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地域おこし協力隊に応募したら、面接でブラックかどうか確認してほしい

三重県の南伊勢町で、地域おこし協力隊員が自治体を提訴するという事態が発生しています(町が和解金50万円を支払うことで和解した)。

協力隊パワハラ訴訟和解 町が50万円支払い、三重

地域おこし協力隊が自治体を提訴する、私は特に驚きはありません。他の自治体でも、表面化していないだけで、同じ境遇に遭っている協力隊員は多数存在するでしょう。南伊勢町の事例は氷山の一角。調べればまだまだ出てくると思います。

地域おこし協力隊の実態


地域おこし協力隊の人数は5,000を超え、一般の人の間でも徐々に認知され始めていますが、いい加減な募集をする自治体も相変わらず多く存在します。

今では募集人数が応募者総数を上回り、自治体間で候補者の取り合いになるほど。が、売り手市場といえど自治体は玉石混交、しっかりと見極めて判断しなければ、良いように使われ、田舎で消耗してしまう結果に。この制度は、各隊員の運用方法がそれぞれの自治体に一任されているため、隊員を生かすも殺すも自治体次第となっています。

老人の送り迎えだけをさせる、施設の掃除や草刈りだけをさせる、とても住めないような家をあてがわれる、放置されるも活動予算は出ない、ひたすら事務処理の手伝いをさせられる、施設の受付のみをただこなす、etc...

こういった話は、隊員が集まる度に共有されます。

少数ではなくむしろ多数派。

自治体との相性もあるでしょうが、研修なりサミットなりで隊員が一同に会した際は、だいたい愚痴大会になります。(私が参加した地域おこし協力隊全国サミットでは、自治体職員と隊員が参加するワークショップで隊員側の怒りが爆発し、ただひたすら厳しい現状を訴える時間となりました)

自身の貴重な時間を無駄にしないためにも、自治体選びや面接の際に確認すべき点を、いくつか書き出してみました。

自治体選びは会社選びと同じ

前述の通り、地域おこし協力隊の扱いは自治体によって大きく異なります。

「地域おこし協力隊」というのは「営業」や「エンジニア」といった区分と同じ、単なる職種でしかありません。同じ営業職でもホワイト企業・ブラック企業があるように、自治体にもホワイト・ブラックがあります。

よって、"地域おこし協力隊の仕事とは…"と、ひとつの括りで語ってしまうのは危険。

きちんと情報収集をして取捨選択すれば、多くの自治体が募集をかけている今、自分の特性に合致した自治体は必ず見つかります。

ちなみに、私は最終的に10地域近く応募しました(2016年頃の話です)。

時間も費用もかかりますが、相性の良い地域を見つけるまでの必要なコストだと思ってください。

「報酬」について


また、応募の際の判断基準として、「報酬」を重視する人もいると思いますが(だいたい166,000円か200,000円だが、例外もある)、数万円の差なら報酬に引っ張られ過ぎない方が良いでしょう。というのも、

・土日のちょっとした作業でも柔軟に代休を適用してくれる
・勉強会やセミナーに行くための旅費が出る
・(特に豪雪地帯では)暖房器具や雪下ろしの道具を支給してくれる
・家賃の補助率(上限が決められていないか)
・通勤手当があるか(ガソリン代など)

これらの方が、鋭く家計に響いてきます。

面接でのチェックポイント


避けた方が良い自治体の、面接での特徴をいくつか挙げてみます。
1. 圧迫面接である
対話ができない面接は、ミスマッチが起こりやすく、論外です。

そもそもこき使ってやろうという姿勢がミエミエです。

私が受けた自治体の中には、踏ん反り返って威圧してくる、高圧的な市町村長が面接を行ったところもありました。

基本的には面接と同じ雰囲気の中で、仕事をすると思った方が良いです。

2. 隊員側からの質問の機会がない
そんな自治体ないだろうと思いますか?ありました。

こういう自治体は、採用されても隊員のビジョン・意向は無視されるでしょう。

一方的に質問されるばかりで、こちら側の疑問が解消されないままでは、ミスマッチは避けられません。そもそも意見せぬ協力隊員が欲しいのかもしれませんね。

ちょっと難しい質問をしてみて、真剣に考えて答えてくれるのかも確認してみると良いでしょう。

質問に真摯に答えてくれる自治体は、着任後も親身になって相談に乗ってくれるはずです。

3. 通常の職員面接と同じ評価シートを使っている
事前に用意されたシートに沿って、淡々と質問をしていく一問一答形式の自治体もありました。通常の職員と同じ作業を充てがうのでしょうか。その評価シートで採用する協力隊員は、単なる臨時職員扱いです。事前に提出した応募書類の中で、少なくともやりたいことや熱意などは盛り込んでいると思うので、その内容に全く触れてこないような面接は、面接官がその内容に興味がないのか、やって欲しくないのか、或いはどうでもいいのか。いずれにしろ、単純作業を任せる労働力としか見ていないのでは。

4. 面接前後で地域を案内してくれない
面接の前後でその地域を案内してくれたり、地域の人を紹介してくれる自治体は安心できます。こういう地域に入ると、隊員がコミュニティに入っていくための自治体からのサポートも期待できますし、着任後に役場のデスクに縛り付けられる事もないでしょう。「案内するような暇ねーよ」というスタイルの自治体は、着任後も様々な場面で「そんな暇ねーよ」と言われるかもしれません。せめて、どこかオススメの場所くらいは教えてくれるはずです。"面接してはい終了"という自治体は、見知らぬ土地に入っていこうとする隊員の気持ちがわかっていないのでは。

5. 面接プロセスの中で協力隊担当者と話す機会がない
面接官が、市町村長、副市町村長、部(課)長クラスのみで面接が進められるケースは、かなり多いと思います。

それは行政組織の都合上しょうがないところもありますが、着任後日々の業務で接する人はこの面接官達ではありません。面接室へのアテンドをする人が協力隊の担当者だったことが多いので、隙を見てこの人の考えも聞いておきましょう。担当者との相性は非常に重要なので、ぜひ見つけ出して会話を交わしてください(どこかにいるはずです)。

もしかすると、トップダウンだけで担当者レベルの理解がないまま、採用しようとしているのかもしれません。

6. 他の自治体との併願を嫌う
他の自治体も受けていて何が悪いんでしょうか…こういう自治体は、自分たちは隊員を選ぶ立場であって、自治体は選ばれる立場にはないと考えているのでしょう。応募者が他の自治体を受けていないかを特に気にしている場合、「ただ単純に枠を埋めようとしている/人数が目標になっていて後はどうでもいい」という危険性があるので、あまりオススメしません。

ミスマッチを起こさないためにも、"お互いに"選考する事は重要です。

もちろん、注意深く面接に望んだとしても、これ以外のリスクは山ほどあります。

・議会は協力隊制度に対してどう思っているのだろう
・着任したら担当者が異動で全然違う人になっていた
・選挙結果によって政策が大幅に変わるかもしれない
・合併等の影響による住民同士のいがみ合いが深刻だった
・地域に変な人がいる
etc...

自分を飾らず、自然体で

最後に大切な話ですが、なんとか採用されようとして自分をよく見せたり嘘を言ってごまかしたりしても、良いことはありません。無理に相手に合わせて採用されたとしても、着任後に苦労します。自然体で面接に望み、相性の良い地域を見つけてください。

元地域おこし協力隊員より



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