一ヶ月前に腰椎を骨折してしまい、4週間振りにサックスを吹いた。
どうなることかと思ったけど、思いの外音は出た。
記憶ってのは中々根強いもので、25年もかけて形成してきた良い技術も悪い癖もそうそう忘れることはない。
だから当然指使いを忘れるなんてこともないし。

しかし、その「思った通りに動かす」という、数々の専門的な動きに必要な、体の非常に繊細なコントロールはそりゃブランクがあれば多少は鈍ってくる。
でも「あそこへたどり着く」という目標地点が自分の中で明確にあるから、その繊細な動きは確実に、徐々に取り戻されてくる。
逆に考えれば、普段の練習でいかに丁寧に、様々な感覚を自分の記憶へ根付かせるか、神経回路をつなげるか、ということが重要になってくる。

今回むしろ強く感じさせられたのは、呼吸の衰え。
息が持たない。
吸えない、というよりも吐けない。
コルセットをしたまま吹いているため、肋骨や脊椎の動きが制限されている影響もあるが、吸うことよりも吐いていく作業がとにかく苦しい。
これは意外な発見でした。
長く吐くこともできないし、ある一定の音量で保ために一定量の息を出し続けるコントロールも難しい。
だからリードの抵抗も強く感じる。

昨日はまず1時間吹きましたが、とりあえず吹き続ける練習。
さすがに珍しくロングトーンしたり、落ち着いて吹けるメロディやスタンダードを吹いたり。
とにかくどんなにヘロヘロな音になろうが、自分が「もうこれ以上息出せない、苦しい」というところまで長く吐き出す練習。
次第に、1時間でも相当感覚は取り戻すことができた。
でもまた今日は少し落ちているだろうけど。
三歩進んで二歩下がるような。

吸気と呼気には別々の筋肉が働く。
これまでのレッスンでも感じていたことだけれど、未熟な段階の生徒さんは、往々にしてこの呼気、吐き出す作業が足りなくてうまくいかないパターンは多いと思っている。
むしろ吸うことをがんばろうとしてしまう。
フレーズの合間や休符がある度に一生懸命たくさん吸おうとする。

もちろん当然たくさん吸うことも大切。
そのテクニックや動作の理解も非常に大事。
しかしそれとは別に、吐き出す、使いきる、ということでしか使われない筋肉がある。

吹奏楽部でよくやる全員一斉のロングトーン練習は、もちろんそれでしか得られない効果もあるだろうし、ある程度音程や音質を揃えていくには必要な作業だろうけれど、個々の能力を更に引き伸ばすにはまた違う練習が必要だろうと思う。
楽器によって息の使用量が違うから。
だから音を出す前の全員揃っての「すーっ!」っていう仰々しいブレスも全然必要ないと思うんですよね。
実際、プロの現場ではそんな音ほとんどしないし。

それぞれが限界まで吐き出す。
そうすることで次にたっぷり吸う動きにも自然につながってくる部分もある。
吐く能力が高ければ、いわゆる「よく鳴る」ようになってくる。

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