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1話-人生を決めた深夜のテレビ放送

解説者「無敵の暴走機関車 ボブサップ!まさに筋肉の二世帯住宅だ」

あれは中学生の頃、たまたま私は深夜に目が覚め、居間のテレビを付けた。

その巨人のインパクトは、私の中でかつてないぐらいのもので一気に目が釘付けになった。

「人間というのはこんなに筋肉がつくのか」というのが私の第一印象だった。

最初はプロレスか何かだと思った。

その予想通り、開始直後、ボブサップがパワーボムを仕掛けていたのでそう思ったのだ。

しかし、上から殴る勢い・表情・流れ、それが真剣勝負の総合格闘技だと言う事が後に分かった。

対戦相手は、「ミノタウロ」と言うアダ名を持ったブラジル人 アントニオ・ホゴリゴ・ノゲイラだったが、ボブサップの印象が強すぎて最初は印象に残らなかった。

ボブサップに上を取られ、必死に下から抵抗していたのがアントニオ・ホゴリゴ・ノゲイラ。

全く知識がなかった私だったが、テレビを観た瞬間とんでもないことが行われていることは分かった。

中学生の私は1ラウンドが終わる頃にはすっかり心を持っていかれ、夢中になっていた。

「どっちが勝つんだ?」と言う好奇心と、「こんな男になりたい」と言う憧れが二つある事に気がつき、私は憧れに素直に従っていた。

当時、私は何もやりたいことがなく高校も行く気がないぐらい無気力な子供だった。

そんな私にいきなり「やりたいこと」が目の前に現れたのだ。

次の瞬間、ノゲイラが寝技であれよあれよと攻め立て始め、何が起こっているのか当時の私には全く理解出来なかったが、十字固めの形に入った瞬間、ノゲイラが勝つ事だけが分かった。

当時、世界最強を決めるために行われた総合格闘技PRIDEのヘビー級グランプリを制した柔術マジシャンが彼だった。

彼のやっている競技、バックボーンは「ブラジリアン柔術」と言う聞き覚えのない競技だった。

この時、私は柔術をやってみようと心に決めたのだが、もしボブサップが勝っていたら、彼のバックボーンであるアメフトをやっていたかもしれない。

人生とは本当に数奇なもので、
ある瞬間で一生を決めてしまう事もあるのだ。

それがノゲイラ対ボブサップだった。



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