日談だが当然中塚さんには千兵衛でつけ麺をご馳走になり、塚田さんともまた試合をしている。

なにげに約束もちゃんと果たした。

全日本王者として。


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